そのカオリは妖しさを纏って


ちびうさは、セーラープルートの事を思い出していた。

いじめっ子にいじめられて、落ち込んだ時に出会った孤独の時空の番人。彼女は最初から自分の事を知っていて、深々とお辞儀をして自己紹介をしてくれた。
励まして、優しくしてくれた。いつも良くしてくれて、友達だと思っていた。
孤独な彼女と自身を重ね合わせ、同士だとちびうさは感じていた。

「大好きだったお友達がね、実はパパの事を好きだったって気づいてしまったの。その人、ママの友達でもあって……」

そこでちびうさは言葉を切った。
悪口では無いが、死んでしまってもうこの世にはいない人の事を悪くいう事に抵抗があった。プルートの真意も分からない。

「あ!ママは生きているんだけど、その人は死んじゃってて……」
「え、まさか?バレて消され……」
「違う違う!ただの事故なの。ごめんなさい、変な話の流れで」
「私の方こそ、勘違いしてごめんなさい」

事故と言えば事故だが、プルートの死因を端的に言えば自殺だ。タブーを犯したが故に、自らで制裁を受けたのだ。
そして、それはちびうさを含むこの星を守るために身を呈して守ってくれた。戦士として、勇敢な行動だった。

そんな戦士として忠実で、勇敢。それでいて模範的なセーラープルート。そんな彼女が、どうして妻子ある父に恋心を抱いたのか?
彼女が死んでしまった以上は聞くことは叶わないが、知りたかった。

「お友達がパパを好きなんだって知った時、すっごくショックだったんだ。裏切られたって思ったし、居場所を無くした気分だった」
「ちびうさちゃん……」

ちびうさがいつも見ていたプルートの笑顔は、切なくて寂しげで。それでいて儚い。そんな印象だった。
それが、父親に頼られている時のプルートはとても嬉しそうで、見たこともない笑顔で笑っていた。
自分には向けられる事の無かった笑顔に、敏感なちびうさは悟ってしまった。プルートはパパのことが好きなんだと。
同じだと感じていたプルート。実はそうでは無かったと気づいた時、居場所が無くなってしまったと悲しい気持ちが支配した。

「私の事を大切にしてくれていたのは、好きな人の子供だからだったのかな……」

何故プルートは父親の事を好きになったのだろう。
何故プルートはちびうさに良くしてくれていたのだろう。
一国のプリンセスで、いずれはこの星を統べる女王になるから。
愛する人の大切な子供だから。
疑いたくは無いが、段々と疑心暗鬼になってしまっていた。

「そんなこと……」

無いよ。と言おうとしたほたるだが、言えずに飲み込んだ。
自身のことと重ね合わせると、そう考えてしまっても仕方が無いと思ってしまった。それに、薄っぺらい言葉で励ましても、何の慰めにもならない。自身がそうだからだ。

「ちびうさちゃんはパパやママの事、好き?」
「大好き♡」

迷わずそう答えたちびうさはとてもいい笑顔をしていた。
星を背負って頑張っている両親を尊敬していたし、誇りに思っていた。
“ママの様な素敵なレディになる”と言う立派な夢を持っているし、父親はちびうさにとっては初恋の人。恋人は父親に似た人がいいと密かに思っていた。
つまり、ちびうさの理想像は両親そのもの。目標としているところだった。
そんな事もあり、父親も母親も魅力的な人だから色んな人が慕っていることをちびうさは知っていた。
けれど、まさかこんなに近くに父親に恋心を抱く人がいるとは、思いもしなかった。それも、何でも話して同じだと思っていた友達だったとは思いもよらないことに、ただただショックだった。

「どれだけ慕っている人だって、本物のパパとママの代わりは出来ないよね」

不謹慎だが、ちびうさを羨ましいとほたるは思ってしまった。母親は生きていて、相手の女の人は死んでいる。
自分とは違い、母親がいて幸せに暮らしている。

「そうなんだよね……」

幾ら慕っていても、母親の代わりにはならない。本当の母親は唯一無二の存在だ。

「ちびうさちゃん、ごめんなさいね」
「何が?」
「嫌な事、思い出させちゃったし。暗い話になってしまって」
「ううん、気にしないで。私が聞いたんだもん」

土萠創一の有益な情報は得られなかった。
だが、ほたるが今置かれている辛い状況を知ることが出来た。
そして、何故こんなにも惹かれ、仲良くなりたいかも知ることが出来た。
少し状況は違うが、似ていた。
益々ほたるの事が好きになったし、友達になりたい。そう思ったちびうさだった。




おわり

20230618 父の日






お読み頂き、ありがとうございましたm(_ _)m
思っていた形にはならなかったですが、概ね満足です。
父の日に不倫話とか、私の頭の中は一体どうなってんだかと自分で思ってます🤣

Cosmos公開中に3期の話なのもややこしいですよね。
葛藤は確かにありました。五部で父の日の話を書くべきでは?と。でも、ネタが落ちてなかった。ちびうさとキング、はるかさんとほたるちゃんくらいですが思い浮かばなかったですね😅

そして、その外部家族!本作品では、創一と螢子以外のパパとママは認めないと拒否ってましたが、それはこの時のほたるちゃんであり、再転生したほたるちゃんははるかさん、みちるさん、せつなさんが育ての親であり本物の親だと理解し、慕っているので、外部家族否定の作品ではないということはご理解頂けますと幸いです。
(ただ単に私がカオリナイトが創一を慕っている話を書きたかった。読みたかっただけなので🤣やっぱりもっとドロドロさせるには二人のシーンをガッツリ書いてエロい方向に持っていくのが面白いのか??)
そして、プルートは次いででした。ごめんよプルート😅
原作基準でも無理のない設定だと思って書いたけど、解釈違いならすみません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございましたm(_ _)m

碧央

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