弟たちのララバイ


「お前も80点の事実、受け入れろよ!俺より全然、点数いいんだ。嫌味でしかないからな!」

そう言って九助が見せてきた答案用紙には「60点」と書かれてあった。
確かに空野の方が点数は勿論いいけど、九助も決して悪くない点数だと思う。

「さんすーなんて、しょーらいカンケーない仕事に就くからいいもん!」
「いや、流石に良くねぇだろ?お前、次女とは言え、あのでっかい宝石店の令嬢だろ?売り上げやら仕入れ云々、何かしら手伝うなら必須だぜ?俺だって跡取り息子だから算数は頑張らないといけないんだから、お前も頑張れよ!なぁ、桃?」
「う、え、あ、あたし?」

将来の真面目な話になって説教したかと思えば、いきなり桃ちゃんに問いかける九助。
まさか自分に飛び火するとは思わず、ずっと我関せずで傍観していた桃ちゃんは慌てふためいた。

「お前だって他人事じゃねぇだろ?中華料理屋の令嬢なんだから。算数、それにお前は日本語と中国語必須だろ?親からプレッシャーかかってるだろ?ぐり、お前だって貿易会社の跡取り息子なんだ。当然、小さい頃から英才教育受けて育ったから、80点で凹んでんだろ?」

驚いた。馬鹿だと思ってた九助が、将来の事、こんなに考えてるなんて……。
私もうかうかしてられないわ。

「まだ私たち、九歳よ、九助!」
「そーよ、そーよ!MK5!」

みんなはまだ九歳。確かに将来なんてまだまだ先の話で。先の事は分からないよね。
私は小さいまま、900年生きてきて、パパとママに国の事は任せっきりで。とっくに引退して隠居生活送りたいだろうに、成長出来ずに苦労かけちゃってるな。

「で、桃、お前の点数は?」

いつから点数の結果見せ合う会になってたんだろう……。
この流れだと私とほたるちゃんも見せることになるんだろうな。別にいいけど。

「……」

無言のまま桃ちゃんは答案用紙を見せてきた。

「40点か、ふーん」
「算数苦手なんだもん!絶対、そんな感じだと思ったから教えるの嫌だったのに」

みんな20点ずつ違うのね。
九助と桃ちゃんも、空野となるると一緒で2人の点数足せば100点になるな。仲良いじゃんって思ったけど、そんな野暮な事は言わないでいた。

「九助さん、あなた達も足せば100点ですよ。相変わらず仲良しですね」

余計なお世話しちゃったよ、空野。
散々いじられたから反撃したい気持ちも分からなくはないけど。

「持って帰らないからな」
「別に持って帰って欲しいなんて思ってないわよ!」

だから言わないこっちゃない。
いつもの喧嘩が展開される流れになった。

「ちびうさちゃんとほたるさんは何点だったんですか?」

来たよ、この質問。別にいいけどさ。

「はい、これ」
「私のも!」

2人同時に見せた答案用紙の点数は輝かしいほどの“100点”の文字。
そう、私たち、秀才なの。所謂、才女って奴。

「やはり満点でしたか。分かってました。あなた達は僕が認めたライバルですから。そして今回は完敗です」
「流石だな!だから余裕でこの場にいたんだな」

と言うか、私が空野に話しかけたのがきっかけだしね。この場を仕切るくらいの事はしといた方がいいと思っただけよ。

「ちびうさちゃん所にもお姉さんいらっしゃるのに、いつもブレずに高得点取れるなんて本当、羨ましいです」
「確かにな。姉貴に振り回されたりしねぇのかよ?」

その話に戻すのね。別にいいけど。
私の場合、姉ではないけどね。

「慣れたわよ。振り回されたりしないように無になる事を覚えたの」
「は?お前、なんかの超能力でもあんのかよ?」
「んなわけないでしょ!九助、お姉さんの影響受け過ぎじゃない?」

まぁ超能力は無いけど、普通の人間でも無いのは認めるわ。
ピンクムーンクリスタルの持ち主だし、将来はみんなより上の立場になってこの国を治めなきゃいけないし。
だからうさぎのペースに乗せられてる場合じゃないのよ。

「げっ!いつの間にか情操教育受けてたのか……」
「結局はお姉さんの事、大好きなんだね?」

無邪気にそうほたるちゃんが九助に質問すると、九助は顔を赤くした。

「ま、まぁ、な。何だかんだ血を分けた姉弟だからな」
「ふふふ」
「なるるは?なるちゃんの事、嫌い?」
「口うるさく説教して来るけど、私の事チョベリグって思ってくれてるって分かるから、大好きだよ!パーペキで素敵なお姉ちゃんだよ」
「ちびうさちゃんは?」
「私もうさぎの事、大好きだよ。理想の人だもん。あんな素敵なレディになりたいんだ」
「最後、ぐりぐりは?」
「勿論、大事な肉親ですから。可愛い人ですよ」

この中で唯一、兄弟(姉)のいないほたるちゃんが最後はトークを回してくれた。
何だかんだ文句言っても、やっぱりみんなお姉さんの事、大切に思ってるんだね。

私は実際は一人っ子だけど、みんなのお姉さん想いの話が聞けて有意義な時間だった。姉弟や姉妹っていいな、なんて羨ましく思った日だった。

みんなこれからもお姉さんを大切にね♪





おわり

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