弟たちのララバイ


「ぐりも苦労してんだな」

そう同情するのは同じく傍観していた九助。
“も”って事は、九助も苦労してるって事?

「九助も何かあるの?」

そう問いかけるのはほたるちゃん。

「あるぜ!俺も姉ちゃんいるからすっげー分かる!」
「九助さん……」

同士の登場に藁をも掴む想いで空野が九助に縋る。

「俺の姉ちゃん、TA女学院に通ってるんだけど、お嬢様言葉ばっか使って肩こるっつーの!」
「大したこと、ないじゃないですか!裏切り者~!!!」

本当、大したこと無さすぎて逆に声も出ないわ。
でも、九助のお姉さんもTA女学院通ってるんだ。レイちゃんと同じだ。

「んな事ねぇって!最近出来た友達が時々遊びに来るんだけど、霊感が強いらしくて。姉貴、兎に角そう言う類のものが好きだからやたら怖い話してて。俺、そう言うのてんでダメだから怖くて……夜眠れなくなる事もしょっちゅうなんだぜ?」

TA女学院の友達の霊感少女?ま、まさか、ね?

「九助、その人の名前は?」
「名前?何だっけ?確か火川神社の巫女さんやってるって言ってたな……」

そ、それってやっぱり……。

「火野レイって人?」
「ああ、それ!それだ!火野レイ!」
「レイお姉ちゃん?」

ビンゴ!!!空野に続いて九助のお姉さんとも知り合いが繋がってるなんて……。
世間が狭いというか、なんと言うか。
しかもことごとく迷惑かけてるとか地獄絵図だわ。
知り合いの名前が出る度恐怖よ。
ほたるちゃんもその度、絶叫して驚いてるし。

「何だよ?またお前らの知り合いか?」
「……はい、すみません」

今度はレイちゃんの保護者になっちゃったじゃない!
美奈Pやうさぎなら兎も角、レイちゃんまで違う意味で迷惑かけるなんて……。

「姉貴にも散々怖い話されるんだぜ?」
「怖い話がなんですか?九助さん、贅沢すぎます!」

空野が八つ当たりするのも無理はないわ。
それで成績落ちる事は無さそうだもん。
空野の場合はしっかりテストの点数に現れてて。目も当てられない。

「大音量でな○わ男子とか言うグループの曲流して、一緒に歌って踊ってるんですよ?今も頭から離れない……」

もうこれ、トラウマレベルに傷ついてる。可哀想。

「あんな恋がしたいとか、こんなはずじゃなかったとか……ダイヤモンドスマイルだとか!どんだけ欲深くて眩しいんだって話ですよ!」
「姉貴が重度のドルオタってのも大変だな……」

やっと自分以上に大変な事に気づいて空野を慰める九助。男の友情は美しくて良いな♪

「いえ、自分ばかりすみません。姉さんがオカルトマニアってのも中々怖いですね」

こっちはこっちで違う種類で大変みたいね。

「元気出して、ぐりぐり!欲しがってたみちるママのコンサートチケット、強請っといてあげるから」
「うわぁ、本当ですか?ほたるさん、ありがとうございます」

そう言ってまた涙を流し始める空野。
今度は嬉し涙だ。

「何だよ、俺だって落ち込んでんのにぐりだけずりぃよ」
「勿論、九助の分もみんなの分も貰っといてあげるわよ」
「クラシックコンサートはハードル高ぇよ」
「みんなで行けば怖くないわよ」

ほたるちゃん、ナイス!
知り合いが迷惑かけた分がこれでしっかりチャラになる。ありがとう、ほたるちゃん。大好きよ。
と同時にまた自分じゃ何も出来なかったことに少し引け目を感じた。

「みんな、お姉ちゃんに苦労してるのねぇ。私もお姉ちゃんにはチョベリブっててぇ~」

そう愚痴をこぼし、応戦してきたのはなるる。
確かなるるのお姉ちゃんってうさぎの親友だったわね。

「なるるさんも振り回されてるんですか?」
「何だよ、なるるも姉ちゃんいたのかよ?」
「お姉ちゃん、ちょー口うるさくてぇ~MK5って感じなのよねぇ……」

なるる、お姉ちゃんが口うるさくてマジで喧嘩する5秒前らしい。
それはきっと、その独特のギャル語のせいだと思う。
後、テストも毎回るるなとワースト競ってるくらい頭悪いし、きっとなるちゃんの方が苦労と振り回されてるんだと思うんだけど……。

「なるちゃん、そんな感じしないけど……」
「ママより口うるさくてぇ~、ママよりよっぽどお姉ちゃんの方がちょーMMって感じ」

この流れだとちょーマジでママっぽいって意味みたい。

「本当、ちょーMM(ちょーマジ卍)」

きっとなるちゃんが叫びたいと思う。
学校ではうさぎに振り回されて、家ではギャル語を乱発する妹の言動に悩まされ……。多大なるストレスがかかっているのが目に浮かぶ。

「きっと今回のテストの点数見て鬼って来るんだよ……」

そう言ってテストの答案用紙を見せてきた。

「20点。お願いだからもっと勉強して、って先生に泣かれてメッセージ書かれてるじゃん」

こりゃあ酷い有様だわ。うさぎで慣れてるとは言え、インパクトある。

「こりゃあ最高だぜ!ぐりと合わせりゃ、丁度100点。なるるの答案用紙持って帰ってやれよ」
「空野っちぃ、マジこれあげるぅ~」
「いりませんよ!ちゃんと現実を受け入れて責任持って、ご自分で持って帰ってください」
「ちょーMM(ちょーマジ無理)」
「まぁまぁ、私が勉強教えてあげるから。ぐりぐりと一緒に」
「は?何で僕まで?」
「足して100点の片割れとして」
「何ですかそれ?完全なる道ずれじゃないですか?」
「嫌なの?教える事も勉強になると思うけど」
「まぁ、それなら……仕方ないですね」
「う、ほたるんにぐりぐり~MK5。お姉ちゃん、怖くて……」

ほたるちゃん、本当ナイス!
なるちゃんだって頭いいから教えてくれると思うけど、スパルタみたいだし。
二人いれば今回私はいらないかな?

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