友達と過ごす誕生日
「ほたるちゃん、お誕生日おめでとう」
「ほたる、誕生日おめでとう」
友達からとはるか達から、それぞれに祝福の言葉を貰いほたるは嬉しかった。
「みんな、ありがとう」
お誕生日会と言うものが存在することも知らなかったほたる。してみたいとみちる達に提案し、仲のいい人達を誘ってみて良かったと心から感じていた。
「お家の手伝いとか、大丈夫だった?」
しかし、桃達はそれぞれ店や会社を経営している。当然、彼女達も忙しい時や土日祝などは手伝いがある。
無理を言ったのではないかと気を使った。
「大丈夫さ。蕎麦の書き入れ時は年越しだし、そこを過ぎれば暇なもんよ」
「うちも正月で中華って気分でも無いから閑古鳥」
「うちもピークは過ぎたよ。それにうちはお姉ちゃんが正月生まれだからねぇ」
九助の実家の蕎麦屋は大晦日が忙しいピークを迎えると、その後は無かったかのように暇になる。桃の中華屋も年末年始は暇のようだ。
なるるの宝石店は忙しいもののまだ小学生には手伝える事は限られていた。なるるに関しては姉であるなるも正月に生まれていて、慣れていた。
「まぁ、うちは会社なんで子供の僕に手伝える事なんてないので」
そういう空野は、例え忙しくてもほたるの誕生日は一年に一回。誕生日の尊さは両親が一番分かっているから事情を話せば許してくれると説明し、何があっても祝いに来ますよ。などと嬉しい事を言ってくれた。
「ぐりぐり……」
「ほたるちゃん、私達もだよ」
「ああ、当たり前、だろ?俺とお前、ライバルなんだからよ!」
「みんな……ありがとう!」
前の人生では無かったことばかりの事に、ほたるは感動しっぱなしだった。
しかし、この感動に水を差す人物が二人、空気を読む事もそこそこに口を割ってきた。
「感動しているところ悪いんだけど……」
「私達、まだ冬休みの宿題終わってないのぉ〜」
「ま、まさか、この展開は……」
当然、長期の休みは宿題が出る。冬休みも残りあと二日。なるるとるるなは当然、ほとんど手付かず。泣きついて来た。本当はここでこんな事をしている場合では無かった。
「手伝って欲しいのぉ~(涙)」
「助けてぇ〜(涙)」
「……やっぱり」
思った通りの展開に、ほたる達はガックリ来た。
「お前らの目的はこれか……」
「えへへぇ〜」
「笑い事じゃないですよ……」
「あははぁ〜」
やれやれとなんだかんだ文句を言いながらも頭のいい空野と九助がそれぞれ見る事を買って出てくれた。
「何だかんだで面倒見良いじゃん!」
「そんなんじゃねぇよ!主役のお前にやらせる訳にはいかないだろ?」
「へぇ〜、九助の癖に考えてるんだ」
「うっせぇ!」
ほたるに代わり、面倒事を引き受けた九助を、いい所もあると桃達は感心した。
「やっぱり子供だな」
宿題が終わっていないとバタバタしだしたなるる達を見ていたはるか達大人組は微笑ましくなった。
「微笑ましいわ〜」
「あら、はるか。随分余裕です事」
「どう言う事だ?」
「あなたも宿題、終わったの?」
「ギクッぼ、僕は大丈夫さ」
「あるのね?」
「なんの事だ?」
「誤魔化さない!」
「えーん、許して先生!」
「許しません!」
ほたるの誕生日会が一転、冬休みの宿題の追い込みの会になった事は言うまでもない。
おわり
20240106 土萠ほたる生誕祭2024