フィオまも短編SSログ


『宇宙は広く、時に狭い(フィオまも)』


「住むところが見つかったんだ」

再び地球にやって来たフィオレは随分と嬉しそうな笑顔で幸せそうにそう報告して来た。
彼が来るのはいつも突然で。だけど太陽系外からの侵入者と言う事で外部戦士がいつもフィオレの侵入をいち早く察知してくれるお陰で前もって彼を迎え入れる準備が整うようになった。
今回の訪問は何だろうと思えば、敵対してしまった時には見せなかった笑顔で住処が見つかったと言う報告だった。
随分と明るくなったと衛は自分の事のように嬉しくなる。

「そうか、それは良かった」
「じゃあ、産まれた星や仲間が見つかったの?」

衛と共に一緒に会っていたうさぎは、朗報に生まれ故郷であるフィオレの星と仲間が見つかったのかと考えた。

「いや……」

うさぎの質問に、それまで幸せそうな笑顔を浮かべていたフィオレから笑顔は消え、暗い表情が現れた。

「残念ながら、産まれた星や仲間が見つかった訳では無いんだ」
「そうか……」

衛と別れたフィオレは、仲間を探し宇宙をさ迷っていた。その事を知っていた衛とうさぎは、そうでは無いと知り残念に思った。

「宇宙は広い!ゆっくり探すといい」
「そうだよ。まだまだ人生は長いんだし」

目に見えて落胆しているフィオレを励ます衛とうさぎ。
そんな二人の言葉に励まされ、フィオレは浮上した。

「そうだね」
「ところでどこの星に住むことになったんだ?」
「太陽系の外の惑星なんだよね?」

二人はフィオレが気に入って永住すると決めた星がどんな素敵な場所なのか、気になった。

「ああ、確かキンモク星と言ったかな?花々が綺麗に咲いていて、美しい星さ」
「え?キ、キンモク星!?」

フィオレの口から意外な、しかし、懐かしい星の名前が出て、うさぎは驚いて大きな声を上げる。

「なんだ、知っているのか?」
「うん、キンモク星にも私たちみたいに戦士がいてね。一時期、ここで一緒に戦っていたの」
「ああ、そう言えばキンモク星の戦士がその様な事を言っていたな。知り合いか?」
「知り合いも何も、友達だよ」

なんと、フィオレもスターライツの事を知っている様で、うさぎはそれにも驚いた。

「そこの星のプリンセスは大変心の広い人で、僕を喜んで迎え入れてくれたんだ」
「火球皇女が」

確かに火球は心が広く物分りが良かったとうさぎは納得する。

「そうか、彼女たちの所にいるのなら安心だな」

一連の流れを黙って見ていた衛が安心した様に口を開いた。
知らない星の、知らない人達のところにいるのとは違い、行ったことやほとんど話したことは無いがうさぎと仲良かった人達がいる星にいるなら大切な友人を任せられると衛はホッとした。

「キンモク星、ちゃんと復興したんだね。本当に、良かった」

うさぎは、星野達が帰ってから心の片隅で彼らがどうなったのか。キンモク星は復興出来たのか、ずっと気がかりだった。
しかし、こうしてフィオレから間接的ではあるが朗報がもたらされ、ホッと一安心した。

「キンモク星もギャラクシアにやられたと聞いたが、見事に復興した様だ。金木犀が生い茂っていて素晴らしい星だ」
「フィオレはギャラクシアを知っているの?」
「ああ、私の星もやられて仲間はみんなバラバラになってしまった」
「そうだったのか」
「衛くんと出会ったあの時、ギャラクシアの侵略から命からがら逃げて来て、君と出会い救われた」

フィオレの星も、かつてはギャラクシアの侵略により滅ぼされていた。
その事実に、衛とうさぎは絶句し、言葉にならない衝撃が与えられた。

「そう、だったのか……」
「セーラーウォーズは遥か昔から繰り返されてきたって、火球皇女が言っていたけど、私がセーラー戦士になる全然前からギャラクシアは侵略を繰り返していたんだね」

あの時、うさぎはまだ三歳。弟が生まれたばかりだった。そんな何にも知らない幼子だった頃から他の星にはセーラー戦士がいて、ギャラクシアに侵略され、故郷を奪われた人たちがいた。
その事実を目の当たりにしたうさぎは、心を痛めた。どうする事もできない事だが、もっと早く目覚め、ギャラクシアを改心出来ていたら、と。

「もしかしたら、エイルとアンもそうだったのかもしれないな」

うさぎの言葉に、衛はかつて襲って来た宇宙のさすらい貴族の二人を思い出した。

「エイルとアン!?」
「どうかしたか、フィオレ?」
「ああ、二人も今キンモク星に住んでいる」
「え、そうなのか?」
「うっそー!!!」

エイルとアンもキンモク星にいると聞き、衛とうさぎは更に驚く。

「キンモク星のプリンセスと環境、底知れないな……」
「本当だね。まさかあの二人までキンモク星にいるなんて、よっぽど素敵な星なんだね」

これ程惹き付けて止まないキンモク星の魅力に衛とうさぎはどんな素敵な星なのか、気になった。

「ああ、とても素敵な星だよ。居心地がいい」
「行ってみたいな。フィオレを迎え入れたところだ。挨拶に行きたい。うさこも世話になった人達だし、地球の王子として」
「私も、またみんなに会いたい」
「君たちならいつでも歓迎じゃないかな。帰ったら話しておくよ」
「助かるよ」
「ありがとう」

うさぎは、また星野達に会える可能性がある事に嬉しく思った。

「でもさあ」
「なんだ、うさこ?」
「フィオレがキンモク星に住まなくても、地球に住めば良かったんじゃない?」

うさぎはふと疑問を口にした。
何故フィオレは地球に住まないのだろうと疑問に思っていた。こんなに頻繁とはいかずとも、たまに来ては長居する。
遠い星を行き来するなんて面倒くさくてまどろっこしいと。

「いや、うさこ。それは出来ないんだよ」
「なんで?まもちゃんの権限で住めるでしょ?」
「俺もそうして欲しい。だが、フィオレの身体が永住に適さず耐えられないんだ」
「それもまもちゃんの能力で何とかならないの?」
「無茶を言うなよ」

うさぎの言いたいことは分かるが、無茶苦茶である。

「君の好意は有難いが、こればかりは体質だからな」
「そうなんだ。地球は花々が綺麗に咲き誇るし、フィオレも楽しいと思ったんだけどな」

どうする事も出来ない事実に、うさぎはガッカリする。

「君の気持ちだけで充分さ」
「何も出来なくて、ごめんね」
「うさこの気持ちは充分、伝わったよ」
「まもちゃんの友達は私の友達だもん。まもちゃんの近くに友達がいてくれたら楽しいだろうなって思ったんだけど……」

うさぎのその言葉に衛もフィオレも目頭と心が熱くなるのを感じる。

「何処にいるか分かったんだし、それだけで安心だ。遠いけど、知り合いならフィオレを任せられる。それに……」
「それに?」

衛は言い淀んだ。

「フィオレの生まれ故郷や仲間探しは、俺もいつか一緒にしたいからな」
「衛くん……」
「いいだろ?」
「是非!」
「わあ、素敵な夢♪」

その後、フィオレは今までで一番長く地球に滞在し、うさぎの嫉妬心は限界を迎え、地球に適さない身体で良かったと思ってしまった。




おわり

20231205 フィオレ生誕祭2023

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