フィオまも短編SSログ


「フィオレ、お誕生日おめでとう♪」

久々に衛のマンションへとやって来たフィオレを衛とうさぎが笑顔で迎え入れた。
パンッパンッと家中にクラッカーが鳴り響く。

「うわぁ、な、何だ?」

未だかつて無い歓迎ムードに、フィオレは戸惑う。驚きを隠せないでいる。
それもそのはずで、フィオレが地球へとやって来るのはいつも突然。それは今回も変わらないわけで……
その為、困惑するのはいつも衛とうさぎの方。なのに今回はフィオレの方がサプライズに驚かされた。
いつもと違って立場が逆転した事にフィオレは単純に驚いた。

「フィオレ、よく来たな」
「ゆっくりして行ってね」
「これは……?」

困惑するのも無理は無い。
事前に来るのが分かっていたかの様な対応。
通されたいつもの部屋には横断幕や装飾が施されていた。テーブルには料理が用意されていた。
準備が良すぎる。いつもと違いすぎる対応に、フィオレはたじろいだ。何か裏があるのではないか?と。

「フィオレが来るって知ってね」
「二人で用意したんだよ」
「何でだ?」

聞きたい事は山ほどあった。
何故、今回は事前に来る事が分かったのか?
何故、今回はこんなに歓迎ムードなのか?
何故、食事など用意されているのか?

「これさ!」

フィオレのその疑問に対して、衛は爽やかな笑顔で横断幕を指さす。

「何が書かれているか、分からない……」

地球外生命体であり、太陽系外惑星出身のフィオレ。当然と言えば当然だが、英語で書かれた文字は全く理解出来ない。
寧ろ衛と同じで家族がいない天涯孤独の彼にとっては教養などなく、文字など読めない。

“やはりな”と言った感じで苦笑いをした衛は、察して文字を読み始めた。横断幕に書かれた文字、それは……

「“HAPPY BIRTHDAY TO FIORE”って書かれているんだ」
「はっぴーばーすでえ?」

天涯孤独の彼は、HAPPY BIRTHDAYの意味を理解出来なかった。
そんな困惑したフィオレの顔を見て、衛は胸が締め付けられる想いがした。
6歳の誕生日に事故にあい、両親と死に別れた挙句記憶喪失。そう告げられ絶望の中にいた時に現れ、孤独の心に寄り添ってくれた衛にとって大切なフィオレ。
自分には何とかその後祝ってくれる伝や、大事な存在であるうさぎが現れたが、フィオレにはまだ誕生日を喜んで祝ってくれる存在が傍にいない。その事実が衛にとっては自分の事のように辛かった。
かつて心の拠り所だったフィオレ。そんな彼は今も孤独のまま、宇宙をさ迷っていると悟ると衛は苦しかった。

「ああ、本当の誕生日がいつかは分からないけど、フィオレが産まれてきてくれてありがとうと祝う日だ」
「へぇー、そんな日があるのか」

産まれた星が違うから文化が違うのは仕方ない。
フィオレがどの星出身で、その星がどのような文化があるのか分からないが、もしかするとその星自体そんな文化すら無いのかもしれない。
シルバーミレニアムの様に長寿なのなら尚更。

「俺はさ、フィオレ。君と出会えて本当に救われたんだ。産まれてきてくれて、本当にありがとう」
「まもちゃんの友達でいてくれてありがとね、フィオレ。ささ、食べて食べて♪」

うさぎが用意した食事を勧める。
それは、あの戦い後に初めて来た時にフィオレが食べたマク○ナルドのフィレオフィッシュだ。かなりの数が用意されていた。

「フィレオフィッシュか?」
「そ、私はグラコロ」
「俺はコラボ中のゴデ○バのチョコレートフラッペさ」
「私はそれにマカロン乗っかってるバージョン♡」

二人は飲み物を片手に笑顔で一緒に飲み始める。
それを見ながら、フィオレは久しぶりのフィレオフィッシュを口へ放り投げで行く。
そして、一番気になっていた事を聞くことにした。

「ところで衛くん。何故、僕が事前に来る事が分かったんだ」
「当然の疑問だよな。今まで分からなかったのに、それがこんなに手厚くされると戸惑うよな」

そう言って衛の口から、ゆっくりと事の経緯が語られた。
今回、こんなに歓迎ムードだった理由。用意周到出来たこと。
それは、前回の訪問の時に遡る。フィオレの訪問も中々無いが、その時外部の3人が衛のマンションへとやって来た。
外部戦士が動く。それは、太陽系外惑星からの侵入者が来た印。即ち、フィオレは太陽系外からの侵入者だと言う事がわかった。
だったら次の訪問は外部戦士が何か感じたら知らせてもらおうと衛は考えた。フィオレが帰った後、3人に頼むと快諾してくれた。常に太陽系外からの侵入者を把握したいから丁度いいと利害が一致した結果だった。

「と、言うわけだったんだ。監視した形になってしまってすまない」
「そうだったのか。いや、困惑したが、歓迎されて嬉しかったよ」
「フィオレ、いつか一緒にフィオレの産まれた星を探そうな」
「衛くん……」

衛は、特殊能力を持つ地球の王子として、その力をフィオレのために使いたいと思っていた。
いつになるかは分からないが、いつか出身の星やフィオレが住めそうな星を一緒に探したい。それが衛の囁かな夢となっていた。




おわり

20221205 フィオレ生誕祭2022

1/4ページ
スキ