フィオレの訪問は突然に


「フィオレの訪問は突然に」

「やあ、衛くん」

玄関が騒がしく、出てみるとそこにはフィオレが立っていた。
フィオレの訪問はいつも突然。
当たり前と言えば当たり前だが、本当に突然だ。

「フィオレ?」
「会いたかったよ、衛くん。また遊びに来たんだ」

会いたいと思ってくれることは単純に嬉しい。
だけど、いつも間が悪い。
今日は恋人のうさこが遊びに来ていた。
しかもとってもいい雰囲気に、どころか甘い雰囲気になっていた。
まだ始まったばかりとは言え、愛し合おうとしていただけに、中断はとても辛い。
お預けをくらったんだ。察して欲しい。

「また、突然の訪問だね」
「ああ、またマク○ナルドとやらに行こう!」

前回来た時に何となく連れて行ったマクドナルド。またそこに行きたいと言う事だった。
余程気に入ったんだろうな。前回の滞在期間も毎日の様に連れて行かれた。
お陰で一生分のフィレオフィッシュを食べた。
以来俺はうさこともマク○ナルドへは行っていない。
なのに行くのか?これは、うさこにどう解釈されるだろうか?

「今からか?」
「ダメなのかい?」
「あ、いや、その……」

うさこが来ていてセッ○スしたいとも言い出しづらい。と言うか、フィオレがセッ○スと言うものを知っているかも怪しいが……。

「まもちゃん、どうしたの?」
「うさこ……」

言い淀んでいると、俺の断りたい理由の恋人が自らこちらにやって来た。
きっと俺が中々帰ってこないもんだから、火照った体を持て余したんだろう。心配して来てくれたようだ。先程の色気を保ち、発散させたまま。

「って、フィオレじゃない?」

夢から現実へと引き戻されたうさこは、フィオレを見るなり驚き過ぎて大絶叫。
驚くよな?俺も驚いたんだ。分かる。

「ああ、君、まだ衛くんに付きまとってたの?」
「な、あのねぇ?私は!」
「俺の永遠の恋人にして、将来の妻、うさこだ。付きまとわれてないし、何なら俺はうさこがいないとダメだ」

うさこを見るなり、悪態を付くフィオレに少し腹が立つ。
2人は俺にとって大切な人だから仲良くして欲しい。
しかし、フィオレはいつまで経ってもうさこを受け入れようとしない。
嫉妬心からかどうかは俺には分からない。しかし、冗談でも、だとしても、うさこを悪く言われたくなくて、フィオレに対してキツい言い方になってしまった。
俺もまだまだ大人気ない。

「まもちゃん……」

俺のうさこへの言葉を聞いて、幸せそうな顔と嬉し涙を流しながら抱きついてくる。

「愛してるよ、うさこ」

フィオレが見ている事はお構い無しに、お互い口付けを交わす。
先程の事を思い出した俺は深く口付ける。
慣れないながらも必死で答えてくれるうさこがとても愛しくて。

「まぁ、衛くんがどう思ってるかは分かった。でも、せっかく来たんだ。連れて行って欲しい」

フィオレの存在を一時的に遮断していたが、その言葉に現実へと一気に戻される。

「うさこも同席なら行こう」

うさこを条件に行く事を飲む事にした。
前回もそうだが、2人で仲良くしていてうさこを放ったらかし状態にしてしまい、とても顰蹙を買った。
今回はどうしてもそれを避けたい。
2人に仲良くして欲しい。その一心だった。

「その子が一緒なら今からでも行ってくれるかい?」
「ああ、そうしよう」
「まぁ、衛くんが言うなら」

二つ返事とはいかなかったが、まぁ何とか快諾してくれたようだ。
しかし、明らかに二人は戦闘モードで睨めっこしている。

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