初デートは邪魔が入りました
「エリオス、行きましょう」
「あ、うん。そうですね」
挨拶もそこそこに私とエリオスはこの何とも言えないカオスな空間から逃げるように移動した。
「なんて言うか、大変な事になってますね?」
「……本当ね。エリオスの方も大変だったみたいね?まさかメナードにクンツァイトとゾイサイトまで着いてきてると思わなかったわ」
「クンツァイト様、ああは言ってましたけど、冷やかしたかったようですよ?」
「そうなの?ヴィーナスの悪影響受けてるみたいね」
結局はクンツァイトとヴィーナスは似たもの同士って所なんだろうな。どうせならクンツァイトの影響を受ければこんな事にはならなかったのにと思ってしまう。
「うふふっ仲良いわね、2人とも」
「くっつき過ぎだ!もっと離れて!」
クンツァイト達と話し込んでいる隙にまこうと思って歩を進めていたのに、いつの間にか追いつかれてしまって私たちの様子を静かに見ていたママとパパに邪魔された。
私たち、そんなにくっ付いて無いのにパパ本当にうるさい。
「本当に着いてくるんだ?」
「着いてきてるんじゃないぞ!これはWデートだ!」
「言い方変えても上手くないからね?ただの邪魔じゃない!」
「……スモールレディがグレた」
「まぁまぁあなた、私がいるじゃない」
「セレニティ~~~(涙)」
完全に2人の世界になってる。
呆れてものも言えないってこの事だと改めて学んだ。
心配してくれてるって分かってる。
だけど、頭ではわかってても心がついていかない。
エリオスを見ると緊張に顔が強ばってる。
ただでさえ私と初めてのデートで、しかも久しぶりに会うのに、太陽系を統べるクイーンと昔から慕っていたキングがいるんだから無理も無い。
エリオスの為にも2人を撒きたかったけど、結局無理だった。
ずっとベッタリ着いてくる。
「付き合いたての時のこと、思い出すわねぇ~」
「そうだな、あの頃から君は変わらず可愛いよ」
「イヤだ、エンディミオンったら!あなたもずっとカッコよくて素敵よ♪」
「あの頃以上に愛してるよ、セレニティ」
「私もずっと大好きよ、エンディミオン」
「これからもずっと俺の傍で笑っててくれ、セレニティ」
「勿論よ!ずっと支えててね、エンディミオン」
え?何?何が始まったの?何を聞かされてるの?愛の告白?プロポーズ?え?本当に何?
「お2人っていつもあんな感じなんですね?お若くて凄いな」
違うのよ、エリオス!普段は厳格なの。
だけど2人になると甘い雰囲気になって何故か周りが見えなくなって脳内花畑になるみたいなのよね。
こんな2人の姿、エリオスに見せたくなかったし、見て欲しくなかった。
穴があったら入りたい……。
エリオスの前で恥ずかしい。
「エリオス、行きましょう!」
2人でイチャイチャし始めた隙にエリオスと2人きりになれる所を求めて歩き始めた。
うまくまけたみたいで漸くエリオスと2人きりになれたはいいけど、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。
「乙女よ、会えて嬉しいです」
急に無口になった私に変わり、男らしく挨拶したかと思えば跪いて私の右手の甲に軽くキスをしてきた。
この一連の動作はとても優雅で、王子様そのもの。理想のシチュエーションにクラクラしそうだった。
と、その時だった。
「ヒューヒュー♪妬けるねぇ~お二人さん」
「本当、素敵ですわん♪」
「エリオス様、立派になられて……」
「感無量ですわ!」
護衛のセレスとジュノー、そしてメナード2人に目撃され、盛大に冷やかされてしまった。
こうして私とエリオスの初デートは邪魔が入り、出鼻をくじかれる結果になり、甘い雰囲気どころか、どっと疲れたのだった。
おわり