LITTLE PRAYER(S)


二人で心を合わせて祈ると、周りが優しい雰囲気に包まれた。
私はそのオーラに身に覚えがあり、祈る事をやめて顔を上げながら目を開けた。

「……クイーン!」

目の前にはあの時と同じ様に小さなクイーンが優しい顔をして立っていた。
私の言葉に驚いたエリオスも祈りを止め、目を開けた。そして、目の前の光景に又圧倒され、言葉を失ってしまった。

「このお方が……」

余りの非現実的な光景にエリオスはその後の言葉を発せないようだった。
気持ちは痛いほど分かる。どうすればいいか分からないよね、エリオス。

「スモールレディ、お久しぶりですね。それと、こちらのお方は?」
「お久しぶりです、クイーン。こちらはエリュシオンの祭司、エリオスです。えっと、私の恋人です」
「エリュシオンの祭司、エリオスと申します。お会い出来て、光栄です!えっと、お孫さんとは清いお付き合いをさせて頂いております」
「うふふ。エリオス、こちらも会えて嬉しいわ。昔は会うことは許されなかったものね」
「ええ」

エリオスがクイーンの事を知っている事は分かっていたけれど、クイーンもエリオスの存在を知っている様な口振りに私は驚いた。
そっか。きっと地球国の王子の無事をエリュシオンで祈る青年がいる事を言い伝えられていたんだ。祈りのタイミングが同じだったら同調する事もあったかもしれない。
46億年の時を超えての初対面か。凄いなぁ。きっと前世では出来なかったよね。

感動のご対面を見守りながらも私は、クイーンとエリオスを見て儚い雰囲気がとても似ているなぁなんて思っている事は内緒だ。

「ここまでは、どうやって来たのですか?」
「私のクリスタルで」

クイーンは疑問に感じたのか、どうやって来たのか質問をしてきた。
私のクリスタルでと言いながら自分のピンクムーンクリスタルを見せる。

「あら、銀水晶では無いのですね?」
「そうなんです。私のはピンクムーンクリスタルなんです。変ですよね?」

私が悩んでいた事。それは私のクリスタルがピンクであると言う事。
察してくれた訳では無いだろうけれど、クイーンは銀水晶では無い事に驚いたようだった。当然だ。月の王国は代々銀水晶を継承する。なのに私のは途中でピンクになってしまった。
突然変異に驚いた。どうしてだろうって。月の王国のものじゃないって言われているみたいで少し凹んでいた。

「どうして?」
「だって!月の王国は代々銀水晶を継承するのに、私のは銀色じゃないし。30世紀ではクリスタルがママのと私ので二つあるし。銀水晶って本来は一つでしょ?それが次のクイーンに継承されるものじゃないんですか?」
「確かにそうね。あなたの言う通り、銀水晶は前世では一つでした。それが代々受け継がれていました。それは否定はしません」

やっぱり。何かおかしいんだ、この状況。
きっと私が未来から過去へ来たせいでおかしな事になって、二つになってしまったんだ。

「幻の銀水晶って言われていたから、二つも存在するのはやっぱり変ですよね?」
「前世では有り得ませんでした。けれど、やはり状況によってそうなってしまうこともあるでしょう」
「可能性としては無くはないと?」
「ええ。前世では私たち月の王国のものはセーラー戦士として戦うことは無かった。しかし、プリンセスが生まれ変わり、状況が一変しました。あの子は月の王国を継げなかった代わりにセーラームーンとして覚醒した。そして、その未来の子供であるあなたも、未来や母親たちを助けたいと願いどうにかしたいと抗いセーラームーンを受け継ぐ戦士として目覚めた」

そう、その過程で私は自分のクリスタルを手に入れて力も貰った。

「その時は銀水晶でした。紛れもなく」
「変異する必要があったのでしょうね。あなたの心の変化で、変化した可能性が高いです」
「私の心の変化……」

そう言われ、チラッとエリオスに視線を配る。
エリオスを助けたい!みんなと力を合わせたい!うさぎの力になりたい!その一心だった。

「レディ」

私の様子を見たエリオスに手をぎゅっと握られた。励ましてくれているのかな?何だか安心する。

「必要な変化だったのだと思いますよ。あなたが言う通り、銀水晶が同じ空間に二つはおかしいですから。あなたに合ったクリスタルに変化したのでしょう。だから、何も思い悩む事は無いですよ」
「ありがとうございます、クイーン。お陰でスッキリしました!」
「いいえ」

やっぱりクイーンは凄い!心のモヤモヤがクイーンと話してみるみる晴れていった。
私に合ったクリスタルに変化か。これもママが地球人として生まれてきたことによる歪で、月の王国とは違うルールの元、臨機応変に対応しなきゃいけないってことなんだろうか。

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