金星が導くスポットライト



そんな中、そのゲストの歌のイントロが流れる。
すると、不安で沈んでいた会場の人達は、聞き覚えがあるどころか、今はもう伝説となり突然芸能界から姿を消しながらも復活を待ち望んでいたアイドルの曲に、驚きどよめいた。

「うそ?」
「え?」
「マジで?」
「これって夢?」
「寧ろ現実?」

どこからとも無く聞こえてくる会場からの声。それもそのはず、そのアイドルとは?

「ふふふ、もう皆んな分かったよね?それじゃあみんなで呼んでみましょう、せーの!“スリーライツーーー!!!”」

そう、美奈子が呼んだスペシャルゲストとは“スリーライツ”だった。
美奈子と一緒に呼んで、実際に星野光、夜天光、そして大気光が昔の衣装に身を包み、スポットライトを浴びながら予めスタンバイされていたスタンドマイクにそれぞれ立つ。

「待たせたな、みんな!」

センターでリーダーの星野光がそう言葉を発すると、会場のボルテージは再び上がり声援が鳴り響く。
大ヒットした曲“流れ星へ”を三人は心を込めて熱唱する。その間、美奈子ファンは黙って聞いていた。
一曲終わった後、待望のMCの時間がやって来る。

「改めまして、スリーライツの星野光です」
「夜天光です」
「大気光です」

“キャー、やてーん!”
“キャー、たいきー”
“わー、せーやー”

「先ずは、俺たちの為に時間を設けてくれた愛野美奈子さん、本当にありがとう」
「そして、待っていてくれたファンのみんな、ごめん。ありがとう」
「何も言わずに消えてすみません。最後の挨拶も出来ず心残りでした」

星野、夜天、大気はそれぞれ想い想いの言葉を口にする。
探していた火球皇女が見つかった。それに伴い益々激化した戦い。遂にうさぎを襲って来たギャラクシア。
敵地に向かう。それは突然決めた事だった。その為、ライブを開催する時間も無く、最後の挨拶も出来なかった。
死を覚悟した戦い。本当に死んでしまった。そして次に気付いた時には無事にキンモクセ星に戻っていて、そのまま復興。
地球にもう一度来るタイミングも時間も取れず、美奈子にこの話を貰って初めて余裕が出来たのだ。
火球にも後押しされ、地球へ戻り、ライブをする事を決意した。
本当は三人ともしたかったのだ。少なからず後悔と心残りがあった。プロとして最後まで出来なかったことに悔しさがあった。

「愛野からこの話を貰った時、驚いた。でも、大事なファーストライブに俺たちが歌っていいのかって葛藤もあって」
「断ろうかって話になってたんだけどね」
「愛野さん自身が私たちのファンで私が一番見たいんだって後押ししてくれて、出る事を決めました」
「そのお陰で、今俺たちはこうしてここにいられる。愛野、マジでサンキューな」
「いいのよ。快諾してくれて、こっちこそありがとう。スリーライツと同じステージに立てて、私も幸せ♡だから、ウィンウィン♪」

スリーライツの復活ライブを計画したのは他でもない美奈子だった。
途中離脱して美奈子自身その後のことは知らないが、スターライツとしてうさぎと敵地に向かい、そこで命を終えた。
その後、解散ライブも何も告知すること無くそのまま芸能界に伝説として名を残す事となった。
ライブの話を貰った時から、自身も見られなかったスリーライツのライブが見たいと美奈子はうさぎ経由で話を通して貰っていた。
勿論、マネージャーやライブ関係者にも相談した。驚かれ、それでいいのかと何度も念押しされた。みな、美奈子のファンだが、スリーライツが出演すると全て持って行かれることを懸念した。
それを承知の上でファンだったからやりたいと口説き落とし、周りを納得させた。
何より、マネージャーは美奈子にスリーライツと繋がりがある事に驚いた。

「後二曲だけだけど、楽しんでくれ」
「じゃあ、聴いてください」
「」

あと二曲。美奈子のファンはこの短い時間を全てスリーライツに集中して静かに聴き入った。
そして、終わりはあっという間に近づいた。

「スリーライツでした!」
「ありがとう」
「それでは」

これからの事には言及すること無く、三人は瞬く間に、まるで流星のように去って行った。
笑顔で清々しいスリーライツに対して、別れを惜しむように三人の名前やスリーライツのグループ名を叫びながら、ファンは泣き叫んだ。
嫌だ。終わりたくない。もっと見たい。それは美奈子とて同じであった。だが、満足した三人はその場に戻ることは無かった。

鳴り止まぬ声援と泣き叫ぶファンを見た美奈子は、まさかこんなにも喜んでくれるとは思っておらず、やはりスリーライツを読んでよかったと安堵した。

持ち歌がアルバム一枚分しか無かったのも項を制したのは間違いなかった。少ない曲の中で二時間、どうしたものかと策をねっていた。
カバーをしてみてはどうかと言う意見も出て、それも良いかもと一度は思うも、普通すぎると見送った。
そして知恵を絞り出した結果が、スリーライツを呼ぶと言う事だった。これには色んな人の協力が必要だったが、みな、楽しそうと言って快諾してくれたのだ。


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