愛の女神と一緒



『ルナの心はルナのもの』


学校帰り、一人で真っ直ぐ司令室に向かうとそこには先客がいた。同じく一人でいたルナだ。
一人、何するでもなくボーッとしているように見える。
無理もない。今、ルナは初めての恋に苦しんでいる。相手は人間で、その人には彼女がいることが発覚している。失恋確定だ。

「ルナ!」
「美奈子ちゃん……」

私が来ていたことに気づいていなかったルナは驚きを隠しきれないみたいだった。振り向いてワタシをチラッと見たかと思うと、すぐに伏し目がちに視線を反らした。
そりゃあそうよね。今、会うのが気まずくて会いたくない人の一人と寄りにもよって二人きり。仕方がないとはいえ、分かりやすくて胸が痛む。

「ルナは何にも悪くないわよ」

ルナが恋をしたことにより、既に決まっていた未来、アルテミスと結ばれてダイアナと言う子を設けると言う確定事項を捨てる形になってしまう。
アルテミスはずっとルナが好きだった。それはいつも一緒にいる私には普通にバレているし、何ならルナ自身も知っていること。だからこそ色々気まずいのだ。
でも、好きだと言ってもアルテミスは何もしていない。好かれるために行動を移していない。そんな奴、振られて当然だし同情の対象にもならない。

「ルナの心はルナのもの。誰にも、アルテミスにだって私たちにだって縛れない。正直に生きて欲しいの」

ルナはアルテミスの所有物じゃない。未来が決まっているからって、そうする必要なんてないし、ルナの心は自由だ。何にも縛られてほしくない。
未来にあぐらをかいて何もしていなかったアルテミスが悪いのだ。ルナがわるいわけじゃない。

「私はね、ルナには幸せになってほしいのよ!ルナにだって幸せになる権利あるんだから、あんな奴は無視無視!」
「美奈子ちゃん、ありがとう」

私の応援演説に、ルナは力無く笑顔を作りか細く答える。

「それに、アイツだってルナ一筋ってわけじゃ無いから安心して」
「え?」
「アイツ、ルナと会う前に浮気してたのよ。ふふふ、ナ・イ・ショよっ」

ルナ似の奴にってのは言わないでおいた。この場合、ルナを追い詰めるだけだから。しかも、犬な上にオスだったと言うダメ押し。

「ね、気持ちが軽くなったでしょ?」
「え、ええ、まぁ……」

アイツにはこれくらいの仕打ちしてやらなきゃでしょ?怠けて何もしていなかったんだから。
ルナ、幸せなって。それはみんなの願いでもあるから。




おわり

20240307 美奈の日

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