A美奈SSログ


「今年もいつもの花で」

「美奈子、誕生日おめでとう♪」
「ありがとう、エース」
「これ、プレゼント」

そう言って渡してくれたのは私の誕生花のダリア。
いつだったかの映画の恋人役オーディションに合格した時にくれた花。
何でも花言葉が移り気らしくて、惚れっぽい私にピッタリなんだって。
何で私が惚れっぽいって知ってるんだろ?ずっと見てきたから?それだけで分かるもの?

「ありがとう♪今年も綺麗ね!」
「美奈子の美しさを際立たせる気品溢れる綺麗さだよね」

アイドルだから歯が浮くようなセリフがサラッと出てきて、こっちが恥ずかしい。でも、普通に嬉しい。

「もう、エースったら!上手いんだから!」

そして私もそれをサラッと受け入れる。
私の美しさが分かるなんて、流石エース。お目が高い!

「俺は本音しか言わないよ」

真顔で言われ、ドキッとする。これは……そーゆー展開?そう思って目をつぶって待って見る。
フワッと唇と唇が触れたかと思ったら、あっという間に舌が入って来て深い大人のキスに変わる。甘美な刺激に頭が真っ白になってフワフワする。

「美奈子はおねだり上手だな」
「別に、そんなんじゃ……」

エースが積極的なんだって。付き合ってからずっとこんな感じ。
前世の事があったからかもしれない。知らず知らずに不安にさせているのかも。
それにセーラー戦士を続けていて、うさぎ、プリンセスの事を優先している事も不安にしてる材料かも。

「美奈子、愛してるよ」
「私も大好きよ、エース」

私だって不安じゃないと言えば嘘になる。
アイドルは恋愛禁止で。だけど、私と付き合ってくれている。
アイドル業に足を引っ張ってないか?とか。
いつかこの恋に終わりが来る。そんな気がする。
私も一番はプリンセスであるうさぎだし、エースの一番はファン。そうでなければならない。お互い様って奴だ。そう言った意味では同士、とも言えるかもしれない。
お互い、理解している事とはいえ、どこか寂しい。

アイドルをしてたからエースを知って好きになったからわがままは言えない。
エースだって私がセーラー戦士だったから好きになってる訳で……。
この関係が多分心地いいのかもしれない。
他に一番があるこの関係が、私たちにとってはベターなんだって。そう思う。

「どうした?」

不安に思っている心が顔に現れていたのか、エースに心配されて声をかけられる。

「美奈子はそのままでいてくれていいんだよ?全部ひっくるめて美奈子を好きになったんだから」
「それって、どぉゆぅ……?」
「戦士として月の姫君を凛々しく守っていたヴィーナスを好きだった。現世でも戦士として頑張ってる君との出会いがキッカケだった。いつだって美奈子はプリンセスが一番でいいんだ」
「エース……」

見透かした様に一番気になっていた、気にしていた事を言い当てて心を軽くしてくれる。
エースがそうであるように、私もまたエースの事はアイドルをしていたからそこ好きになった。

「エースも、ファンを大切にしてあげてね?」

本当は私だけを見て欲しい。愛して欲しい。だけど、そんなのエッグだ。
私だってうさぎが一番大事だから、自分ばかりわがままは言えない。

「寂しい事言うなよ。美奈子だって俺の大切な人に変わりないよ?」
「エース……あ、あたしだってそーよ?」
「無理しなくていいって!事情は分かってるから、強がらなくても俺は平気だから」
「でも……」
「プリンセスが一番な美奈子が好きだから」

そう言ってそっと私を抱き締め、唇を重ねて来た。
もうこれ以上は何も言わせない。そんな雰囲気だ。
深い口付けに何も考えられないし、満たされて行く。
こんな誕生日を迎えられて私は幸せ者だ。

END

2021.10.22

愛野美奈子生誕祭2021

7/17ページ
スキ