生まれ変わったら好きな人の子供になっていた件


俺、西塔海人12歳中一。
俺には前世の記憶がある。それも二つも。

一つはアドニスとして金星から地球にやって来て、クンツァイト様の部下をしている。金星人で、同じ星のプリンセスであるヴィーナスに淡い恋心を抱いていた。
そんなヴィーナスは上司のクンツァイト様に恋していると知った。そしてそのクンツァイト様もヴィーナスに想いを寄せていた。
しかし互いに想い合っていながらも叶うことなく地球も月も滅びた。俺自身の恋も終わった。と思っていたのだが。

もう一つ、今度は地球人として生まれたが悪の組織の手に落ちて、またもやそこでクンツァイト様の部下をしていた。
甘いルックスを生かしてアイドルをしながらエナジーを集める中でセーラーVと出会った。その人はセーラーヴィーナスの生まれ変わりだった。もう一度好きになった。
確実に彼女の近くにいて、距離を縮めていた。今度こそ彼女の心を射止める。射止めたと思っていた。
結局は月のプリンセスとクンツァイト様には勝てず、彼女の心はこちらに向くことは無く、彼女の手によりこの命は今度こそ終了。と思っていた。だが。

そして今、俺は海人として第三の人生を送っている。
また、生まれ変われると思っていなかった俺は、単純に驚いた。
と言っても最初から全ての記憶を持っていた訳では無い。前世の記憶が蘇ってきたのはここ最近のことで、戸惑いを隠せ無かった。

驚いたのは前世の記憶だけではなく、今の両親だ。俺の海人としての両親の名は公斗と美奈子と言う。
何と、クンツァイト様とヴィーナスの生まれ変わりが俺の両親だったのだ。
いや、二人が結婚したんかい!二人の子供として生まれてきてしまったのか?と言う疑問ツッコミはさて置き、クンツァイト様生きてたのか?と言う驚きが先行している。
そして、やはりこの時代でも美奈子を巡ってクンツァイト様と恋のライバルになるのか……

と言うのも俺は、物心付いた時から美奈子、いや、ママが好きだった。
幼少期の俺は、ママにベッタリだった。アイドルの仕事で忙しく、不規則で余り家にいないけれど、その時間はママに甘えまくっていた。大好きだ。どうしようも無いほどに。前世の記憶がなくても、異性として本当に好きだとドキドキしていた。
そんな俺の口癖はこうだった。

「僕、大きくなったらママと結婚する」

事ある毎に言っていた。その度にママは笑顔で喜んでくれて、こう返してくれていた。

「ありがとう、嬉しい♪待ってるから、早く大きくなってね」

きっと、いや、絶対真に受けてない。冗談だと思われている。そんな軽い口調だった。
そして、更にパパの言葉が追い打ちをかける。

「ママとお前は親子だ。結婚なんか無理だ」
「ママの旦那は俺だ。お前にはやらん!」

こちらはママとは違い、真に受けているのか。それともただの真面目か?
兎に角、幼い俺に現実を突き付けて来る。
まぁ、理由はどうあれ、小さい俺に危機感を持ち、ライバル認定されているのなら、こんな嬉しいことは無いんだけどな。
真意が顔からは全く分からないだけに、計り知れない。

パパの気持ちがどうあれ、ママへの気持ちは成長していくにつれて大きく強く、なって行った。
何でこんなに気持ちが膨れ上がり、抑えきれないんだろうってずっと思っていた。
ママが多忙でいないことが多いから?パパにダメだと言われたから?ずっと、分からなかった。ただ、苦しかった。

でも、分かった。漸く、繋がった。前世を思い出した事で、全て。
俺は、ずっとヴィーナスであるその人が好きなんだ。成就出来ずに終わった恋。まだまだ諦めきれていなかったみたいだ。

「クンツァイト様が邪魔だよなぁ……」

何でよりによって親子なんだよ。クンツァイト様も美奈子も。
せめて別であればまだ望みはあるのに。二人と血が繋がっているのか。その事実が、重く突き刺さる。
結局はやっぱり俺は、俺の想いは成就しないのか?愛の星出身者なのに、実らないなんて皮肉な話だと思う。

1/2ページ
スキ