A美奈SSログ
『何も知らない愛の女神へ』
君はきっと知らないだろうね。
前世でどれだけ君を想っていたか……。
そしてこの世界でまた君と出会い、思っていた通りやはり素敵な女の子で、また君に恋をした。
今度こそ君を手に入れたくて、近づきたくて、そして認識して欲しくて怪盗エースとして君の前に現れた。
初めて君の手を握れて、とても嬉しかった。
前世とは違うコスチュームだけどすぐにセーラーヴィーナスその人だと確信したよ。美しい外見、君を包むオーラが金星の光そのものだったからーー。
でも僕はまたクンツァイト様の下で、今度は敵ダンブライトとして君に近づいてしまった。君と戦う運命。そしてまた君とは結ばれずに終わってしまう。そう確信していた。
セーラーヴィーナスに覚醒した君にはなむけの言葉「君の恋は永遠に叶うことは無い」と恋占いでこの先の未来を未練のないように占ってやる。
前世の記憶とこの先の運命に衝撃を受けて戸惑った顔をしていたけれど、僕は知っている。
また月の姫君を守る為に戦うことに誇りを持ち、生き甲斐になる事に安堵し、喜びだとすぐに気を引き締め立ち上がるだろうとーー。そう、それは武者震いにも似た気持ち。
やがて整理が着いた君は戦士として月の姫君を護り、戦い続ける決意をしたのか笑顔を取り戻した。
頬を流れ落ちた一筋の涙は普通の女の子としての人生を捨て去る為に大切な儀式。
同時に笑顔の君はこれからの未来への決意。
そんな君を見てやはり前世で俺が好きになったセーラーヴィーナスその物だと思ったと同時に、
笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいと思った。
『心地が良い声』
耳触りのいいその声が、好きだと思った。
何故そう思ったかは分からない。
けれど、とても聞き心地のいいその声が、とても落ち着いた。
「将来の夢はアイドルなの」
その声はまるで歌っている様に伸びやかで軽やかだった。
なるほど、だから僕の耳に馴染んで絡みついて離さないのか?
「君なら絶対なれるよ、美奈子」
「お世辞でも嬉しいわ、ありがとうエース」
「お世辞なんかじゃないよ!確信してるんだ」
そう、その声は歌を歌うべくして産まれてきた、持って生まれた才能。埋もれさせるには勿体ない。
彼女自身もアイドルを目指しているから、自ずと応援してあげたくなった。後押し出来る心強い、そんな存在になりたかった。
「君の声はとても綺麗だし、歌った方が絶対にいいよ!」
「エースにそう言われると、嬉しい。自信出てくる!」
「絶対、成功するよ!みんな君の歌声の虜になること間違いない!日本一の歌姫になれる!それくらい素材がいい」
「そんな褒められると照れるなぁ~」
「アイドルにしておくの勿体ないよ!」
彼女の声から感じられる無限の才能を褒めるととても照れていた。
その声さえも歌っているように軽やかだ。
どんな顔で照れているのかとチラッと彼女を見ると泣いているのか、濡れた睫毛がゆっくりと下を向いた。
『愛の告白』
「好きって言ったら怒る?」
「はぁ?唐突に何言ってんの?」
「あっ、やっぱり怒った。ははっ」
「そりゃあ怒るわよ!急だったから……。それにそーゆー雰囲気じゃなかったじゃない!」
「もっと雰囲気作ってからの方が良かった?美奈子って案外ロマンティストなんだな」
「べ、別にロマンティストなんかじゃ、無いわよ!」
「怒った顔も可愛い。やっぱり美奈子は可愛くて好きだな」
「もう、バカ!」
「好きだよ、美奈子」
「あ、ありが……とう」
「美奈子は?」
「な、何が?」
「分かってるくせに。はぐらかして、美奈子はやっぱり可愛いな」
「か、からかわないでよ!」
「ごめんごめん。美奈子は俺の事好き?」
「……当たり前でしょ!」
「ちゃんと美奈子の口から聞きたい」
照れまくって中々言ってくれない“好き”の言葉に、焦れったくなって逃れられないよう追い込む。
「……好きよ、エース」
照れながらも笑顔で答える美奈子に心を奪われる。
笑い顔も眩しいほど美しくて好きだと思った。
照れ笑いする美奈子の唇に我慢出来ずにキスをするとその笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいと思った。
『愛なんて綺麗なものなんかじゃない』
階級の違う身分違いの恋をした。
手が届かない。そんな事最初から分かっている事だった。
だけど彼女に実際一目会って心が揺らいだ。
クンツァイト様の隣で楽しそうに百面相をしている彼女に心を奪われる。
美の女神に相応しく神々しい美貌
そしてその色んな顔を自分だけのものにしたくなる。
クンツァイト様なんかには勿体ない!
同じ母星の俺にこそその横が相応しい。
今すぐに彼女を奪いに行きたい!
クンツァイト様なんか止めて俺を見てくれ!
使命が何だ?俺と愛に生きてくれ!
そんな嫉妬と憎悪の心が支配する。
愛は素晴らしくて綺麗なものなんかじゃない。
欲深くて嫉妬と独占欲の塊で汚い物だ。
俺は愛の星出身であるのにこんな想いしか抱けない悲しい孤独の下級戦士。
きっと俺とは違い、愛の女神の心は清らかなんだろうな。
俺の汚い心で清らかな女神を汚したくない事もまた事実。
手が届かないくらいが丁度いい距離感なのかもしれない。
『一生恋はしない』
“僕は一生、恋をしない”
あの日ずっと憧れだった貴女に偶然出会った事で心に誓った。
貴女以上に恋焦がれる人にはきっとこの先も出会えない。確信と自信があった。
気高く美しい、まさに女神だと思った。
貴女をずっと慕って生きていこう。
例えこの恋が一生叶うことはなくてもーー。
おわり