恋人になりたくて


side V


☆☆☆☆☆

“恋がしたい!彼氏が欲しい!”

色んな人に恋をした。
その度に片想いで終わってしまった。
相手には私以外に好きな人がいた。
でも意外と悲しくなかった。
さっぱりした性格だし惚れっぽいからまた違う人を好きになればいいだけだと思ったし。

だけど好きな人に好きになって貰って両想いになるのがこんなにも難しいと思わなかった。
両想いでも付き合えるとは限らない事も知った。

Aに好きって言って貰えて嬉しかった。
私も好きだったから、初めての両想いだった。
だけど、急に自信がなくなった。不安になった。
本気の恋って何だろう?
恋に焦がれていただけで、今までの恋もエースへの気持ちも恋に恋してる自分に酔っていただけかもしれない。
セーラーVをやっていた事も原因かもしれないとも思った。

Aは今までの恋と違って本命だと思っていたのに、それも違った。

「俺を守ってくれ」

そう言われて違和感を覚えた。
この言葉さえなければ違和感を抱かなかったかもしれない。
守るべきはAじゃない。

せっかくAが私を好きになってくれたのに答えることが出来ない。
両想いになれたと言うのに付き合う事も叶わない。

今までの恋とは違って運命だと思っていたのに……。本気の恋だと思っていたのに……。

Aの恋人役では無くて、本当の恋人になれるかも知れないと喜んでいたのに……。

両想いになったその時、突然前世の記憶が流れ込んできた。そうだった。大切な事を忘れていた。

「私は金星を守護に持つ戦士セーラーヴィーナス。たった一人の大切なお方を守るために生まれてきた戦士」

アルテミスも猫が悪いわよ。
本当の使命ってこういう事だったのね!
前世でプリンセス・セレニティを守る四守護神のリーダーだった。

「君の恋は永遠に叶うことは無い。恋か使命か、この究極の選択にもう頭を悩ます必要なく生きていける。戦い続けろって運命」

ありがとう、A。
私を好きになってくれて。
前世を思い出させてくれて。
何が一番大切か方向を示してくれて。

前世だとか、運命だとか全然関係ない世界で出会ったら今度こそその時は本当の恋人に……。




おわり

2/2ページ
スキ