改めてデートを
『改めてデートを(ジェダレイ)』
和永は悩んでいた。
付き合ってそれなりに月日が経っていた。にも関わらず、あまり進展が無い。
と言うか、デートを殆どしていない。振り返ると、デートをした記憶がほぼ皆無だった。
「よし!レイをデートに誘うぞ!」
火川神社で定期的にバイトをしている和永は、今度のバイトにデートに誘おうと決意した。
「レイ、今度の日曜は暇?デートしない?」
「その日は先約が入っているので、無理ですわ」
瞬殺の撃沈である。
確かに、神社と言う特徴上、休みなど無い。
この日もやはり忙しいのか?と和永は意気消沈した。
「そーだよな。神社の参拝客で賑わってるよな。ゴールデンウイークだし」
そう、世の中はゴールデンウイーク。例え最終日とは言え、人は多いし、かきいれ時。そんな日に、デートも何も無いと誘った己の浅はかさを呪った。
「そうではありませんわ」
「え?神社の仕事では無いのか?」
てっきり、神社関係だと思っていた和永は、違うと言われ、驚いた。
それ以外、となると思い当たる節が、全くない。
「ええ、その日は母の日ですわ」
「あっ!そっか?え、でも……」
忘れていた訳では無いが、レイには母親はいない。
祖父から、レイが小さい頃に他界したと聞いていた為、無縁だと思い込んでいた。その為、和永は、言葉を言い淀んだ。
「そうですわ。私には、母はいないですわ。でも、命日が近いのもあって、毎年母の日にお墓参りに行きますの」
「そっか、墓参り!」
母の日と命日が近い事もあり、レイは毎年この日に1人で墓参りへと赴いていた。
今年も、例に漏れず、1人で行く予定をしていたのだ。
「1人で行くの?」
「いえ、フォボスとディモスも一緒ですわ」
「なるほど……」
フォボスとディモスは、レイといつも一緒だな、と和永は少し嫉妬を覚えた。
出会う前までのレイを知らない事に、焦ってしまう。
「俺も、一緒に行ってもいい?」
「え?楽しくないと思いますけど」
「全然、オッケーさ♪俺がレイについて行きたいんだよ!デートも兼ねて。レイさえ、嫌でなければ、だけどさ?」
「……」
そう言うことなら、是非母親に御付き合いしている報告をしたいと思い、和永は付き添いを買ってでた。
きっと今まで、フォボスとディモスが一緒だったとは言え、寂しかったのでは無いかと、寄り添いたかった。
勿論、デートもしたいという、下心もかねてだ。
「よろしいですの?」
「勿論!俺が行きたいんだよ。場所はどこ?遠ければ、車も出すよ?」
「少し、遠い場所にありますの。お言葉に甘えても、よろしくて?」
「俺、レイのカレシだよ?ドーーーンと頼ってよ」
「じゃあ、当日、よろしくお願い致しますわ」
「合点承知之助!」
嫌がられると思った和永だったが、すんなり同行を受け入れられ、拍子抜けしつつも嬉しくなった。
彼氏として頼られているのかと、自分の存在意義が見いだせた気がした。
「じゃあ、当日火川神社に迎えに来るよ」
そう約束し、バイトを終え、帰路へと着いた。