現世ジェダレイSSログ




『見覚えのない石(ジェダレイ)』


「これ、貴方に返しておくわ」

レイからそう言われ、受け取ったは良いがあげた覚えのない石を渡され、和永は戸惑いを隠せなかった。

「こんな石、あげた覚えないんだけど」

レイから受け取った石は毒々しい赤い色をしていた。
確かにレイのカラーは赤だ。しかし、こんな毒々しい赤を選んだりはしない。レイに似合わないからだ。
仮にあげるとしたら緑色のジェダイト石だろう。いつも自分だと思って身につけて欲しい。独占欲とも言える最高のプレゼントだ。
なるほど。レイが気に入らない色合いだから臍を曲げて返して来たのかとも考えたが、やはりどれだけ考えてもあげた覚えが全く無かった。

「あ、前世かな?」

現世だと思い込んでいたが、二人は前世からの仲だ。
プリンセスに忠実な戦士で男嫌いのセーラーマーズの気を引いて落とす為にどれだけ貢物をしたことか。苦労をしたと自負しているが、その中にこれがあって、それが何らかの因果で現代にもレイの元へと来たのだとしたら?
そんな事を考えながら呟くと、レイからキツイ一言が飛んできた。

「前世なんかじゃないわ!」

うさぎの銀水晶じゃあるまいし、前世のものが現代にタイム・ワープなんて馬鹿馬鹿しい。と銀水晶諸共一刀両断して全否定。
相変わらず気が強いお嬢様だと和永は思った。
前世でないとしたならばいつなのだろう。益々分からない。

「はぁ……」

レイからの深いため息に、和永は益々追い詰められた。

「ごめんなさい。私の言い方が悪かったわ。これは貴方のものでも、直接貰ったものでも無いの」
「え、何だ、そうだったんだ。じゃあ、なんで俺に?」
「この石の名前はクイン・ベリルよ」
「ああ」

名前を聞いて全て納得し、察した。
そりゃああげた覚えなんてあるはずがない。
毒々しい赤い色をしていてレイとは合わないのも納得だ。

「これを、どうしてレイが?」

それぞれ天然石の名前を与えられた四天王が死んだ後銀水晶の力で名前と同じ石となり、衛によって保管されていた事を考えればクイン・ベリルが死んだ後に石になっている事もおかしなことでは無い。
寧ろ当たり前のことだと思ったが、こうしてレイに渡っていた事が不思議だった。

「メタリアとの最終決戦の後、ルナとアルテミスから持っていて欲しいって言われて」
「そっか」

レイは霊感が強く、それらを清める力も持っている。
ルナとアルテミスもそれを分かっているからレイに持っていて欲しいと頼んだのだろう。
例え石となっていてもクイン・ベリルは王子エンディミオンに恋をした事でプリンセス・セレニティを恨んでいた。生まれ変わってもメタリアに付け込まれてまたその矛先を生まれ変わりであるセーラームーンに向けた。

「ずっと君がクイン・ベリルを清めて抑えてくれていたんだね」
「ええ、もうあんな悲劇は真っ平御免ですから」
「そうだね。でも、もういいのか?」

ジェダイトである自分にクイン・ベリルの石が戻ってくるのは分かる。
四天王の誰かが持つべきだと言うのも理解出来る。それが和永なのも適任だとも感じている。
しかし、災いの石であるならばレイの元でずっとあった方が良さそうだと思った。

「私が持つより貴方が持っていた方がクイン・ベリルも安心するでしょうし、落ち着くと思うの。調和の二つ名を持つ貴方なら私も安心だわ」
「参ったなぁ。随分と信頼されたもんだ」
「あら、自信が無くて?」
「いや、嬉しくてさ」

レイから絶大な信頼を得ている事に、和永はこの時初めて知り、兎に角嬉しくなった。恋人として頼られている事に男として誇らしくなり、自ずと自信に繋がった。

「じゃあ、この石は俺の家で大切に保管するよ」
「よろしくね。時々話しかけたりしてあげて」
「はは、そうするよ」

こうしてクイン・ベリルの石は、ジェダイトである和永の手に渡った。




おわり

20241114 いい石の日


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