俺の知らない彼女
いよいよ明日は彼女のバースデー。
付き合って初めてのレイさんの誕生日。
すっげぇワクワクする。
誰よりも早く彼女を祝いたい。祝ってやりたい。その一心だった。
「12時まで10分前か……」
スマホを握り締めながら俺は、ソワソワしていた。
日付が変わった瞬間にお祝いメッセージをおくる。そう決めていた。
文章はもう打ち終わった。誤字脱字チェックもした。おかしな所はないか?それも何度も読み返した。後は送信するのみ。
「後1分か……」
時計を見ると1分前。いよいよカウントダウンだ。デジタル時計を見て17日に近づくのをドキドキしていた。
「12時になったぞ!」
12:00になった瞬間、メッセージを送信。
LINEの画面を凝視して1分程待つが、やはり既読にはならなかった。
「やっぱりもう寝てしまってるか……」
巫女の彼女の朝は早い。例え休みと言えど、夜更かししてゆっくり寝ると言う概念は無い。
以前、何時に起きているかと問うと「5時ですわ」とキッパリ言われた。顔には“当然のことだけれど、何か?”と書かれていた。
じゃあ、何時に寝てるのかと問えば、「9時ですわ」と帰って来て衝撃を受けた。
まるで老人的生活。若いのに関心だ。
そんな彼女だから、例え自分の誕生日だからといって、日付変わるのを待機するわけもない。
でも、彼女の仲間、特に美奈子なんかは俺と同じで日付変わる瞬間におたおめメッセージを送ってそうだ。
それをレイさんだって毎年の事だから分かってるだろうし、待機しているのでは?
と思ったけど、クールビューティが売りの彼女。無いなと思い直す。
「仲間優先でメッセージ返してる、とか?」
無いとは思いつつ、もしもを妄想。
うさぎちゃんは衛とよろしくやってて、無いとして、まこっちゃん辺りも夜更かしして送ってそうだな。
亜美ちゃん、は勉強で忘れてるか、効率よく勉強する為に寝ていそうだ。
他にTA女学院の友達からも来てるかも?
返してラリーが続いていたら、俺のメッセージが中々既読にはならないのも頷ける。
「12時30分か……」
そんなこんなで、未読のまま早くも30分が過ぎた。
やっぱり寝てるのかもな……と考え、スマホを眺めるのをやめにした。
即既読になって、返事が帰ってくるなんて最初から期待はしていない。寧ろ、想定内なんだからガッカリするのも違う。
「本番は明日の朝だ」
誰より早くお祝いメッセージを送れていたかは分からない。
だけど、プレゼントは誰より早く渡したい!
何より俺が早く彼女に会いたい。
早起きしている彼女を見習って、俺も早く起きてプレゼントを渡す。
どんな渡し方をしようか?とか、彼女は喜んでくれるか?とか、どんな顔をするだろう?と思い巡らしながら、寝ようとするが……。
「ね、眠れねぇ……」
色々妄想していたら、興奮し過ぎて中々眠りにつけない。
刻一刻と時間がすぎて行く。やべぇ。寝られなければ、早く起きれねぇじゃねぇか……。
考えれば考える程、目が冴える。
いかん、いかん!
ひつじが1匹、ひつじが2匹、ひつじが3匹……