Burnin' X'mas


車の中で街を適当に走りながら一通り都内のイルミネーションを堪能した後、彼女を家に送る前に近くの公園に車を停車させて外に出てベンチへ2人並んで座る。
普段は殺風景な十番公園も少しではあるがイルミネーションがライトアップされていてとても綺麗で、雰囲気を演出してくれていた。

「はい、これ私からあなたへプレゼントよ」

プレゼントを渡そうとした正にその時、予想していない彼女からプレゼントを渡され驚いて思考回路がショートした。

「何よ?いらないなら捨てるわよ?」
「いるよ!欲しい!え、マジで?うわぁー嬉しいよ!君からのプレゼント!何だろ?開けていい?」
「良いわよ」

嬉しすぎて反応が遅れると、短気な彼女の心が傷ついたのか機嫌を損ね逆ギレしてしまい慌てて喜んでプレゼントを受け取った。

「マフラーじゃん!うわぁー暖かそう。ありがとう、レイさん」
「どういたしまして。“レイ”で良いわよ!よそよそしいでしょ?」
「え?」

照れた感じで呼び方について指摘してきた。デートらしいデートも恋人っぽい事もしてこなかったし、お嬢様な彼女に少し遠慮と引け目を感じて“さん”付けを変えずにずっと流れでそのまま呼んできたけど、もしかしてもしかしなくてもさん付けに不満があったのかもしれない。彼女の提案に単純に嬉しく、甘える事にした。

「じゃ、じゃあ…レイ、このマフラーってもしや手作り?」
「そうよ!不服かしら?」
「いいや、嬉しいよ!めっちゃくちゃ最高に嬉しい!」

やったーとバンザイしながら喜ぶ俺を見て珍しくふふふっと笑顔を見せて笑うレイ。笑った顔も美しい!クールな彼女がこんなに色んな感情を解放してくれるなんて思いもしなかったから、やっぱりクリスマスの威力は凄まじいと思った。
前世で軍服を来ていた時の俺のイメージカラーである青系の色を数種類使ってコントラストが出てとても鮮やかで爽やかなマフラーだった。
俺のイメージカラーを覚えてくれていたこと、そして俺の事を思いながら毛糸を選んだり、ひと目ひと目編んでくれたのかと思うと胸がいっぱいになった。

「これから毎日このマフラー巻くよ!あぁ~あったけぇ~」
「大袈裟ね!」

首にマフラーを巻いて喜んでいる俺を見てまた笑顔を見せて笑うレイ。

「あっそうだ!俺もプレゼントあるんだ。気にいるかは分からないけど…」
「ありがとう。開けてもいい?」
「勿論!」

包装紙を開け、中身を見て驚く彼女。

「これって…」
「そう、コスメ一式。まぁすっぴんでも綺麗だから要らないかと思ったけど、化粧したレイももっと綺麗だろうから見てみたいなと思って」
「1人でデパ地下買いに行ったの?」
「うん、美容部員さんに色々教えて貰って買ったんだ」
「この間のメイクってまさかこれの為?」
「流石、察しがいいね?ご名答だよ」

そう、数週間前のバッチリメイクの詳細はレイの察した通りデパ地下のコスメコーナーへ行き、美容部員さんに彼女の写真を見せてレイに似合うコスメを一式選んでもらい、どんな風にメイクするのかも自分の顔でご教授頂いた。それをそのまま買ったというのが一連の流れと言うわけだった。
男一人で結構恥ずかしかったけど、レイに喜んで欲しくて頑張った。いい社会見学と経験になって結構楽しかった。

「頑張ってくれたのね?ありがとう」
「どういたしまして」

お礼を言う彼女と熱く強い視線がぶつかり、沈黙が流れムーディーな雰囲気になる。

え?これってまさか、キ、キ、キ、キ、キ、キ、キッスをしてもいい感じなのでは?

たった数時間前まではレイの家に行ってプレゼントを一方的に渡して帰るだけのクリスマスしか想像してなかったのが一変、キスまで出来そうなこの雰囲気に戸惑いを隠せないでいる。これは夢か現実か?

あぁクリスマスの神様、キャンドルよ、十字架よ、この俺の愛に力を与えてくれ!

一歩踏み出す勇気が足りず戸惑っているとレイが少し身体を伸ばし、目を閉じながら近づき唇に直接キスしてきてくれた。

嬉しすぎて驚くと同時に男としてリード出来ず彼女にさせてしまった後悔で自己嫌悪に陥る。

顔を離したレイの両肩を持ち、意をけして今度はこっちから唇を奪いに行った。

今度は彼女が驚いていたようだけど、受け入れてくれた。

暫くして顔を離すとレイはとても照れていた。

聖なる夜の奇跡だと思った。夢うつつだった。

もっと距離を縮めてもいいのかな?と欲が出てきて、打算計算しつつ距離を詰めて、抱き寄せようかと思ったけど、流石にそれは勇気がなく理性でストップした。

「レイも俺の事“かずと”って呼んでよ」

キスの余韻の後の気恥しい雰囲気に漸く発せられた言葉は、呼び方についてだった。俺もレイに呼び捨てに呼ばれてより恋人っぽくなりたかった。

「…分かったわ。そのうちね?」

キスした後でこれ以上の恥ずかしい事はキャパオーバーだったのか、呼んでくれず次回へと持ち越しの課題となった。

“かずと”とは読んでは貰えなかったけど、クリスマスの力か、イルミネーションドライブデートは出来るわ、プレゼントは貰えるわ、“レイ”呼びを許されるわ、オマケに彼女からキスまで貰えてオカワリまで出来るわで上出来以上では?天変地異や変な敵の侵略で戦って死んだりしないよな?

いや、マジで!信じられない最高のクリスマスに聖なる天使の贈り物に感謝だ。




おわり

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