Burnin' X'mas
階段を上がったところで彼女が私服で腕を組んで仁王立ちで待っていた。
「来ると思ったわ」
イベントの度に敏感に彼女と話したりしていると感の鋭い彼女には流石に全てお見通しと言ったところのようで、簡単に自分の行動を読まれていて恥ずかしくも嬉しくなった。
神社の仕事をしていて巫女姿かと思っていたが、待ってくれていた彼女は私服姿に身を包んだ普通の女子高生の格好だった。
彼女に似合う赤のニットのワンピースに丈は戦闘コスチュームより気持ち少しだけ長いミニで、白のロングコートを羽織り、白の膝下のブーツで階段を上がった鳥居の前で待っていてくれた。赤と白でコーディネートされたそれは決してクリスマスだからと言う訳ではなく、ただの彼女のイメージカラーだからだろう。とても良く映えてて似合っていた。
まるでサンタクロースの様な出で立ちの彼女は、自分にとっての正にそれで、自分とこの日のイベントを前から楽しみにしていてくていた彼女からのサプライズプレゼントだと思うとそれだけで心が満たされる。
「ずっと待ってくれてたの?」
嬉しい感情と同時に彼女をこの寒空の中待たせてしまっていたのなら幾ら頑丈な彼女でも寒くて凍えて震えているだろうと心配になった。
「そろそろ来る頃だと思って出て来た所だから大丈夫よ」
俺に心配させまいとしてついた嘘か、それとも本当の事かは彼女の表情では全く読み取ることは出来ないけれど、来ると思い待ってくれていたことは本当に素直に嬉しい。
と同時に神社の仕事はどうしたのかという疑問にぶち当たった。
「神社は大丈夫なの?」
「クリスマスで誰も来なくて暇だから良いってお爺ちゃんが」
今日は平日な事もあり、朝からもほとんど来なかったらしくとても暇な1日だったと彼女の祖父が言っていたらしく、たまには休んで学生らしく遊んで来なさいと粋な計らいがあり、いつもは制服から巫女姿に着替える所を余所行きの格好をして俺を待つことにしたらしい。レイさんの爺ちゃん、グッジョブ!心の中でガッツポーズをしまくる。
でもこの展開を全く予想していなかった俺は大学に行った服装のままで、彼女とは真逆にクリスマスと彼女に似つかわしく無いクソダサファッションな上に、何処かに行くにしても何処も人が多いのは予想しなくとも分かる。ただでさえ人が多い大都会トーキョー、人混みなのは容易に予想出来る。嬉しい悲鳴と誤算に頭を悩ます。
「どうしようか?どこか行く?でも、どこも人多いよな?車で来てるからドライブがてら夜景でもどうかな?」
「どこでもいいわよ。時間もったいないから行きましょ!」
彼女に仕切られる形で神社の階段を下り、車を停車してる所へ行く。
鍵を外し、助手席のドアを開けて彼女をリードする。
お互い車に乗り込むとシートベルトをして、ノープランの夜景デートへレッツゴー!
…ってウキウキしてたけど、よく考えなくてもレイさんを車に乗せること自体初めてで急にハンドルを握る手が緊張する。普段は俺が彼女の実家である神社にバイトとして行っていて、そこでばかり過ごしていてデートらしいデートは無く、ロマンスな雰囲気とは程遠いから。カッコイイところ見せたい。いや、安全運転を心がけなくては!
色々邪な事を考えていると会話もなく走らせていた事に気づく。
「やっぱり人多いなぁ」
安全運転を心がけながらも適当に走らせながら街の様子を見てただの感想を述べるに至った。何とも単純馬鹿な自分に腹が立つ。
「そうね。でも街中のイルミネーションはとっても綺麗よ」
気を使ってくれているのか会話を広げてくれてホッとする。
イルミネーションの話に花が咲き、普段口数が少ない彼女が気を良くしたのか軽やかに饒舌に話してくれ、CIM(クリスマスイルミネーションマジック)だと思った。