現世ジェダレイSSログ


「レイ、花火いっぱい買ってきたからやらない?」

バイトのない日の夕方、火川神社に手持ち花火を持ってレイに会いに来た。突然の事だから断られる事前提だ。

「良いわよ、しましょう♪」
「そうだよな……急だから無理だよな。……って、えぇ?」

断られるって思っていたから即答でOKを貰えるなんて思ってもなかった俺は、驚き過ぎて素っ頓狂な声が出た。

「何よ?」
「いや、断られるって思ってたから、いいの?」
「失礼ね!私の事なんだと思ってるの?」
「いや、花火とか興味無いと思ってたから」

クールビューティーだと思ってますとももう言える雰囲気ではない。
せっかくOK貰ったのに機嫌損ねてやっぱり止めると言われるのが怖い。

「興味あるわよ!ちょっと待ってて。ロウソクとチャッカマン持ってくるから」
「了解!」

そう言って家に入っていったレイだが、かれこれ30分戻って来ない。
お陰で夜も更けて花火するにはちょうどいい暗さにはなったけど……。
チャッカマンとロウソク位なら1、2分で戻ると思っていたのに、どうしたんだろう?
まさか俺、忘れられてる?それとも、考えたくないけど体調がいきなり悪くなったとか?宮司であるお爺さんが倒れたとか?
そんな嫌な事を考えてしまう。

「お待たせ」

ううん、全然待ってないよ!と明らかに嘘なのに、ベタなカップルの待ち合わせの受け答えをしようかと思いながらレイを見て驚く。
何故30分以上戻って来なかったかが一目瞭然だったからだ。ーー浴衣姿だ。
そして取り巻きが2人。ーーカラスの燈と燿だ。
双子の方も浴衣を着ていた。レイが着付けたのだろう。
でも何故どこにも行かずここでやるのに浴衣なのだろう?

「浴衣着たの?」
「ええ」

色々ツッコミ入れたいことは置いておいて、やっぱりレイの和装は絶品!巫女姿も良いけど、浴衣もそそる!勿論、洋服や制服、戦闘服も最高だけど。
30分以上待たされたけど、レイの浴衣姿がお目にかかれたし、体調が悪いわけでもなかったからもうどうでもいいや。
まぁ双子は余計だけどな。

「燈と燈もいいわよね?」
「ああ、勿論!」
「「よろしくお願い致します!!」」

本当は嫌だけどレイに頼まれれば仕方ない。それにいっぱいあるから大勢でやる方が楽しいしな。
ロウソクにチャッカマンで火を付けながらこの状況を納得させる。

「うわぁ~ずっとカラスだったから花火初めてでドキドキするわね!」
「本当ね!こんな日が来るなんて感無量よ」
「うふふ、2人とも大袈裟ね」

そんな会話をしながら3人は適当に花火を手に取り火をつける。
花火をしているレイを見ると、とても楽しそうで俺まで幸せな気持ちになる。
そして何より花火越しのレイがとても綺麗で見惚れてしまう。
そこに浴衣姿、とても神聖で風流で趣がある。なるほど、花火に浴衣は合うなと単純に納得する。しかもここは神社。何か出来すぎてる気がするが、もうなんと言うか整いました!って感じだ。

「どうしてOKしてくれたの?」

俺も花火をしながらレイに話しかける。
こういうものって好きそうじゃないからすんなりOK貰えたことがとても不思議だった。

「好きだからよ」

俺の事が?と質問したい所をグッと堪える。

「花火が?」
「ええ、やっぱり私、火を見ると落ち着くのよね」

なるほど、そう言う事か?
火を司る戦士で、占いも技も何もかも火を使うから花火も好きなのか。納得した。

「それとね?」

他にも理由があるのか?

「燈と煌も花火を楽しんでもらいたかったのよ。今まで地球ではほとんどカラスで過ごして来たから、色んな経験をして楽しんで欲しくて」
「そっか……レイは優しいな」

それで2人も当然の様に浴衣姿で参加したのか。そんな裏事情があるなんて思ってなかったから、無碍に断らなくて良かった。
そもそも2人はこの地球じゃ無くて確かコロニス星が母星なんだったよな?訓練兵だっけ?そりゃあ経験出来ないわな。
初花火に楽しそうにキャッキャしている双子を見て微笑ましくなった。

「それにね?」
「うん?」

え?まだあるのか?今回はやけに強欲、いや、理由が色々あるんだな?

「和永とももっと恋人らしい事して想い出作りたかったのよ」
「レイ……」

いつもツンが多すぎて中々デレがないけど、デレた時の破壊力はヤバいな。
今回は特に糖度が濃い気がする。
嬉しすぎて照れるし、にやける。
夜で余り顔の表情が分からなくて助かった。
レイはどんな顔をしてるんだろう?

「ありがとう、レイ。最高の想い出になったよ!」

そう言ってキャッキャしてこちらを全く見ていない双子を横目でチラッと見て確認すると横で花火をしているレイの頬っぺにキスをした。

「危ないじゃない!」
「照れてるレイも可愛い♡」

幸せな気分に浸り完全に浮かれていた俺は、この後双子にキスのことで散々からかわれる事になる未来を全く想像していなかった。




おわり

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