Baby☆Panic


『𝐁𝐚𝐛𝐲 Panic(ジェダレイ)』

『べいびー・ぱにっく』

「ご懐妊ですね。おめでとうございます。現在14週になります」

ここの所体調が悪く、もしかしてと思い亜美ちゃんの紹介で婦人科に見てもらいに来ていた。

和永も体調が思わしくない私を心配して彩都さんに相談していて話が早かった。

当の本人である和永が分かって無いのに何故か普通に亜美ちゃんから婦人科を勧めてきて若干怖かったけど。

やっぱり妊娠していた。

勿論嬉しいけど、自分のお腹の中に命が宿っている実感が湧かなくて何処か他人事に思える。

自分が母親になると言う事も想像出来ない。

幼い頃に母と死別して多忙の父に連れられ火川神社の宮司をしていた祖父の所で暮らしてた私は、母との記憶が余り無く、ちゃんと母親が出来るか不安が先行していた。

ちゃんと自分に母親がつとまるだろうか?
子育てできるだろうか?
ちゃんと愛情を分け与えられるだろうか?
愛情表現が分からないし母親ってどんなものかも分からないから不安な事だらけ。

そんな事を考えながら帰路に着いていてハッとなった。

また悪い方に考えてしまっていた。私の悪い癖だ。

うさぎや和永に出会って変わったと思ってたけど、中々抜けないでいる。

まだ産んでもないのに悪い方に考えるのは胎教にも悪い。

彼ににどう伝えようか考えながら帰る方が楽しいはず。

そんな事を思っていると火川神社に着いてしまった。

いつもなら慣れた火川神社の大階段が体調と不安な心のせいで凄く辛く感じてしまう。

一段一段確実に体に気をつけながら登っていくと和永がソワソワしながら待っている姿が目に入ってきて少し笑顔になる。

病院について行きたがっていたのを静止して家で待っててもらっていたけど、心配して落ち着かなかったんだろうと思うと診察室には入らないまでも着いてきてもらえば良かったかもと少し後悔した。

向こうも私に気づき、慌てて駆け寄ってきた。

「お帰りレイ。大丈夫だった?」

まだ妊娠の可能性や婦人科に行ったとは言ってないから不安そうに体調の心配をしてくれる。

「大丈夫よ。問題ないわ。心配してくれてありがとう、パパ」

少し遠回しに妊娠した事をほのめかしてみる。

「そっか、良かったー。…ってパパ?へ?」

いつもは名前を呼び捨てにしているから違和感だったのか素っ頓狂な返事が返ってきた。

「そうよ、あなたパパになるのよ。出来たの、赤ちゃんが。14週目ですって」

「えぇぇ~うわぁぁぁ~マジか!?おめでとうレイ」

「ありがとう」

ありきたりに伝えたけど無邪気に喜んでくれてひとまずホッとした。

「安産祈願しないとな!それは俺に任せろ!あっ!安産のお守りも!幸いここは神社だから何でも揃ってるぞ。名前も決めないとな。男の子かな?女の子かな?女の子ならレイに似て美人だろうなぁ~変な男がよってきたら困る」

和永は美奈が昔言ってた通り、婿養子になってタダで神社で働いてくれている。

はしゃいで凄く喜んでるのを見て、ちゃんと母になれるかと不安になってた心がみるみる晴れて行く。

多かれ少なかれみんな不安と戦ってるんだから出来る限り考えない様にして楽しい事を考えよう。

産まれるまでにしなきゃいけないことや買い揃えなきゃいけないものもあるし忙しくなる、悩んでる暇はないわね。

皆にも報告しなくちゃいけないし、特に亜美ちゃんにはお世話になったし早く報告してあげないと。

「そうだレイ、衛達にも報告していいか?特に彩都には相談に乗ってもらったから早く報告してやらないと。」

「そうね。私も亜美ちゃんにお礼を兼ねて直接会って皆にも報告しようと思ってるから、彩都さんには和翔からお礼言っといて貰えると私も助かるわ」

「分かった。俺もアイツらと直接会って報告するよ」

「ありがとう。お願いね」

同じ日に別々の場所でそれぞれ報告する事になった。

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