暑さになんて負けてらんない!


外に出れば容赦なく突きつける太陽の光と炎天下。暑い!死ぬ……。
まこちゃん家に無事辿り着ける気がしない。
でもお昼だしお腹空いた。暑くても食欲が落ちない自分の食い意地が恨めしい。
まこちゃん家に行けば美味しいお料理にありつけるって分かってるから、この炎天下を移動するというダンジョン、絶対に攻略してやるわ!

底なしの食い意地パワーで何とかまこちゃん家に到着した私は、RPGに勝った気になり思わずガッツポーズをした。
そしてここでまたアポ無しで勢いと欲望の赴くままに来ていたことに気づく。
いないって可能性もあるよね?
亜美ちゃんと違って何かと外に趣味があるし、彼氏は車大好き星人だし、外にドライブとか有り得るわ。

ピンポーーーン!!

いないという覚悟で呼び鈴を鳴らす。

「はーい」

いた!良かったぁ~命拾いした。

「やっほーまこちゃん♪来ちゃった♪♪」
「美奈じゃないか!どうしたんだい?」
「家にいても暑いだけだし、遊びに来たの」
「そうか、上がって」

玄関を上がると良い匂いがして来た。
思った通り何か美味しいものを作ってるらしい。

「おお、美奈子ちゃんいらっしゃい!」

リビングに入ると大柄の男が笑顔でこちらを見て挨拶して来た。ーーまこちゃんの彼氏のユージーンだ。

「こんにちは~♪今日はバイトとか無いの?」
「テスト期間中だからな。夏休みは8月からだし、バイトはその期間びっちり働いて稼ぐぜ!」
「そっかー大学はまだ夏休みじゃないんだ。大変ね」
「そーでもねぇよ。美奈子ちゃん1人だけどリーダーは?」
「アイツは一足先に社会人だから馬車鹿の如く働いてるわよ!」
「馬車馬な?汗」
「アハハハ~そーともゆーわね」
「そうしか言わねぇけどな……」

アホな会話をしていて気づくの遅かったけど、何だかこの部屋影が多い。こんなんだっけ?

「また緑増えてるね!」

この前来た時より明らかに新入りがいっぱいいた。本当にまこちゃんは植物大好きなんだなぁ。

「夏は緑を増やした方が涼しいからな!勇人と一緒に色々買って植えたんだ」
「へぇ~同じ趣味があるって良いわね~」

2人で花屋やホームセンターで楽しく観葉植物や種を選んでる所を想像して妬けて来た。そして暑苦しいし、虚しくなった。

「美奈は公斗さんとは共通の趣味は無いのかい?」
「……あるわけないじゃない!共通と言えば“主君命で負けず嫌い”って所だけよ!」
「ハハ、そうか……」
「ねぇまこちゃん、窓にかかってるのは何?」

ベランダの外に大きな窓を遮るように植物らしきものがあり、それが部屋を暗くしてる原因だと気づいた。

「ああ、これはグリーンカーテンだよ」
「グリーンカーテン……?」
「そう、カーテンみたいに緑で覆うことで気温を上がるのを抑えるエコの1つさ」
「へぇ~どうりで日光入って来なくて涼しいと思った」
「勇人に手伝ってもらってやったんだ」
「ラブラブねぇ~2人の初めての共同作業って奴?」
「それは結婚式のケーキ入刀……」

最初はエアコンが着いてるのかと思っていたけど、そういう涼しさじゃないことに気づいた。
なるほど、これが涼しくしている原因か。確かに涼しいし、エアコンいらずでお金かからなくて良いか?

「グリーンカーテンに何か出来てるよ?」
「ゴーヤだよ!どうせなら食べられる物育てたくて」

一石二鳥どころか三鳥くらいか……。まこちゃん、節約の鬼ね。

「今、取れたゴーヤ使って昼食作ってるから食ってくだろ?」
「うん、お腹がすいて力が出なかったのよ……」
「アソパソマソのキャラじゃねぇんだから!ガハハハハハ」

いやユージーン、私、本気で力出ないから笑い事じゃないのよ?

「はい、召し上がれ」
「いっただっきまーす」
「いっぱい作ったから遠慮なく食ってくれ」

昼ごはんはゴーヤーチャンプルーと炒飯がいっぱい作られていた。

「ん、美味しい♪流石、まこちゃん!」
「だろ?まことの手料理は美味いんだよ!止まらなくて大変だぜ」

そう言いながらユージーンは本当に止まらずいっぱい食べていた。……胃袋宇宙じゃん。

「おなかいっぱい。満腹満足♪お礼に片付けるよ」
「いいよ、お客さんなんだから座ってて」
「片付けるって!」
「いや、マジでじっとしてて欲しいんだけど」

かなり強めに断られ、結局やらせて貰えなかった。

「じゃあ私、そろそろ帰るよ」
「もう帰るのかい?もっとゆっくりして行きなよ!」
「充分ゆっくりさせて貰ったし、ご飯まで頂いちゃったからおじゃま虫は帰るね。じゃあね」

まこちゃん家も彼氏が入り浸っていてゆっくり出来なかった。
よし、今度はレイちゃん家に行くわよ!
神社だし、神聖で空気も違うし涼しいと思う。
まぁバイトでガースー君がいるかもしれないけど、いつもだしね。

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