七夕に願いを込めて

「あ、雨止んだ!」

 恥ずかしくなり視線を反らした美奈子は、雨が止んでいる事に気づき声を上げた。

「ホントだ! 七夕もなにとぞ!」

 うさぎは空に祈った。雨が降らず、織姫と彦星が会えるようにと。

「銀水晶で何とかなるんじゃないの?」

 先程から祈っているが、それができる一番可能性があるのは銀水晶を持っているうさぎだろうと彩都は指摘した。

「私、知ってるのよ! 銀水晶はうさぎの心次第だって」

 だから祈れば晴れるでしょ! バカなの? と彩都は続けてうさぎを攻撃する。

「出来なかったから、祈ることしか出来ないんだもん!」

 頭をフルフルと振り、もう試し済みであることを吐露する。天気にも神様が存在していて逆らえないのだとうさぎは絶望していた。
 天候に左右されない月の聖蹟である事も少なからず関係しているだろう。兎に角、銀水晶にも何かと限界と制約があるのだと長年一緒にいて感じていた。

「肝心なときに、ダメねぇ」

 彩都の何気ない一言に、本当にそうだとうさぎは心に突き刺さった。

「よし、決めた! 七夕に雨が降ったらみんなで月に行く!けってーーーーーい!」
「は? 本気? てか、何処ぞこアニメの主人公みたいに言ってんじゃないわよ!」
「何で月?」

 雨が降っては織姫と彦星が会えるのを見届けられない。雨が降らない月に行くことで回避しようとうさぎは考えた。
 彩都は驚き、和永は疑問を呈す。

「うさはいつだって本気だ」

 うさぎと三年程一緒にいた衛は、彼女の言動にすっかり慣れてしまい動じる事無く淡々と至って普通に答える。
 四守護神も同じで、衛の言葉にそれぞれ頷き同調する。彼女達の場合は慣れたというより呆れているという表現が正しいか。

「俺等が行っても、いいの?うさぎちゃん」
「我々が月を滅ぼしてしまったのに、宜しいのですか?」

 勇人が驚き、公斗は確認する。

「良いんだよ♪そうやって責任感じてると思ってたからさ、招待したいんだ。あれはあたしが悪かったんだし。それに月、元通りになったの。四天王にも見てほしいんだ」
「いいんですか?」

 公斗は、それでも信じられないともう一度念を押す。うさぎも衛も、美奈子達もニッコリ微笑んでいた。それがこたえだった。

「月か~。みんなで行けるの、楽しみ♪」

 曇の空を見上げるうさぎ達。月は生憎見えないが皆、月に思いを馳せていた。

 ややあって。

「短冊も書いたから帰るか?テスト勉強しないといけないからな」
「げんじつ〜(涙)」

 衛達も短冊を書き終え吊るしたのを見届けて、公斗が美奈子に帰って勉強すると言い出した。一気に現実に戻され、見るからにゲンナリと落ち込む美奈子。

「じゃあ笹の木、持って帰ってくれると助かるわ」
「あたしは一本貰うね。今年は公斗の家に飾るわ」

 レイに礼を言いながら一本手に取る美奈子。

「俺も一本くれ。まことの家に飾る」
「そのつもりだったけど」
「やっぱり? 来年は笹、二人で育てようぜ」
「それ、楽しそうだな」

 まことと勇人は、今年は一本貰うが来年は自分達で育てようと張り切る。

「亜美はどうする?」
「勿論、一本貰うわ。ね、亜美?」

 レイに聞かれ、どうするか迷っている亜美の気持ちを汲み取りさり気なく彩都がアシストする。

「うさぎ達は二本かしら?」
「うん。家とまもちゃんとこに飾るんだぁ~。ね、まもちゃん」
「ああ。レイちゃん、毎年ありがとう」
「いえ、気にしないでください。いっぱい生い茂っているので。こうして使ってもらえると笹の木達も喜びます」

 今日来てからずっと感じていたが、クールなレイが饒舌に喋って楽しそうだと和永は微笑ましく見ていた。

「また来年もこうしてみんなで集まれたら、最高だよね」

 締めの言葉としてうさぎがニッコリと微笑んで発言した。

「七夕だけしか集まらないとか、織姫と彦星じゃないんだから!」
「そうよ。勘弁して!」
「もっと定期的に何もなくても会うわよ!」
「そっか。来年は卒業だものね」

 うさぎ達女性陣は、高校三年生。レイ以外は三年間一緒の学校だったが、高校を卒業すればそれぞれ本格的に夢に向かって進む。そのため、卒業すると中々会えなくなってしまうのだ。
 夢を叶えるために頑張る。それは素敵な事だ。だが、それで中々会えないのは寂しいとうさぎは会える頻度が少なくなることを懸念していた。

「大丈夫よ! それでもあたし達の絆は変わらないんだから」
「そだね」

 美奈子の言葉に亜美達はほほえみながら頷く。

「じゃあレイちゃん、七夕終わったら笹の木持って来んね」
「ええ、待ってるわ。テスト勉強、頑張りなさいよ。公斗さんに迷惑かけちゃダメよ!」
「むう! レイちゃんのイジワルー」

 雄叫びを上げながら、公斗に引かれ美奈子は帰っていった。

「じゃあな、レイ。騒がせたな」
「楽しかったから、気にしないで」

 まことが謝り、各々お礼をして美奈子達に続けてみんな帰っていった。
 和永は不思議な気持ちで、その後ろ姿を消えるまで見守っていた。

「急に静かになったな。そうだ、美奈ちゃんが言ってたけど何で七夕終わったらまた笹の木、ここに持ってくるんだ?」
「使用後の笹の木を私がまとめて燃やすから」
「ああ、なるほど」

 大変だなと思いながらも和永は流石レイだと感心していた。
 時計を見るともう夕方になっていた。空を見上げると止んだ雨はすっかり晴れていて、茜色の夕暮れがきれいだった。
 カラス達は数羽、カァカァと嬉しそうに飛んでいた。その中の二羽はフォボスとディモスがいるのだろうが、和永にはまだレイのように見分けがつかないでいた。
愛しい彼女のイメージカラーと同じ夕日の色にホットしながら和永は神社の仕事に向き合った。

 そして、七夕の日本番。雨が降ったか、降らなかったかは神のみぞ知る。




おわり

20230707 七夕の日




      ***あとがき***

 ご拝読頂きありがとうございましたm(_ _)m
 中途半端なところで終わりましたが、書きたいことは書けたので満足しています😉
 月へみんなで行く話は七夕関係なく違う話で書こうかと思っています。
 月へ行くだけではなく、四四でそれぞれの守護星に行く話も別で書けたらなと思います😊

 今までまもうさ四四で共通の話をそれぞれオムニバスとか、一つの話だけど全員が揃っておらずそれぞれCPでとか、四四合同でと言うのは結構ありましたが、一つの場所に全員集合は初めて書いたので色々人が多くて大変でした。
 でも今後もこういう話は書いていきたいと思っています。

 ではでは、この辺で😁 管理人 碧央

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