コスメの魔法
まもうさ
学校帰り、うさがいつも通り俺の家へとやって来た。高校生と大学生、学校が終わる時間が変わってしまい、一緒に帰るという事が減っていた。
そこに来て俺は謎の体調不良で辛い状況にある。余り無理は出来ない。
そんな事など何も知らないうさは、ウキウキと楽しそうに俺に会いに来てくれる。
そんなある日の事だった。うさに変化が表れたのは。
「うさ、その顔はどうした?」
「ん?ああ、気づいてくれた?」
気付くなと言う方が難しい。寧ろ、俺はうさの事は何だって知っているし、どんな些細な変化にも絶対に気づけると断言してもいいだろう。
そんな俺が見逃さなかった事。それは、うさが化粧をしていると言う事だ。
「気付くさ、うさの事はどんな事でも」
「エヘヘ、嬉しい」
「でも、何でメイクなんてしてるんだ?」
「高校デビューって奴かな」
高校生。それは、思春期真っ只中で色気づきたくなるお年頃。まさかうさもそうだとは思わず、俺は絶句した。
「取れよ」
「え?何でよ?」
喜んでくれると思い、メイクをして来たのだろう。だが、俺は違う。
「高校デビューってのは、異性にモテたくてするものだろ?うさには俺がいるんだ。必要無いだろう」
そう、俺は嫉妬していた。綺麗にメイクをして共学に通い、異性の目に映る恋人を想像しただけで狂いそうになる。
「だけど……セーラームーンの時はいつもメイクしてるけど、何も言わないじゃん!」
「そう言うものだと思っているから仕方なく受け入れているだけだ」
「まもちゃんに綺麗だなって言って欲しかっただけなのに……」
恋人である俺の、想像していたのと違う反応が返ってきて混乱して、ショックを受けるうさ。見る見る涙目になっていく。
メイクを取って欲しいから、涙が流れて自然と取れていくならそれでいいと思った。
「勿論、綺麗だ。だけど、学校にはしていかないでくれ。俺の前でだけにして欲しい」
「まもちゃん……」
フォローではないが、思っている事を伝えると、結局潤んだ目からは涙が零れ落ちた。
「覚えておいて欲しい。素顔のうさも、俺は大好きだ。どんなうさだって俺は嫌いにならないし、欠点引っ括めて愛してる」
「まもちゃん!」
己の器の小ささを隠す様に、うさを深く愛して行った。
おわり