コスメの魔法
♡クン美奈♡
美奈子はこの日、とても上機嫌で朝を迎えていた。
と言うのは昨日、バイトで入った給料でメイクを色々と買い揃えていて、メイクをして公斗に会いに行こうと決めていた。
一応約束はしていたが、メイクして行くとは言わずに驚かそうと言う魂胆だった。
普段はスッピンで会っているため、綺麗になった自分を見て喜んでもらおうと張り切っていた。
ウキウキ気分で会いに行く美奈子だが、すぐに気づいてもらえる自信があったのに中々気づいて貰えずイライラし始める。
気づいているのか、いないのか表情では読み取れないポーカーフェイスの公斗に痺れを切らした美奈子は思い切って聞いてみる事にした。
「ちょっと!どこか変わったとこない?あるでしょ?言う事は?」
「別に?」
「沢尻エリカか!面白くないわ!私の顔、よく見なさいよ!」
「お前はメイクしていても、していなくともいつでも美しく輝いているが?」
「なっ/////気づいてるんじゃないのよ!気づいてたなら言いなさいよ!」
「何故いちいち言わなければならんのだ?」
「言ってもらった方が嬉しいから!」
「何でだ!?」
「何でもよ!鈍感男!」
実はすぐに変化に気付いていた公斗だったが、言う程でもないと感じていた。
すっぴんの彼女も愛と美の女神の名に相応しくとても美しいと普段から感じていた。
勿論、メイクしている顔も一際美しい。
「これからもして来ようと思うんだけど、どう?」
「好きにすればいい。でも俺はすっぴんのお前も悪くないと思ってる」
「そう、あんたってそんなに私の事が好きなんだ?」
「悪いか?」
「うふふっ」
美しいと最高の褒め言葉を言われ、嬉しくなりテンションが上がった美奈子は公斗の頬っぺにキスをした。
リップを塗っていたから思いっきり頬に美奈子の唇型の後が付いてしまった。
「いっけなーい!口紅してたの忘れてたわ!」
そそっかしいのは相変わらずで、化粧をしても大人には程遠いと思う公斗だった。
🌊ゾイ亜美
無事志望大学に見事合格した亜美と久しぶりのデート。
合格祝いに勉強関係以外で何か欲しいものは?と聞くと特に無いと断られた彩都だが、せっかく大学に通うんだからオシャレに興味を持って欲しいとコスメストアに連れて来ていた。
「コスメ…ですか?」
「そうよ、興味ある無いに関わらず大学デビューに少しは女の子としての楽しさを知りなさい!見立てて買ってあげるから」
言われるがままにコスメショップに入って行く。
今まで勉強一筋で身なりの事を気にすること無く生きてきた亜美は、コスメショップの中の煌びやかな雰囲気に圧倒され、まるで別世界に来てしまったように錯覚する。
そして種類の多さに驚き、戸惑う。
この中から選ぶ事ができるだろうかと。
「いらっしゃいませー」
戸惑う亜美を他所にこなれた様にテキパキと選んで行く彩都。
その様子をただただ圧倒されて見ているしかない亜美、そして本業であるはずの美容部員の2人。
アドバイスをしようと声をかけるタイミングを完全に逃してしまい、こ慣れた彩都を見ているしか無かった。
そして男性なのにどうしてこんなに詳しいのか?と驚くと同時に、私の必要性はあるだろうか?と存在意義に疑問を呈した。
そんな美容部員を他所に、独断と偏見で亜美に合ったコスメと道具一式をチョイスし、慣れたように会計を済ませる。
「はい、これ。メイクの仕方はまたの機会に教えてあげるわ」
「あ、ありがとうございます」
「良いのよ!大学合格祝いですもの。これでカレッジライフ、楽しみなさいな♪と言っても勉強、益々大変になると思うけど、息抜きになればと思う」
「はい、頑張ります♪立派な医者に慣れるよう頑張ります」
数日後、亜美は見立ててもらったメイクをして無事大学デビューを果たしたのだった。