PRIDE


「美奈子!」
「は、はい!」

突然、彼氏から名前を呼ばれ、驚いて返事をする。今度は、何?

「頑張って勉強したら、この後豪華なディナー奢ってやるから頑張れ」
「マジ?」
「ああ、大マジだ」
「やったぁ~♪美奈子、頑張る!」

公斗からの飴と鞭、キタ━━(゚∀゚)━━!!!!
これがあるから、嫌いになれないのよねぇ。胃袋を掴まれてる感じがするけど、いっか?

「あんたは単純で良いわねぇ~。扱いやすくて」

彩都っちの小言にはカチンと来るけど、今日は多めに見てやらんでもないわよ。

「所でリーダー、その豪華ディナーは私たちもう御一緒しても?」
「ああ、お前たちのお陰だからな。寧ろ、奢らせてくれ」

何それ?彩都っちにも甘くない?単純に納得出来ない!
二人きりのディナーだとは私だって思って無かったけど、結局は私のご褒美と言うよりは彩都っちへの協力の感謝がメインの様に聞こえるのは何故?
彩都っちに顔も財布も緩くない?
今日一の極上の笑顔を見せた公斗に不満を募らせる。こんな顔、私にも見せてくれたことないし、見た事ない!
まもちゃんの前でも見せてなかったわよ。
……気に入らないわ!まもちゃんも、彩都っちも。

「私まで、いいんですか?」
「いいのよ、亜美ちゃん!何なら、じゃんじゃん奢らせてやりましょう」
「あんた、それでも彼女?少しは遠慮と言う言葉を知りなさい!」
「そっくりそのままそのセリフ、あんたに返すわ!」
「それをまた、熨斗つけて返してあげるわよ」
「じゃあそれをそのままゴミ箱に捨ててやるわよ!」
「二人とも止めないか!大人気ない……」

誰のせいで言い争う事になったと思ってるのよ!それに、私はまだ子供だからね!
納得が出来ないまま、それでもご褒美豪華ディナーの為にものすごい集中力でノルマをこなして行った。それはもう、機械のように。

「出来たぁ~~~♪」

時刻は夕方の6時になろうとしていた頃、漸く一段落した私は、小声で喜びを爆発させて終わった事を喜んだ。

「お疲れ様、美奈。良く頑張ったわね!」
「ご褒美豪華ディナーの為に頑張ったんだもん」
「仕方ない。イタリアンでも連れて行ってやるか」
「待ちなさいよ!まだもう一つ残ってるでしょ?」
「もう一つって……?」

私も亜美ちゃんも公斗も、まるで分からないと彩都っちの宣告にキョトン顔。何が残ってたっけ?

「はぁー、呆れた。ここはどこ?」
「私は誰?」
「誰がボケろっつった?」
「図書館だな」
「そう、図書館よ!」
「で?」
「おバカ美奈子!読書感想文の課題図書探しなさい!何のために国会図書館連れて来てあげたと思ってるのよ!」
「なっバカって……」
「本当のことでしょ?何か文句ある?サッサと探しなさい!」

そう、ここはただの図書館では無くて、国会図書館。どんな本でも置いてある、らしい。
知っての通り私は図書館てやつに興味なくて、そこら辺の事には疎い。だから、噂程度の知識。
でも、見渡すとデカい図書館なだけあって、かなり豊富。亜美ちゃんやまもちゃんが好きそう。

「これにするわ」

適当に最初に見つかった本を選んで借りた。後は読んで適当に感想書くだけね。
まぁ、それが一番難しいんだけど。

「じゃあ、ディナーだな」
「慣れない勉強したからお腹ぺこぺこ~」
「これは、いっぱい食べるフラグね」
「太っても知らないわよ」
「本当にいちいち嫌味ね」
「本当の事じゃない」

車に乗ってそんな会話を永遠と繰り返していた。運転は勿論、公斗が黙々と安全運転で向かっていた。

「着いたぞ」
「わぁーい、イッタリッアン♪」
「本当に単純でいいわね」
「彩都さん!」

ついに亜美ちゃんに怒られた彩都っち。いい気味である。
店に入ると、爽やかなイケメンウェイターに迎えられてテンションぶち上げになった。

「予約をしていた西塔です」
「西塔様、お待ちしておりました。お席にご案内致します」

え?予約?してたの?いつの間に?と、イケメンウェイターとのやり取りを見ながら疑問に思った。
図書館での事を回想してみた。そう言えば結構早い段階で席を立ってどこかに行ってしばらく帰ってこなかったことがあった。
もしかしてあの時、ディナーが空いてる所に片っ端から連絡入れてくれてたの?
最初からそのつもりで?うっわぁ~策士!
ってかどこのキザ男よ。

「好きな物、頼んでいいぞ」
「じゃあ遠慮なく~」
「だからアンタは遠慮しなさい」
「ご馳走になります」

公斗の言う通り私は遠慮なく色々注文してやった。
いっぱい食べていっぱい飲んで、楽しいひと時を過ごした私は満足して帰って行った。正に終わりよければすべてよしってヤツ?

ただ、もう一人の協力者である同居人の白猫には八つ当たりした事は内緒ね?




おわり

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