PRIDE


「PRIDE」

私は今、図書館に来ている。
本屋じゃなくて何故図書館?
私自身が一番驚いてる。
事の発端は、亜美ちゃんの一言。

「彩都さんと二人きりはまだちょっと恥ずかしいから美奈と公斗さんも一緒に何処か行かない?」

詳しく聞くと、夏休みだからデートをしたいと彩都っちが申し出て来たらしい。でも、デートはハードルが高いから誰かとWデートなら出来そう。
そこで白髪の矢が立ったのが私と公斗と言う事らしい。美奈ならこう言うのが得意だろうし、彩都っちと公斗は仲良いから最適なんだとか。

「それならこの愛の女神、美奈子にまっかせっなさぁ~い♪」

頼られている事が嬉しくて、二つ返事でOKしてた。亜美ちゃんからの頼み事なんて珍しいし、何より恋愛関係で頼られてるのが本当に嬉しかった。
なのに、蓋を開けたら全く違ってるとか!
私の喜びを返して欲しい……。
図書館で勉強デートだなんて、聞いてないよ~号泣

最初は良かったのよ?車に乗って、本当に何処かに出かけるんだって雰囲気だったから。疑うこと無くウキウキ気分で車の中にいたから、これからの事でテンション上がってた。
だから、まさか図書館に向かってるだなんて考えもしなかった。
公斗の運転で目的地に着いてその先を見て絶句した。

「え?図書館じゃん……」
「ああ、そうだ」
「何か借りるの?」
「いいえ、これからお勉強するのよ?」
「はあ?」
「私達総出で教えてあげるって言ってるんだから、感謝なさい!」

戸惑う私に対して、三人がそう説明すると逃げないようにと左に公斗、右に亜美ちゃんが来てそれぞれ手を組んでガッツリガード。彩都っちはその後ろを楽しそうに写メなんか取りながら着いてくる。私を従えて図書館へと入って行った。

「何で?デートは?」
「ごめんなさい、美奈。あれは嘘だったの」
「何それ、酷い!頼られて嬉しかったのに……」
「それに関しては俺が頼んだ事だ。攻めるなら、俺だけにしろ」

亜美ちゃんにこの話を持ち出したのは何と公斗だった。それを知った私は、思いっきり公斗を睨み付けて抵抗した。
バツは悪そうだったけど、私の気持ちを考えたらそれくらいで済ませてあげたんだから感謝して欲しいくらいよ。

「どうしてこんな事したの?」
「一学期の成績最悪だっただろ?夏休みの宿題だってどうせまだ手付かずだろ?お前の為を思って秘密裏に動いていた」
「私も美奈の成績と夏休みが心配だったから、公斗さんに相談したら利害が一致したの」
「どうするかはこの参謀長の私が作戦を練ったって訳よ。どう、完璧だったでしょ?」
「……」

言葉が出てこないとは正にこの事。用意周到に、しかも私の性格も熟知された作戦。気付かなくて当然だった。
しかし、ここで一つ疑問が沸いた私は、渋々椅子に腰掛けながら質問した。

「勉強するなんて聞いてないから、勉強道具なんて当然持ってきてないけど?」
「それならここにある」

公斗が見せてきたのは、黄色い私のバッグ。そこからドカドカと出したのは夏休みの宿題の数々。何でここにあるの?

「私のバッグじゃない!どうしたのよ?」
「白猫に拝借した」
「白猫ってアルテミスの事?」
「それ以外、誰がいる?」

いませんね。いないから余計腹が立つのよ!アルテミスまでグルだったなんて、本当に聞いてない。
アルテミスの裏切りに、私は苦虫を噛んだ。人間になったり、猫になったり出来る便利な体をこんな事に使うなんて……。
帰ったら絶対、文句言ってやるんだから!

「強いては美奈、あなたの為よ」
「そうだ。こうでもしないとしないだろ?」
「私達三人は頭がいいから、任せなさい!」

圧倒的な天才三銃士のオーラに当てられ、私は渋々宿題に手を出す事にした。図書館と言う静かな環境のお陰で、嫌々ながらも雰囲気に押されて集中して出来た。
これが家なら即脱落して出来なかったと思う。
それでも嫌な事には変わりない。何とか抵抗しようと筆箱をチラ見する。その視線の先には、セーラーV時代の変身ペンがある。ソイツにターゲットを絞り、手を伸ばしたその時だった。

「美奈、ダメよ?」
「え?どーして?」

亜美ちゃんにまさかの妨害に合い、心臓がドキリッと高鳴る。何故か?
この変身ペン、実は不思議な力が宿っていて、使うとテストの点数が良くなったり、問題がスラスラ解ける。魔法のペンになっている。
でも、その事は誰にも言っていないから亜美ちゃんだって知らないはずで。……アルテミスがバラしていたなら別だけど。

「そのペンがどう言ったものか、知っているのよ?」
「なんの事?ただの変身ペンよ?」

あくまで知らないフリしてシラを切りとおそう大作戦を決行することにした。

「この変身ペンもそうだから」
「だから、なんの事?」

亜美ちゃんが取り出したのは、初期の変身ペン。まさか、まさかなの?

「このペンを使うと勉強が捗るの。美奈のそのペンもそういう効果がある事くらいは想像出来るわ。でないとわざわざペンを変えようなんて思わないでしょ?」

どこぞの名探偵よろしく私の事を推理して、見事に当てるあたり流石だと思った。全くもってその通り過ぎて、ぐうの音も出ない。
笑っていない亜美ちゃんのメガネの奥の目が怖い。

「……仰る通りです」
「はぁー、やっぱりね。今日一日は没収させて頂きます」
「そ、そんなぁ~」
「当たり前です!こんなもの使って頑張っても意味無いわ」

亜美ちゃんは、深い溜息をつきながら変身ペンを取り上げると最終宣告を通達して来た。無慈悲だ。神様なんていない。そう感じた。

「そんなペンを隠し持ってたなんてねぇ~。ま、当然の結果よね」
「全く、お前は油断も隙もないヤツだな」

反則だと思っていたから最近は使わないで封印してたんじゃない!と言いたい所だけど、言い訳でしかないから流石に言わないけど。

「俺たちが総出で教えてやるんだ。いらんだろ」
「はいはい、よろしくお願いしまぁ~す」

字面とは違って、棒読みで答える。良く考えなくても天才三銃士が揃いも揃ってるんだから、すんなりデートなんてそんな虫のいい話はそうそうあるわけないわよね。
私も、もうちょっと人を疑う事も知らないといけないかも。いや、うさぎより全然警戒してる方だけど。何せ私は四守護神のリーダーなんだから!
疑いながら生きてきてるはずなのに、友達や彼氏だからつい疑う事を忘れてた。

そして、思い出してしまった。前世での四天王裏切り劇場を。そう、コイツらは裏切る事に長けている。十八番と言っても過言じゃない!
分かってる。私の事を心配してくれての行動だって事。だからこそ複雑な気持ちになる。

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