潮騒のHarmony


「お姉さん達2人だけ?俺らと遊ばない?」

はい、言ってる側からナンパな男2人組が声をかけてきた。
上着を着て髪の毛束ねてたから私のことも女だと勘違いしてるわ。アホね。
まぁ、私ってばそこら辺の女より美人で色気あるから女性だと思っても仕方ないわね。目の付け所は褒めてあげても良いわ。
でも残念ながら私は男で既にカップルなの!お呼びじゃないからどっか行け!違う尻軽なギャルでも引っ掛けてこいっつーの。

「Halte den Mund,Verdammter Bastard(黙れクソ野郎と言う意味のドイツ語)」
「え?何?何語?日本人じゃないの?」

案の定、2人は混乱してしまっているようだった。そのまま諦めて去って行ってくれるとありがたい。

「Ich verstehe dieses Problem nicht(この問題が分からないわ)」

私に合わせて今度は亜美がドイツ語で話しかけてきてダメ押しをしてきた。流石亜美ね。ドイツ語も完璧。医者を目指しているだけあってちゃんとドイツ語も勉強してるのね。

「2人とも外国人かよ……」
「言葉通じないのはシンドいな……。ほか当たろうぜ」

亜美の咄嗟の名演技に怖気付いたナンパ男2人はいそいそと去っていった。

「あぁ~楽しかった♪」
「お前らも海入ってこいよ!」

ナンパ男たちが去っていったのとすれ違いで遊びが一段落した勇人とまことが何も知らず楽しそうに帰ってきた。

「遅いわよ!もうちょっと早く戻ってきて欲しかったわね」
「何怒ってんだよ?そんなに遊びたかったのかよ……」
「違うわよ!男2人組にナンパされてたのよ!何とか撒いたけどね」
「はあ?お前女と勘違いされたのか?ウケるな」

勇人がいたら男避けにはなりそうだけど、面倒臭いから極力一緒にいたくないのよね。何故かって、暑苦しいからね。

「荷物見ておくから海で遊んできなよ」
「そうだよ。……って参考書読んでんの?本当に亜美ちゃんって勉強熱心なんだなぁ~」
「そうなの。言ってやってよ!海は遊ぶところだって」
「まぁ本人のやりたい様にやらせてやったらいいんじゃね?」
「無責任ね……。他人事だと思って」
「他人事だしな」

ったくもう!私が言っても聞きゃあしないから、言ってもらいたかったのに役に立たない奴ねぇもう!

「亜美、お言葉に甘えて海に泳ぎに行きましょう」
「でも、まだ今日の分の英単語が……」
「英単語は逃げないわよ!」

半ば強引に参考書を取り上げて亜美の手を取り、海へと引っ張って行った。
水着姿が見れた事は満足しているけど、やっぱり夏の思い出は欲しい。
泳ぎが得意って聞いているからせっかくだから見たいし。
でも実は私、亜美とは違って泳ぎはあまり得意じゃない。カナヅチってほどでは無いけど、自信はない。
どうしようかと波打ち際で考えていると海水が飛んでくる。

「うわっ!」
「それ〜、うふふっ」

見ると亜美が海水をこちらに飛ばして楽しそうに笑ってる。
楽しそうで何よりなんだけど、そんな事する様なキャラだっけ?

「やったわねー!お返しよ、それ〜」
「きゃあっ」

浅瀬で海水の掛け合いをするバカップルと化してる。絶対!周りからはそう思われてるに違いない。
でもまぁ悪くないわね。これぞ青春よ!アオハルって奴よ!健全な学生カップルのあるべき姿よね。

「泳ぎましょ♪」

今度は亜美が私の手を取り、引っ張って泳ぎ始めた。
海の中では無敵なのか水を得た魚で生き生きしている。
もうこうなったら亜美に身を任せてなるようになれってやつだわ!

「気持ちいい~♪」

人を巻き込んでひと泳ぎしたら飛び切りの笑顔で楽しそう。
遊び出すとちゃんと笑顔で楽しそうに全力で遊べるのね。得意な水泳だからってのもあるんだろうけど。
亜美が楽しいなら私は満足よ。思い切って誘って良かったわ。この笑顔と水着姿、そして泳ぎが見れたんだからいい夏の幕開けよね!

「そろそろ戻る?」
「ええ」

一通り満喫した私たちは海からあがり、勇人達の所へと戻ることにした。

「漸く戻ってきたな!随分と青春して楽しそうだったじゃねぇか」
「何よ、見てたの?」
「彩都が溺れないように見守ってたんだよ」
「溺れないわよ!溺れたとしても亜美に助けて人工呼吸もして貰うから、アンタなんかお呼びじゃないのよ!」
「へいへい、おアツいッスね!」
「ふふふっ2人とも、仲良いですね!」
「「どこがだ!」」
「ははは、ハモってら~♪」

ったく、どこをどう見たら私と勇人が仲良く見えるってのよ!失礼しちゃうわねぇ。

「お昼食おうぜ!まことの手作り。お前、食った事ないだろ?」
「腕によりをかけて頑張って作ったんで遠慮なく食べてください」
「へぇ~わざわざ作ってくれたの?ありがとう、遠慮なく頂くわ」

料理の達人との噂のまことの手作り弁当がいただけるとは思っておらず、想定外の出来事に驚く。
見ればサンドイッチとか炊き込みご飯のおにぎりとか、りんごは兎にしてたり、可愛いお弁当でどれも美味しそうだった。
こんなのいつも食べてる勇人は何て幸せ者なのかしらと不覚にも羨ましく思った。

お弁当を食べ終わるとまた交互に海で遊んだり、砂で遊んだりして満喫した私達は帰ることにした。
亜美とまことのペアにも関わらず、雷雨になどならないばかりか終始海日和の快晴のまま遊ぶことが出来て楽しい1日だった。




おわり

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