潮騒のHarmony
「潮騒のHarmony」
せっかくの夏休みだから亜美と海に行きたい。
そう思って夜に本人に電話して言ってみると「勉強があるから……」とお馴染みの台詞が返って来て、やっぱりと言う感じだった。
でも今日の私はここで食い下がる気は無い!
春休みや冬休みじゃないから40日と休みは長い。
1日くらい私にくれてもバチは当たらないと思う。
「分かったわ。まことと勇人も誘いましょ!」
2人で海は流石にハードルが高いかもしれないと思い、まこととついでに勇人も誘う事を提案してみる。
「でも2人も忙しいと思いますし……」
こっちも中々折れない。
主に勇人のスケジュールを気にしているのだと思う。
なぁに、アイツにはまことの水着姿で釣ってやるから問題ない。
オープンスケベのアイツのことだから二つ返事でOKするわよ。目に浮かぶわ。
「そこんとこは私が上手く言うから大丈夫!参考書も持っていっていいからみんなで海行きましょうよ!ひと夏の思い出、楽しいわよ~♪」
「2人がOKなら大丈夫です」
「決まりね!じゃあちょっと勇人に電話するから切るわね!勉強頑張って!」
亜美との電話を終えるとそのままの勢いで勇人に電話する。
「もしもし?何だよ、彩都……」
まことじゃないと分かると途端に機嫌が悪くなり、嫌そうな声で電話に出て答える。
嫌なのはこっちも同じなんだから余計気分が悪いわ。
「一緒に海行かない?」
「はあ?お前と2人でか?嫌だね!」
「バッカじゃないの!私と亜美とアンタとまことの4人よ!誰がアンタと2人で行きたがるってのよ?」
「な、誰がバカだよ?ってか何で海?めんどくせぇ……」
「ふぅーん、まことの水着姿、見たくないの?」
「まことの水着姿?見てぇ!」
「でしょ?行くわね?」
「行く行く!まことの水着姿見るまでは死ねねぇ」
「決まりね!亜美の塾がない日に行くわよ!まことにも言っといてね」
「了解!」
そう言って電話を切った私は、案の定まことの水着姿に釣られて二つ返事で行くと言った勇人にちょろ過ぎと大爆笑でガッツポーズした。
勇人のOKが貰えたと亜美に連絡を入れ、言い出しっぺの私が間に入ってスケジュール調整をした。
2人とも案外とバイトを入れて忙しそうだったけど(因みに私もバイトして忙しい)何とか1日合わせられた。
「アンタ当日は運転しなさいよね!」
「何で俺なんだよ?お前が言い出しっぺなんだからお前の役目だろ?」
「車運転してまことにいいところ見せてもっと惚れてもらいたいでしょ?肩を持たせてあげるって言ってんのよ?それにまことの水着姿が見られるのは私のお陰なんだから感謝してよね!」
「まことの水着姿が見られる上に惚れてもらえる……おお!良いな♪運転了解!」
「よろしく~」
ふふっ本っ当にチョロいわね、勇人。
スケジュール調整以外はトントン拍子よ。
最終の連絡を電話して勇人に運転を頼んだ私はホッと一安心した。後は当日を待つばかり。
☆☆☆☆☆
いよいよ海に行く当日の朝、申し分ない快晴!
雲ひとつ無い快晴で暑すぎて逆に少し曇ってくれててもいいとさえ思った。主に紫外線の問題で。
勇人に運転を任せたから車内は楽なもんだった。
勇人の方もまことにもっと惚れて欲しい一心で喜んで運転していた。まさにWIN WIN!
ただ、やっぱり参考書を持参した亜美は車内でも熱心に勉強をしていて普通のカップルらしい会話が成り立たない。
「参考書なんて読んで酔わないの?」
「事前に酔い止めの薬飲んでるし、慣れてるので平気です」
「……そっ」
と言った感じでムードも何も無く目的地に到着する。
まことは亜美が参考書を読んでいることに何の疑問も引くことも無く、終始受け入れている様子だった。日常茶飯事的にずっと勉強してるのね?呆れた。
いよいよ水着姿に着替える。
亜美もまこともビキニだった。
それはもう亜美のスレンダーで華奢な体のラインが強調されて可愛いわ。満足よ!ありがとう、ビキニ!ありがとう、海!
まことは正直どうでもいいけど、勇人の彼女に相応しく、引き締まって筋肉質で、お腹は腹筋が割れていて、体の隅々まで鍛えられていた。勇人も見たかないけど筋肉隆々。ーーこれがお似合いのカップルって奴。何か癪に障るわね!
まぁその代わり、体を鍛えることしか脳がないから2人とも脳みそは凝り固まって残念脳なんだけど。
それを証拠に場所をとるや否や「海だ~♪」と2人して絶叫しながら私と亜美を置き去りにして海に突撃してったわよ!誰のお陰で来れてると思ってるのよ。単純でいいわねぇ……。
「彩都さんは行かなくてもいいんですか?」
呆れた。あの2人は亜美を連れて来る為のただの口実だし、正直どうでもいい。
海に行くってのも亜美の水着姿が見たかったから。泳いでる姿が見たかったから。それ以上でも以下でもない。
「私は亜美と一緒にいたいの!」
勿論、これも嘘偽りない本音。
水着姿で参考書読んで隙だらけの彼女1人を置いて行けるわけないでしょ?
絶対ナンパ目的の飢えた男たちに次から次へと声かけられるわよ。
自分じゃ気づいてないけど、可愛いし色気あるから放っておけない。