Summer Festival


麻布十番祭りへと無事到着した俺たちはまずどんな露店が出ているのか、一通り見て回ることにした。
と言っても目新しいものは特に無く、普通にたこ焼きだの焼きそばだのフランクフルトだの金魚すくいだの射的だのとベタな物ばかりだった。
それでも美奈子は楽しそうにはしゃいでいる。何が楽しいのか?
そしていつの間にやら美奈子は俺から離れ、レイさんとペアになり、俺は自ずと和永と組まされると言う何とも地獄絵図を味わう羽目になる構図になっていた。

「何だよ?俺だって不服だよ!」

チラッと嫌な顔をしながら和永を見ると心を読み取ったのか俺より先に口を開き不満を言ってきた。

「まぁこーなるだろうとは予想してたけど、キツイよなぁ?」
「ああ、なんたってお前と行動を共にしないといけないんだ」

一体どんな罰ゲームなんだと目の前ではしゃぐ美奈子と普通のテンションを保っているレイさんを見守りながら思っていた。

「公斗、たこ焼き食べたい!」

当たり前のようにお金を出して美奈子にたこ焼きを渡した。

「はい、アーン♪」
「うわ、アッツ!自分で食える……」

和永達が見てる前で何て周知を晒させるんだ。
腕組みも中々にハードル高かったのに、アーンとは……。四天王リーダーの威厳が無くなる。

「遠慮しなくていいから!レイちゃん達もやってるし恥ずかしがらなくてもいいのよ♪それに仕事終わりで空腹でしょ?」

完全に楽しんでやがる。
和永達を見ると美奈子の言った通り食べさせ合っている。和永は兎も角、レイさんのキャラと違う。美奈子と和永と一緒にいすぎてキャラ崩壊してしまったのだろうか?……何かすまん。
羞恥はあるもののせっかくなので美奈子のアーンを受け入れる事にした。

「ん、熱いが美味いな」
「でっしょ~♪たこ焼きって美味しいのよ!」
「何故お前が作ってもないのに威張るんだ」
「良いじゃない!せっかくの夏祭り、楽しまなきゃ損でしょ?」
「それもそうだが……」

何か丸め込まれている感があるが、流石は年内脳内パリピなだけあってこういったイベント事を最大限楽しんでいるようだ。
イベントを楽しむ天才と言ったところか。
この位勉強も頑張ってくれたらと思ってしまう。

「次はお好み焼きよぉ~♪」
「フランクフルトもトウモロコシも食べなきゃ」

次から次へと食欲を優先して食べ歩く。
何とも逞しいが、その度に俺が奢っている。
上手い具合に使われてる気がしてならない。
まぁ俺も半分食べているから良いのだが。
財布は俺だが決定権は俺にはない。それだけが不満だった。

「すっかり美奈子のペースに飲まれてんな、リーダー♪」
「放っておけ!それにお前が美奈子呼びするな!許さん」
「はいはい、嫉妬で心狭い男は嫌だねぇ」

俺が美奈子にペースを崩されている様を楽しそうに言ってくる和永にイライラして彼女が呼び捨てにされていることが気に食わず、つい突っかかってしまった。俺らしくなく、自己嫌悪に陥る。
和永ごときにイライラするなんて俺も修行が足らん。

「公斗、今度は射的よ!」

一通り食べて満足したのか、今度は射的をやりたいと言ってきた。
恐らくまた目的の物を当てられるか対決したいのだろう。

「出来るのか?」
「この美奈子様の右に出る者はいないわ!」
「浴衣姿で本領発揮出来ないんじゃ無いか?」
「公斗こそ、甚平のせいにしないでよね!」

売り言葉に買い言葉でやはり対決するに至る。いつもこんな感じで何かと競いたがるのはどうにかならないだろうか?
女ならば取れないから取ってぇ~と男に花を持たす気は無いのだろうか?

「うわぁ、色気ねぇカップルだなぁ」
「そっちはどうなんだよ?」

射的対決で白熱バトルを繰り広げていると後ろから引いている和永の声が聞こえてきた。
結局、2人ともきっちり弾の分回収するに至り、勝敗はドローとなった。
その横で出店の親父は儲からないと嘆いていた。俺と美奈子がすまん。

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