アフタヌーンティーでお祝い
「前世で私達、よくこうしてお茶会していたのよね」
「そうそう、プリンセスがそういうの大好きで、ジュピターがいつも腕によりをかけてプリンセスとクイーンの為に色々作ってたわね」
「へぇー、前世でもアフタヌーンティーやってたのね」
「前世でもうさぎちゃんは、そういうの好きそうなタイプだもんなぁ」
「そうね、想像出来るわ」
前世でもレイ達はアフタヌーンティーを催していた。
その事に、アフタヌーンティーを楽しんでいて急に思い出したらしく、饒舌に昔の話を語って聞かせてくれた。
「てか、クイーンも参加してたのか?」
「あら、クイーンが一番楽しみにしてたわよ?」
「え、そうなの?意外ね……」
「紅茶には拘りを持っていたわね」
「どんな人かは知らないけど、楽しそうな人ね」
「普段は厳格で聡明な人だったけれど、とっても素敵な方よ。パーティーなんかを催したりして、他の星の人達との親交を深める事に力を注いでいたの。アフタヌーンティーもそんな感じでやっていた事もあるわ」
「プリンセスが率先してサボってると思ってたけど、そうでも無かったのか……」
「彩都さん!」
クイーンは社交的で、友好的でとても理解のある人だった。プリンセスがアフタヌーンティーが好きだったのは勿論だが、クイーンが望んだ催しでもあった。
プリンセスとは違い、四六時中張り詰めていたクイーンは、ホッと出来る時間が欲しかった。
「まぁでも、アフタヌーンティーってのは元々貴族が好んでしていたものだしな」
「そうね。私達ゴールデンキングダムではそういうのは余りしていなかったけど」
「ま、男ばっかだったしな。ベリルはやりたがってたけど」
「意外ね。そんな風には見えないけど」
「いや、ああ見えて結構乙女だったぜ」
「こっちはクンツァイトが嫌がったのよね。前世でも甘いの苦手だったから」
「強い酒ばっかり飲んでたよな」
「そういえば、ネフライトはやりたがってわね。確か、ジュピターがくれたチェリーパイが美味しかったのと、アフタヌーンティーの話を聞いて、楽しそうだと力説してたっけ」
四人で前世の話をしている内に、アフタヌーンティーにまつわる事を彩都も和永も思い出して来た。
懐かしい記憶に、二人も思いを馳せる。
「だったら、俺たちだけでも前世もやればよかったな」
「マスターと四天王、プリンセスと内部戦士で?」
「有り得ないわ」
「楽しそうだけど、許されるはずないわね」
和永の飛んでもない提案に、暗雲がかかる。
「そうよねぇ。いくらマスターとプリンセスが恋仲でも、私達まで応援してそれを仕切るのは……ねぇ?なんて事を提案するのよ、バカ和永!」
「そうだけどさ、そういう一時もあっても良かっのになと言う願望だよ」
「そんな事、思いつきもしなかったわよ」
「そうね、そんな発想になる心の余裕すらなかったわ」
月と地球がそれぞれ一つの国だったあの頃、“月と地球は交わってはいけない”と言う絶対的な神の掟が存在した。
会う事すら許されていない世界で、出会い恋に落ちてしまったエンディミオンとセレニティ。
四天王と四守護神は、それぞれの主には幸せになって欲しいとの想いはあるものの、禁忌を犯したその恋を表立って応援する事は出来ないでいた。それなのに、互いの主の護衛で出会った者に、いつしか恋心を抱いてしまうと言う大罪を犯していた。
それ故、それぞれが堂々とする事が出来なかった。
「じゃあ、やっぱりこれは10人でアフタヌーンティーをするしか無いな!」
前世で出来なかったのならば、今すればいいのだと和永はナイスアイデア!と言わんばかりに提案する。
「そうね、それなら可能だしまこも美奈もうさぎも喜ぶわ」
「いいわね!和永にしたら、まともな提案じゃない」
「素直じゃねぇなぁ、彩都は。素直に喜べよ」
「ふふふっ楽しみね」
こうして和永の提案通り、皆でアフタヌーンティーをしようと言う事になった。
「でも、大人数でこう言うところは無理よね?やっぱり誰かの家かしら?」
「確かに。衛かまこっちゃんの家か、公斗の家か……」
「レイの家はダメなの?広いでしょ?」
「うちは神社なので、雰囲気出ないと思います」
「ああ」
何故和永がレイの家を候補に挙げなかったのか。レイの返答で彩都は一気に理解した。和風の家で、アフタヌーンティーなんて聞いたことが無い。
「それにしても、ストロベリーフェアーだからイチゴ多めで華やかよね」
「ああ、所謂インスタ映えって奴のものばかりだな」
「私は嫌いじゃないわ」
「イチゴはレイの色だもんなぁ。俺もイチゴは大好きだ」
「ラブラブで何よりね」
レイと和永を見て、彩都は二人が上手く行っていることを悟る。
ここで衛とうさぎなら“アーン”とかやり合うのだろうけれど、レイがクールなタイプのため人前では何もない。
「いちご大福まであるわよ」
「何でもありだよなぁ~」
亜美もレイも、とても幸せそうな顔でアフタヌーンティーを楽しんでいる様子を見て、和永も彩都も合格祝に連れて来て良かったと心から思った。
「今日は、ありがとう」
「どう致しまして」
「二人の笑顔で俺等も幸せ貰ったし、プライスレスさ」
「でも、ここは私と和永が払うんだけどね」
「ヴッ、現実……」
「これからのキャンパスライフ、楽しみなさいな!ま、将来の夢のための勉強だから楽しんでもられないかもしれないけど」
「そうそう、これから楽しみな事いっぱいだしな!」
アフタヌーンティーでのお祝いを終えた。
女性客が多く、早く終わればと思ったりもした和永と彩都だったが、前世の話や今後の事を語り合ういい機会になった。
おわり
20230312 スイーツの日