この頃はまだ知らない



クン美奈編



小学校に入学した美奈子は、これからの学校生活に期待を寄せ、心が踊っていた。

“友達百人出来るかな”

そんな事を考えてワクワクした。

入学の翌日からは地域別に一斉登校が始まる。どのグループの誰と一緒に登校するのかソワソワしながら集合場所に向かう。

「行くぞ」

成長して背丈が高い、銀の髪の毛を伸ばした男の子がぶっきらぼうに呼びかけた。

「お前もだ。そこの金髪」
「金髪って、あたしのこと?」
「他に誰がいる?」

キョロキョロと周りを見回しながら美奈子は返事をする。金髪。誰もいない。自分だけだ。そう思った美奈子は瞬時に返事をしてそのグループの中へと入る。

「おい、金髪!」
「なあに?」
「お前はここだ!」

適当に並んで歩いていると、又ぶっきらぼうにリーダーと思しき男の子に呼ばれた。

「ここって?」
「お前はオレの横だ」

じゃあそう言ってくれればいいのに言葉足らず過ぎて説明不足でまだ小学一年生の美奈子は中々理解ができないでいた。

「どうして?」
「そう決まっている。だまって俺について来い!」
「はあ?何それ、偉そう!」

言葉は横柄だが、グイッと美奈子の手を取り自分の横へと並ばせた。
“だまって俺について来い”と言われ、ちょっとドキッとした美奈子は、それを隠す様に隣の男の子に話しかける。

「それにあたしは金髪じゃないもん!ちゃんと美奈子って名前があるんだから!覚えておきなさいよ、白髪!」
「誰が白髪だ?」
「あんたよ!」
「オレにも公斗と言うれっきとした名がある。心に刻んでおけ!」
「心には刻めませんー」
「屁理屈な奴だな。黙れ」

初対面の二人だが、第一印象は互いに最悪だった。
ぶっきらぼうの公斗に、減らず口な美奈子。矛と盾。合うわけがなかった。
この後も二人が口喧嘩を繰り広げながら登校するのが名物となった。同じグループの人達には“またか”と呆れられ、知らない人達からすると面白かった。
公斗の同級生からすると、こんなに誰かと喋って楽しそうな顔をするのは初めて見たと驚かれた。
そんな名物は公斗が卒業するまで続いたと言う。

そして、この二人がその後会ったのはそれから五年後のことだった。こともあろうかプリンセスであるセーラームーンを攻撃して来たのだが、自身の主であるエンディミオンであるタキシード仮面がかばい、瀕死の状態にしたと言うショッキングな場面だった。




おわり

20240404 四四の日

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