この頃はまだ知らない
ネフまこ編
「お前、いっつもこの花壇にいるよな?」
勇人はいつも花壇にいる女の子が気になり、話しかけた。
花壇に来ては楽しそうに眺めている女の子に興味を注がれた。
教室から外を眺めると、いつもそこにはその子の姿があった。
新入生だろうか?ポニーテールを揺らしながら、笑顔を向けて楽しそうに花壇を見ている知らない女の子。単純に興味が湧いた。
「え?」
「好きなのか、花?」
「うん!」
「そうか」
「お兄ちゃんは?」
「おお、兄ちゃんも好きだぜ」
「可愛いもんな」
純粋に花を愛でるキラキラした笑顔に、勇人はたじろいだ。
「お前も可愛いぜ!」
「ぶっ、何言ってんの?変なヤツ〜」
「変って、ひでぇ〜。お兄ちゃん、傷ついた。責任取れ!」
「キャッ」
いきなり抱き着かれ、まことは驚いた。
「変態!何すんだ!」
ドカッ!!!
まことは咄嗟に足を蹴った。それは勇人の大事な所に見事クリティカルヒット。何も言えず悶絶した。
「ってぇ〜、けど、益々気に入ったぜ!俺の女になれ!俺は勇人だ。将来、嫁にしてやる」
「やっぱり変なヤツだ」
「ん、コレやる。アイリス。花言葉は“愛の約束”だ」
勇人は、花壇に咲いていた花のひとつアイリスを一輪拝借する。
「花に言葉があるのか?」
「ああ」
「すげぇ!」
「で、お前の名前と返事は?」
「私はまこと。お兄ちゃん、面白いからいいぜ!後、花、ありがとう。ま、学校の花だけどな」
「しー、それを言うなって」
「本当の事だし。バレたら怒られるな」
そこまで考えていなかった勇人。現実に戻され、先程蹴られた痛みと共に顔を怖がらせた。
「内緒で一つ、頼む!将来のオレの嫁」
「ぷっ、仕方ねーな」
まことはそう言って勇人からプレゼントされたアイリスを服の中に隠した。
その後、その花壇に咲いている花の花言葉をまことは勇人に教えて欲しいとせがんだ。
それからまことは勇人が卒業するその日までずっと花壇で愛を育んだ。
その後、二人が会ったのは五年後。恋をするまことを敵となり、騙した。
おわり