二人のために


ーー皆既月食当日ーー

美奈子の提案でみんなで見ようと言う事になった。
その方が各々で不安になりながら見るよりいいのでは?と言う事だった。
何かあった時すぐに行けるようにと衛のマンションの近くの公園で見ることになった。

「準備満タンよぉ~!いつでもかかって来なさい!」
「それを言うなら準備万端だろ?」
「あれだけ不安がっていた張本人が、本当に呑気ね、美奈は。その性格が羨ましいわ」
「そう言うレイだってずっと占って追い詰められてたろ?」
「結局は何も無かったのよね?私も色々調べたけど、怪しい影は無かったわ」
「残念そうに言うわね。何も無いわよ!考え過ぎ!」
「俺なんか久々にトレーニングしたり身体鍛えて備えたぜ」
「……結局私も付き合って頑張ってしまったよ」

美奈子の一声でみんなの緊張が解れ、それぞれ軽快に話が始まった。

「皆既月食、いよいよ始まったみたいよ?」
「じゃあまたアレやっとく?“アイドルになれますよーに!”」
「美奈、そこは“敵の侵入も無く、このまま平和が続きますように”でしょ?」
「レイが祈ってくれたから私は“このままみんなで幸せに暮らせますように”だな」
「何だよ、それ?」
「俺ら置いてきぼりなんだけど?」
「私も。リーダーは知ってたの?」
「いや、何も?美奈子の考えは理解出来ん!」
「ちょっとー、何威張ってキッパリ言い切ってんのよ?元ネタはね、皆既日食の日に流れ星なんかよりずっと珍しくて貴重だから願い事したら叶うかもって小学生の女の子のママがその子に言ってたのを聞いたからで、私のオリジナルのネタじゃないわよ?」
「信じてみんなで今みたいにやったってわけ?純粋で羨ましいわ。亜美は今回はいいの?」
「……考えてなかったから、今回はパスで大丈夫です」
「亜美ちゃんは謙虚だな~。どっかの誰かさんは自分のだけ願ってたけど」
「美奈はブレないわよね」
「で、みんな叶ったのか?」
「いや、それはみんなすぐに叶う夢じゃ無かったから、叶える為に頑張ってる最中なんだよ」

前回の日食を思い出した美奈子が願い事を言い出したのをきっかけに、和気あいあいと喋りながら皆既月食を見る事になった。

「日食とは違って隠れたりするわけじゃないんだ!月が赤くなってる」
「太陽の光ってのは赤や青など色の波長の異なる様々な光を含んでいて、地球の周りにある大気を通過する時、波長の短い青い光は散乱するが、波長の長い赤い光は散乱されにくい。それが大気中で屈折する事で地球の影の中に入りこみ、赤い光が月を照らすことから赤く見えるんだ。夕日と同じ原理だ」
「……美奈のせいで急に授業みたく固くなって変に肩凝った」
「本来星といえば俺の役目なんだけど、いいとこ持ってかれたな……」
「“星は何でも知っている”もんな?」
「幻想的ね」
「でもこれが終わったら……」
「もうすぐで終わるわよ?」

彩都のもうすぐ終わりそうだという言葉に一同は固唾をのみ、緊迫感が張り詰めた。
レイが何やら唱え始め、それを見た美奈子達3人も月を見上げながら祈り始めた。
そんな4人を見て、四天王も気を引きしめる。ーー衛とうさぎに何も無ければいいが……と。

そして皆既月食が終わりを迎え、運命の刻がやって来た。
月が本来の綺麗な銀色に光り始め、落ち着く光になる。

「前回は日食の最中だったわよね?」
「そうね」
「って事は?」
「何とか大丈夫だったみたいね?」
「ほら、取り越し苦労だったろ?」
「せっかく鍛えたのに、見せ場なしか……つまんねー」
「勇人、あんた不謹慎過ぎよ!彼女達の顔を見てもそれが言える?」
「必ずしも同じ様に侵略して来るとは限らん。引き続き暫く警戒はしておくように」
「せっかくホッとしたのに……不安になる事言わないでよ!空気読めないわけ?」
「でも美奈、公斗さんの言う通りよ?衛さんやうさぎちゃんの安否もまだ確認してないのに喜ぶべきじゃないわ」
「亜美まで公斗さんの肩持つのか……」
「前回は衛さんが徐々に呪われていってたから、手放しに喜べないのは事実よ」
「そこは俺らに任せてよ!」
「そ、衛の事は私たちに任せて、あんた達はうさぎを頼むわよ!」
「じゃ、そーゆー事で、今日は解散だな!」
「「「お前が締めるな!!!」」」
「「「「アハハハ」」」」

さて、衛とうさぎの運命やいかに?

END

2021.05.26

皆既月食&スーパーブラッドムーンの日

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