恋は三次元♡


side クン美奈


作戦は上手くいった。

セーラー戦士と思しき人物に接触し、乙女ゲームを渡した。
ゲームショーに来たのだからミーハーな彼女達だ。乙女ゲームに明け暮れるだろう。女だから戦うよりも恋愛に現を抜かし、癒されたいに決まっている。
この乙女ゲームは普通のゲームとは違う。やればやる程にエナジーを奪われる。
戦闘になる頃には戦う力すらなくなっているはず。良い作戦だ。

だがしかし、色仕掛けという作戦にはクンツァイトは気乗りはしなかった。人を騙すのは良いが、このやり方だけは余り乗り気になれない。

「ところであなた、何してるの?」
「なんだ?」

ちょうど四対四。そうこうしているうちにペアが決まってしまった。
気乗りしないクンツァイトに対して美奈子は余り物だと言うのに一番ノリノリで話しかけて来た。

「気取ってないで、私を褒めてよ!」

他の三人は口説かれ、褒められていた。それを見ていた美奈子は自分も褒められる事を期待していた。
しかし、意に反してクンツァイトは毅然とした態度を崩さない。それでも臆すること無く美奈子はクンツァイトに食らいついた。

「俺はうるさい女はタイプじゃない。静かにしてろ!」
「……!!やばい。グッときた」
「来いよ」

余り物同士だったが、美奈子は正直誰でも良かった。勿論、クンツァイトも見た目がタイプだった為嬉しかった。文字通り瞳から侵食された形だ。
だが男らしい言動にも心が掴まれた。

「私を虜にしてあげるわ!」

美奈子は美しい自分の見た目に自信があった。靡かない毅然とした態度を取っているクンツァイトを持ち前の前向きさで落とすと意気込んだ。

「……静かだな」
「静かにしてろ!ってあなたが言ったのよ?」

静かな女がタイプだと思い、美奈子はクンツァイトの傍で言われた通り静かにしていた。

「調子が狂う」
「じゃあ喋って良いの?タイプの女性は?」
「……考えたことなどない」

押してダメなら引いてみな!では無いが、言われた通り静かにしているとなびいてきた。思い通り、と言うわけ訳では無かったが気を引けて美奈子は満足だった。
しかし、その想いとは裏腹にクンツァイトは好みの女性がいない。ずっと悪の組織に属し、クイン・ベリルの為に生きて来た。女など知らない。興味も無い。強いて言うならばクイン・ベリルに忠誠を違う。それだけだった。

対して美奈子は、戦士としての使命も大事だが、恋愛をするのも大切。必要だと感じていた。両方手に入れる!そう意気込んでいた。
それなのに、この恋がまさかただの色仕掛け作戦で乙女ゲームと関わりがあるとは何と皮肉なものだろうか。それを美奈子が知るまで後数分。




おわり

20230903 クン美奈の日

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