七夕に願いを
side planet
今日は七夕。織姫と彦星が一年に一度だけ会うことが許される日。そんな二人が会う特別なこの日は、願いが叶うと言われている。短冊に願い事を書いて笹の葉に吊るす。
なんてことは無い、お正月やクリスマスと同じで年に一度必ず来るイベントの一つ。くらいにしか思っていなかった。ほんの数ヶ月程前までは。
敵と戦う使命を与えられた私たちは、月のプリンセスを守る守護戦士で、前世の記憶があった。正確には前世の記憶はプリンセスが覚醒したことをきっかけに、徐々に取り戻して言った。と言うのが正しい。
お転婆なプリンセスは、掟を破り地球に降り立った先で恋をした。
咎めながらも私たち自身も恋をした。ひっそりと心に秘めた密かな恋心。
プリンセスを守る戦士だから恋は御法度。女として生きる事など使命に反することで、許されない。
けれど、それでも同じ使命と気持ちで確かに通じあっていた心。お互い、主が大切がゆえ、言葉では何も言わなかったけれど……。
生まれ変わって、また敵として現れた想い人。この手で殺してしまったけれど。後悔はしていない。私は戦士だから。どんな状況でも、裏切られたら殺るのみよ。
そんな前世の記憶を思い出した私は、夜空を見上げて願い事を心の中でひっそり唱える。
“前世の恋が、いつの日か成就します様に”
現世で、なんて言わないわ。来世でいい。いいえ、贅沢は言わないわ。ほんのひと時でいい。貴方と恋がしたい。お互い、使命など関係無い世界で、幸せになりたい。
いつの日かまた会えるって、信じてる。
だから、それまではあなた達の分まであなた達の主も私たちで責任もって守ってあげるから、見守っていて、ね?
ダークキングダムとの戦いは終わったけれど、相変わらず敵は襲ってくる。その中で、やっぱり恋なんて御法度で。そもそもそんな余裕すらなくて……。
でも、過去の恋に思いを馳せて物思いにふけたくなって、女としての幸せを願わずにはいられない。梅雨真っ只中と言うのに、悲しい程に晴れて星が彼らの名前のように宝石みたいに綺麗に輝く夜空だった。
おわり