あたしの知らない恋物語
ドンッ
「イテテテテェ……」
着地に失敗してしまったらしく、私は盛大に地面に尻もちを付いていた。すっごく、痛い。
飛ばされた場所は、成功だったみたいで最初に落ちてきた公園だった。
「さて、うさぎを探しますか!」
気持ちを切替える。ここはどの時代の過去なんだろう。周りを見渡してあの頃と余り変わってない景色にホッとした。
懐かしい気持ちに浸りながら、うさぎの家へと足取り軽くスキップなんかしながら向かう。うさぎ、元気してるかなぁ?
「うっさぎぃ~」
月野家に到着した私は、うさぎの部屋へと入っていた。
「って、あれ?いないや……」
うさぎはいなかった。学校かまもちゃんところか?どっちにしろ、確認してなかった私が悪いんだけど。
「さて、どうしようか?」
時間を持て余してしまった私は、行くあてもなく外に出てウロウロし始める。
そして、ある場所に行く事を思い付く。
「そうだ!火川神社へ行こう」
軽い気持ちで思い付いたこの行動で、この後私は驚きの光景の数々を目の当たりにする事になるなんて、この時の私は想像もしていなかったんだ。
「レイちゃ~~~ん♪」
火川神社へ到着すると、大声でレイちゃんを呼ぶ。
そこにはあの日と変わらない少し大人になって、美人度が増した巫女姿のレイちゃんがそこにいた。
そして、変わった事が一つ。知らないイケメンのお兄さんが、働いていた。……誰?
「ちびうさ、久しぶりね」
「久しぶり、レイちゃん」
「おお、これが噂のおチビ?」
「はぁ?」
何このイケメン、失礼にも程がある。ってか私、この人知らないんだけど、あっちは知ってる感じだった。どう言う事。
「和永、初めましてなのに失礼でしょ?」
って、待て待て!あの男嫌いのレイちゃんが男の人と親しく喋ってる!凄い!この金髪イケメン、何者?
「ああ、そうだった!初めまして、スモールレディ。俺は、和永。衛の古くからの友人さ。そして、今はレイの彼氏」
「初めまして……って、ぇぇえええ?まもちゃんの友人でレイちゃんの、か、か、か、か、彼氏ぃ~?私の名前も知ってるし、どーゆー事?どーなってるのぉ?」
天変地異。あのレイちゃんに彼氏?まもちゃんの友達?思考回路がショート寸前で全く追いついてこないよ。
「俺の元の名前はジェダイト。前世ではエンディミオンの側近をしていて、マーズに思いを寄せていたんだ」
「あ、前世のパパの側近の四天王?」
「そ、さっすが話が早いな」
「本当にレイちゃんとおつき合いしているの?」
「ああ」
「ジェダイトには聞いてませーん。レイちゃん、本当?」
「ええ、驚いたでしょ?」
いやレイちゃん、驚いたってもんじゃ無いよ!
男嫌いで、喋ることすらしなかった女子校出身のお嬢様が変わりすぎでしょ?
「本当に恋人なんだ」
そう言うと、レイちゃんはハニカミながら照れ笑いしていた。なんだか、とっても幸せそう。
「そっか、レイちゃんお幸せにね!ジェダイト、レイちゃん泣かせたらピンクムーンクリスタルで消すよ?」
「おー、怖ぇ~。肝に銘じときます」
「じゃあ、おじゃま虫は帰りまーす」
あのレイちゃんに彼氏が出来ていた衝撃と、私が初めてこの世界に来る前の戦いで死んだと聞いていたジェダイトが生きていた驚きに動揺しつつ私は火川神社を後にした。
次に向かうは、美奈Pの家。
「あれぇ、ちびうさじゃない?」
向かっていると後ろから美奈Pが声をかけ出来た。振り向くと、そこにはまたレイちゃんの時のような衝撃が!
長身銀髪イケメンと恋人繋ぎをしている美奈Pが目に飛び込ん出来た。
「美奈P、その人はもしかしなくても彼氏?」
「フッフッフっ良くぞ聞いてくれましたぁ~♪彼氏の公斗よ」
「随分な紹介の仕方だな。初めまして、スモールレディ。私は西塔公斗と申します。愛野美奈子の恋人で、衛の親友でゴールデンキングダム四天王リーダーのクンツァイトと申します」
あ、こっちの人はちゃんとしてる。私の目線まで体を下ろして跪いて完璧な挨拶をされて、たじろぐ。
これは私も負けてられない!ちゃんと自己紹介しなきゃ。
「ご機嫌麗しゅうございます。私はうさぎ・スモールレディ・セレニティ。ネオ・クイーン・セレニティ、キング・エンディミオンの娘。シルバー・ミレニアムの第一王女です。どうぞ、お見知り置きを」
決まったわ!
「ちゃんと挨拶出来て、スモールレディは偉いですね」
何かちょっと馬鹿にされた感じがする。
でも、美奈Pとは違ってしっかりしてそうだから安心だ。
「お父様にそっくりですよ」
「本当に?」
「ええ、とても」
「えへへぇ~、嬉しい♪」
いい人だ。銀髪なのもママみたいで落ち着く。
美奈Pがクンツァイトを好きなのってママと髪の色が似ている事も関係あるのかな?なんて馬鹿な事を考える。
「美奈P、彼氏出来て良かったね♪」
「うん、ありがとう」
「今、幸せ?」
「ちょぉ~~~~っお幸せ!」
笑顔はよく見ていたけれど、今までで一番幸せそうな笑顔が弾けて、ああ本当に彼氏が出来て嬉しいんだなって伝わってきた。
「じゃあ、彼氏とお幸せにね♪美奈Pを、よろしくお願いします」
「ええ、神に誓って」
クンツァイト、真面目だなぁ~。
でも、二人ともとっても幸せそう。
彼氏欲しがっていたから、本当に彼氏が出来て美奈P良かったねって心からそう思った。