あたしの知らない恋物語


「うさぎ、三十世紀で待ってるね」

コルドロンから元に戻った私はそううさぎに告げて私は、私がいるべき場所ーー三十世紀の未来へと戻って行った。
本当は“ありがとう”とか“一人でよく頑張ったね”とか、色々かける言葉はいっぱいあったと思う。だけど私とうさぎの間には、この言葉で充分伝わってると思ったからこれ以上言葉はかけたかった。

三十世紀に戻った私は、過去に行っていた分遅れていた勉強に邁進した。
元来パパ譲りで勉強が全く苦じゃ無い私は、ママであるクイーン監視下で勉強を頑張っていた。

けれどある日、私はあの日のうさぎとの別れはあれで良かったのだろうかと思い始めてしまい、勉強に集中出来なくなってしまった。
目に見えて顔に出ていたのか、クイーンであるママに敏感に察知されてしまい、心配されてしまった。

「スモールレディ、集中力が低下している様ですが、どうかしましたか?」
「あ、いえ。大丈夫です」
「そうですか。勉強して立派なクイーンになれるよう頑張りなさい」
「はい、クイーン」

咄嗟に誤魔化した。全知全能の女神であるクイーンには全て見透かされていると思ったけど、何とか誤魔化せたみたい。
と同時に、鈍感うさぎが敏感に察知するなんて有り得ないと失礼ながら思ってしまい、懐かしさに溢れる想いが止められなくなってしまった。
過去に行きたい!うさぎに会いたい!会ってお礼が言いたい!
過去の修行は、戦いの日々だった。今度こそ平和な過去で、もう一度みんなと素敵な想い出を作りたい!
その想いに突き動かされた私、一大決心をしてママに打ち明ける事にした。きっとママなら私の気持ちを分かって尊重してくれるって確信したから。

「ママ、私過去に行きたい!」
「スモールレディ、貴女の修行はもう全て終わりました。これからはここで、本格的にクイーンになる勉強をするのです」
「それは解ってる!だけど、うさぎにあの時のお礼が言いたいの」
「うさぎには、あれで充分貴女の想いは伝わっていると思いますよ、ちびうさ」
「ママ……うさぎ……」

銀の髪の色のママに、過去で金髪だったうさぎに呼ばれていた愛称で呼ばれてドキッとした。
あの日以来で、一体どれだけの月日が経ったのだろう。懐かしさと、けれどやっぱりどこか違うと感じて余計にうさぎに会いたい気持ちが強くなっていた。

「ママは確かにうさぎだけど、やっぱり全然違うよ……」
「スモールレディ……」
「お願い、お願いしますクイーン!戻って来たら今まで以上に勉強頑張ります!だから……」
「……行って、気持ちに整理がつけられるのなら」
「絶対!つけて帰って来ます!」
「分かったわ。貴女は私に似て頑固で強情なところがあるから、一度言い出すと聞かないって知ってるから」
「ママ、それじゃあ……?」
「ええ、許可しましょう。但し、条件があります」

涙ながらに懇願して過去に行きたいと力説したら、ママはとうとう折れて許可してくれた。
但し、条件付き。想定内だったから、どんな条件も受け入れるわ。それで、過去に行けるなら安いものよ!

「条件はいくつかあります。先ず一つ目は、カルテットの誰かを護衛に付けること。二つ目は期間は一ヶ月だけ。三つ目は悔いのないようにちゃんとお別れすること。四つ目は戻ったらもう何があっても過去には行かないこと。以上です。守れますか?」

思ってた以上に、条件いっぱい来たー!!!
まぁ、当然だよね。今までが緩すぎたのよ。優しいママに甘えてたんだなって気づいた。

まぁ、最初はママを助けたくて何も考えずに過去に行ったんだけど。二回目は快く過去に修行する様送り出してくれた。
三回目は力になりたくてどうしてもって今回みたいにお願いしたのよね。

それに、ママだっていい気はしてないよね。実の母より、まだ産んでもない過去のうさぎを恋しいだなんて言われて、きっと気分は悪いはず。
嫉妬深いうさぎ知っているからこそ、何も言わないママの心の内はこの膨大な条件からヒシヒシと伝わって来る。

「絶対、守ります!」
「もう、行きますか?」
「すぐ行きたい!」
「では、うさぎやまもちゃん、過去のみんなによろしくって伝えて」
「はい、お母様。行ってまいります!あ、許してくれてありがとう、うさぎ!」
「全く、もう!あの子ったら」

さっきのお返しに、逸る気持ちを抑えきれずママにうさぎって呼んで感謝を大声で叫びながら駆け出して行った。

私は、荷造りもそこそこにドレスから普通の服へとチェンジして時空の扉へと向かった。
元気に門番をしているプルートに声をかける。

「プルート!」
「スモールレディ、お久しぶりです」
「久しぶり。急なんだけど、これから過去に行ってくるわ」
「服を着ているので、いつもと違うと思っておりましたが、そうですか。行ってらっしゃいませ、スモールレディ」

何も聞かず、プルートはそう言って時空の鍵を渡してくれた。

「ありがとう、行ってくんね♪」
「お気を付けて、行ってらっしゃいませ」

プルートのその言葉を合図にガーネットロッドを私に向けてきた。その瞬間、私は光に包まれた。

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