彼マント


《ジェダマズ》

「どう、新しいマントは?」
「良かったわね」
「それだけ?」
「ええ」

任命式を終えた俺は、マーズに新しいマントを見せにクリスタル・パレスへと赴いていた。
久しぶりのマントとマーズに舞い上がっていたが、マーズは相変わらず冷静だった!

「それを羽織っていると、貴方もやっぱり四天王の一人なのね」
「お褒めに預かり光栄です、マーズ」
「別に褒めてなんか、ないですわ。勘違いしないで」
「厳しいなぁ」
「そのマントに恥じないような人になりなさい」
「精進します!」

言葉はキツいけど、俺の事を思って叱咤激励してくれるのが伝わってくる。現に、顔は怒ってない。寧ろ、慈愛に満ちていて女神の様だ。
何か色々頑張れそうだと気合いが入った。
信じてくれている伴侶がいるってのは良いな!

「サンキュー、マーズ」

そう言いながら、相変わらず寒そうな戦闘服に新品のマントを自分の肩から外してマーズにかけてやる。

「何しますの?」
「うん、似合ってるな」
「言ってるそばから、貴方は……ったく、もう」

いつもの様に高飛車な態度になったが、マントにくるまって暖かそうだった。



《クンヴィ》

「うげぇ~、まだそのマント羽織ってたの?」
「言葉遣いに気をつけろ。お前、一応クイーン側近のリーダーだろ」
「一応って何よ!そのマントの色が気に入らないのよね。で、何しに来たの?」
「重くして貰った」

クンツァイトは、この日クリスタル・パレスを訪れていた。要件は、ヴィーナスにマントを重くしてもらった事を伝えるためだ。
しかし、相変わらずぶっきらぼうの言葉足らずの為、ヴィーナスはそんなクンツァイトに若干イライラしていた。言いたい事は伝わるが、もっと優しく言えない物かと。

「あっそ」

マントを重くして貰ったところで私には関係ないとヴィーナスはどうでもよかった。と言うか、マントの色が気に入らないため目に入るのも嫌だった。

「まぁいいから羽織ってみろ」
「断固拒否!」

羽織らせたいクンツァイトと絶対羽織りたくないヴィーナスの攻防戦が始まった。

「憧れていたのだろう?」
「前の色なら喜んで羽織ってたわよ!うんこ色が気に入らないの!」
「うんこ色では無い!カレー色と呼べ」
「うわ、最っ悪!カレーが食べられなくなるじゃない」
「知らん」
「でも、まぁ……カレー色と考えれば」
「羽織る気になったか?」
「……一瞬だけなら、ね」

バサッ

最早勢いのまま半ば強引にクンツァイトからマントを剥ぎ取って、ヴィーナスはマントを羽織った。

「おっもっ」

クンツァイトが言っていた通り、重かった。
だが、元の重さが分からない為、どのくらい重くなったか分からない。
しかし、この重さにヴィーナスは自分もクイーンのためにもっと頑張ろうと心に誓ったのだった。




おわり


20230404 四四の日

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