二人のために


一方、まことはすぐに勇人に相談をした。

「よっしゃー!久々に腕がなるぜ!」
「……いや、まだ何かあると決まったわけじゃないから。用心するに越したことはないって話だからな?」
「分かってるって!でも、トレーニングして鍛えて腕を磨くに越したこともないだろ?」
「まぁ、そうだけど……。あんまり張り切んなよ?四天王一の怪力で手が付けられないからさ」
「それはまことも同じだろ?」
「私は理性失わないから大丈夫だ!」
「本当かな?戦いハイになりそうだけど」
「それより、衛にはくれぐれもバレないようにな?」
「了解!」

力は強いし、一番頼りになるけど、一番心配なのも事実。
本当に色々と大丈夫かな?と心配になるまこと。

☆☆☆☆☆

そして亜美の方も彩都に相談していた。

「なるほどねぇ~、デッドムーンの二の舞はごめんよね?確かに皆既月食なんて月が地球の影になって色が変わってしまうんだから不安にもなるわね。うさぎが衛以外の男に寝盗られる~とか襲われる~と言う事も考えられなくもないし。ふふふっ」
「彩都さん……途中まではすごく良かったのに、はぁー。真剣に、お願いしますね!もう!」
「亜美は相変わらずジョークが通じないわねぇ~。私はね、不安そうな顔の亜美を和ませてあげようって思ったのよ?」
「冗談言ってる場合ですか?しかも内容が、ひ、卑猥です!」
「あーら、亜美ったら顔真っ赤よ?」
「からかわないで下さい!」
「怒った顔もかぁーわいい」

真剣な話をしていたはずなのに、なぜか話が逸れてからかわれてしまった。
いつもそう。私が物事を重く考える癖が付いていて、暗く悩んでいると、他愛もない話で場を和ませて明るくしてくれる。
心がとても軽く、温かい気持ちにさせてくれる。

「うさぎなら大丈夫よ!衛しか見えてないし、寝盗られることは無いわよ。衛も絶対!うさぎを離さないし、誰にも渡す気無いわよ。うさぎがいないと衛は死ぬから」
「そう、ですね」
「あ、私も同じだから!」
「え?それはどういう……」
「亜美は俺の物!って事さ!」

滅多に使わない男言葉にドキッとしてしまう。
そう言う場面じゃないのに、どうすればいいのか分からなくなって思考回路はショート寸前になってしまうが、必死で頭を働かしてやっとの思いで言葉を発した。

「と、兎に角今は索敵しても反応無いので、当日に気を張ってましょう!」

☆☆☆☆☆

美奈子からの連絡を受けたレイは、早速占ってみる事にした。
とても真剣な顔で根詰めて占っていた為、火川神社にバイトに来ていた和永は、その気迫に押され、声をかけられないでいた。それと同時に心配になっていた。

「何を占っていたんだい?とても思い詰めていたようだけど、心配事?」

占いが一段落して休憩に出てきたレイに尋ねる。

「ごめんなさい、心配かけて。一応念の為に気休めで占ってただけですわ。何も感じなかったけれど……」

何も感じない事がまるで不吉であるかのように不安な顔をするレイ。

「何かあった?力になりたいんだ」
「……実はさっき美奈から電話があって、今度の皆既月食の日、何かあるかもしれないから用心しましょって。前の皆既日食で敵が侵入して来たから、今回も有り得るかもしれないって……。まぁ、念には念をってだけで、そうなるとは限らないのだけれど」
「なるほどねぇ~、でも未来は存在してるんだろ?危機的状況にはならないかもしれないじゃないか?」
「はぁー、既に未来は違ってるじゃない!あなた達四天王復活してるのが何よりの証拠。未来は私たちの手で幾らでも変えられるわ」
「もう既に30世紀の未来はパラレルワールドの1つって奴になったってことか……。奥が深い。でもあの時いなかっただけで違う所にいてすぐに駆けつけられなかっただけかもよ?」
「屁理屈ね。でもそう考えられなくもないわね」
「まっ、気楽に行こうぜ!」
「随分と楽観的ね?」
「起こるかも分からない事に悩み過ぎるのも良くない。常に緊張感を持つのは戦士としては当たり前の事だし、いつもと変わらず、ね?」

心配しても仕方ないけど、緊張感はいつも持ち合わせている。そんな風に取れる言葉に考え過ぎて重暗くなりがちな私に彼なりの優しさや気遣いが見て取れる。

「くれぐれも衛さんやうさぎにバレないように、ね?」
「了解!まぁうさぎちゃんは大丈夫だろうけど、衛は感がいいからなぁ~。皆既月食ってなって、それだけでピリってそう」
「地球の影に月が隠れるから?」
「ベリルが復活してうさぎちゃんを殺そうとしているかも、とか。マスターの事、ずっと愛していたからねぇ……。いつかは振り向いてもらえるって思ってたから。あれは見ていて胸が締め付けられる思いだったよ」
「そう……」

そんな話は全く知らなかった。
確かに前世でも現世でもセレニティであるうさぎを憎んでいたのは何となく伝わっていたけれど、そう言う事なら色々腑に落ちる。
色んな人が不幸になった前世の地球の王子と月の姫の恋。やはり神の掟に背いてしまったからだろうか……。
前世での知らない話が多すぎる。
きっと私たち月のものと同じ様に、もしかするとそれ以上に地球側も色々と大変だったのだろう。
余裕が無く、寄り添えなかったことが今になって悔やまれる。

そんな色んな人を不幸にして転生を繰り返している私たち、その人たちのためにも幸せにならないとと気を引き締めた。

2/3ページ
スキ