恋のキューピットの帰還


☆☆☆☆☆

講義が終わり、昼休みに突入した。
古幡くんは違う講義に出ている。
遠藤くんと食堂へ行って、古幡くんを待つ事にした。

「レイカさーん、遠藤!」

同じく講義を終えた古幡くんがやって来た。
笑顔で爽やかに、私たちを見つけて嬉しそうにこちらに向かってくる。

「遠藤、久しぶりだな」
「ああ、久しぶりだな」

ん?何この会話?聞き間違いかしら?
私の記憶が確かなら、古幡くんは遠藤くんとは人違いとは言えずっと会っていたはず。
それなのに、さも容姿端麗の遠藤くんの事なんていなかったみたいな言い方なのかしら?
古幡くんの方が記憶喪失みたい。

「どうしてたんだよ、心配してたんだぞ」
「いやぁ、俺も全く分からないんだ」

先程、私が遠藤くんと繰り広げていた会話を、まんましている。
何これ、デジャブ?と疑いたくなるレベルに同じ会話が続く。
そして、やっはり解決しない事件に、ため息が出る。

「でも、こうして元気に戻って来てくれたんだ。俺は、それだけで充分さ」

最後は楽観的にまとめる古幡くんに、食べていたものを吐き出しそうになってしまった。

「何よ、それ!」
「いや、だって遠藤が戻って来てレイカさんもホッとしたでしょ?」
「そう……だけど」

そうなんだけど、何か違うわ。

「古幡くん、楽観的過ぎない?」
「そうかな?いやぁ、ハハ」

流石は遠藤くんの親友ね。笑って誤魔化すところは、似てる。類友ってこう言う事を言うのね。
とは言え、笑って誤魔化せる問題では無いけど、2人がそれで良いなら私は何も言う事は無いわ。

「ん、美味い!」

当の本人は、久しぶりの学食に御満悦のご様子。
ったく、心配してたってのに、いい気なものね……。

「本当、美味いよなぁ」

古幡くんまで、学食に舌鼓。本当、この2人は……って呆れちゃうわ。

それにしても偽の遠藤くんはどこの誰だったんだろう。
今、彼はどうしてるんだろう。
何故、遠藤くんになりすましていたんだろう。
あんなにグッドルッキングガイで目立ちそうなものなのに、古幡くんといるのを見るまで知らなかった。
この大学にも通っていた訳では無いみたいだし、本当、彼も謎が多い人ね。
大学の知り合いに聞いても分からなかったし、ミステリアスガイってところかしら?

「ところでお前ら、どうなってんだよ?」
「ゴホッゴホッ」
「ブーッ」

食べている最中に、遠藤くんは変な質問をして来たから、咳き込んでしまった。
古幡くんは出してしまう程に吹いていた。
遠藤くんが聞きたかったのは私と古幡くんの関係。所謂、付き合っているかどうか?
彼的には、2ヶ月近く経っているのだから、何か進展があると期待しているみたい。

「ごめんごめん。野暮な事聞いたね。ハハハハハ」

気まづい空気が流れ、そこから食べ終わるまでは無言が続いた。
3時限目の講義が始まる時間が迫って来た為、向かうことにした。
古幡くんとはまた講義が違うから別々になり、別れる。

「さっきは、ごめん」
「本当よ!まだ、進展なしよ。期待に添えなくて、ごめんなさい」
「いやいや、全然さ。こう言うのはタイミングもあるからね。上手くいくよう、協力するよ。心配かけたお詫びに、ね?」

遠藤くんとも講義は違うけれど、方向は同じだから一緒に向かう。
その中で、先程の事を謝られた。
心配させた罪滅ぼしで恋のキューピットですって!
こうなったら、とことん協力して貰おうじゃない!

「頼りにしてるわよ、恋のキューピット!」

偽の遠藤くんと距離感が近いことで、より古幡くんが好きだと確信して、焦っていた私。この申し出は、素直に嬉しい。
何がなんでも、古幡くんの彼女になるんだから!

とは言え、イケメン遠藤くんも気になる存在だったりもするのは、内緒よ?




おわり

2/2ページ
スキ