誕生日パーティー


「じゃあ、乾杯しましょう」

レイカの合図で各々目の前にあったシャンパングラスを持ち上げる。勿論、せつなも。

「せつなの、新しい年の一年の始まりに」
「カンパーイ」

カチカチとグラスが重なる音が何度か鳴る。
これからの展開が予想され、乗り切る為にとシャンパンを勢い任せに全て飲み干した。

「せつなちゃん、いい呑みっぷりだなぁ」
「僕、お酒強い女性も大好きだ」

豪快にシャンパンを飲むも、遠藤に益々気に入られてしまいせつなは罰が悪くなる。
これはどんな行動をとっても好かれる奴だと悟る。

「食事も、遠慮なく食べてね」

パスタやピッツァを勧めながらレイカは店員を呼び、シャンパンの追加を頼んでいた。
それを見ていたせつなは、こうなりゃやけだと遠慮なく思いっきり食べようと決意した。そんな矢先のことである。

「で、二人はどんな感じなの?」

恋バナ大好き天真爛漫なお嬢様のレイカから、恒例の恋愛トークを振られ、せつなは頬張っていたピッツァを吐き出しそうになった。

「どう、とは?」
「遠藤くんはせつなが好きでしょ?」
「うん、すぐ告白したよ」
「で、その答えは?」
「まだしていません。保留にしています」
「その気はあるの?」
「正直、誰かと御付き合いすると言うのは今は考えられないと言いますか……」
「何で?勿体ない!」

遠藤がせつなに告白した。これはレイカや元基をはじめ、近しい人達の間では周知の事実であった。
しかし、せつなは断ったとか付き合っていないという事も知れ渡っていた。
そこで、せつなに一番近い存在であるレイカが謎の使命感を燃やし、お節介にも聞いてきた。

せつなが誰とも付き合う気が無い。その理由は、やはり戦士である事が大きい。
せつな自身も知らない事だが、もう元基は初期の段階でセーラー戦士に関わり、巻き込まれていた。
それを知らないせつなは、一般庶民である大切なレイカ達を巻き込みたくないと思っていて、少し距離を置いていた。

それともう一つ。それはやはりほたるの存在だ。
母親として赤ちゃんの時から子育てして来た。小学生になり、安定して来たとはいえやはり手がかかる。
それに、戦士や母親をやって女としての幸せとは程遠い所にいて、今更女として生きるというのはむず痒い。一人に慣れすぎてしまったのだ。

「お試しで付き合って、違えば振れば良いのよ!気軽に付き合うには遠藤くんは持って来いよ」
「そうそう、僕はお試しができる気軽な奴……って、レイカちゃん酷いよ」
「レイカさんもそんな事していた事があるのか?ショックだな……」
「違うわよ、古幡くん。せつなが余りにも重く捉えてるから」

深刻そうに話すせつなの顔を見て、レイカは良かれと思って提案してみた。
異性との付き合い。それは結構ハードルが高いもの。だからこそフランクに考えられる様にと優しさから言ったのだが……

「お試しでデートしてみない、せつなちゃん?」
「しかし……」

その気もないのにデートに行ってもぬか喜びさせるだけ。断ろうとしたその時。

「また俺たちとWデートするのはどう?」

別角度からの提案が来た。元基から言われるのも弱いのである。

「そうね!それならせつなも気が楽よね」
「遠藤さんはそれで良いのですか?」
「僕は何でもいいよ。せつなちゃんといられるならね」
「では、一度だけ」

逃げ場が無いと感じたせつなは、OKをした。この場を収めるられるのはこれしかないと感じたからだ。

「決まりね!近々行きましょう」
「行き場は僕がデートプラン考えるよ」

先ずはグループ交際から。
気乗りはやはりしないものの、レイカも元基も良くしてくれる。遠藤だって悪い人じゃないと分かっているからこそ断りきれない。
近々のWデートがどうなるのか?
気が重くなりながらせつなは、残りの誕生日会の時間を過ごす事になった。

END

2022.10.29

冥王せつな生誕祭2022

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