外部家族SSログ



『空中花火』


「わぁ〜、大迫力!」
「綺麗ねぇ〜」
「心が洗われるわ〜」
「お気に召してくれた様で嬉しいよ」

今、ほたるたちは空中で花火を見ていた。
至近距離で、花火と同じ位の高さで楽しんでいた。

「それにしても驚いたわ」
「ヘリで花火を見るなんて発想」
「普通は思いつかないよねぇ〜」
「僕だからの発想だろ?」

空中での花火。それは、はるかの操縦するヘリコプターで楽しんでいた。
事の発端は、ほたるが花火大会に行きたがったこと。人が多いと言う事もあり、場所を確保出来るか分からない。
だったらヘリコプターを操縦出来るのだからと三人に乗ることを提案。みちる達はその提案に乗って、ヘリコプターに乗った形だ。

「はるからしいわ」
「全くよ」
「特等席だね」

少し呆れ気味のみちるとせつなを他所に、ほたるはご満悦で楽しそうだ。
ほたるが喜んでいる顔を見たはるかは、満足だった。

「気に入ってくれたかい?」
「もちろん!」

凡そ誰も体験する事は無いだろう花火の味方に、ほたるの笑顔が弾けた。
それをミラー越しに見たはるかは、ヘリコプターの免許を取得していた事を心から良かったと思った。

「はるか、安全運転でね」
「わぁかってるって!」

後ろに乗っているほたるをミラー越しに見ながら運転するはるかに、不安になって横にいたみちるが釘を刺した。
ただでさえ花火に接近しているのだ。危険な行為をしているのだから、ちゃんと前を見て安全運転を心がけて欲しかった。

「花火に接近し過ぎないようにね!」
「せつなまで、堅いなぁ〜」
「当然でしょう」

至極真っ当な指摘に、はるかは困った。
言いたいことは分かる。慣れない空の旅に加え、花火への接近。幾ら操縦に自信があるとはいえ、ヘリコプターを操縦する機会は少ない。経験は他の乗り物より圧倒的に少ない。
そんなヘリコプターで余所見をして雑談。事故のフラグが立っている。仮にも強い戦士が墜落死などつまらない冗談では済まされない。

「ふふふ、はるかパパ怒られてる〜」
「からかうなよ、ほたる」

確かに気が緩んでいたかもしれない。顔も緩んでいたが、せつなとみちるのお陰で気を引き締めることが出来た。

「打ち上げ花火をこんな間近で見るって、普通体験出来ないよね〜」
「そうね。スモールレディでも、流石に無いわね」
「確かに〜、空野でもなるるでも無さそう」

空野は学校一の御曹司だ。一声言えばヘリコプターの一機や二機飛ばして見られそうだが、そもそもそんな発想にはなりそうもない。
なるるも東京一の宝石店の令嬢。空野同様我儘が通りそうだが、小学生の発想ではそこまで考えが及ばないだろう。
そもそもほたるでさえヘリコプターに乗って打ち上げ花火を見ると言う発想にならなかったのだから。

「どうだ、特等席は?」

はるかの言った通り、ヘリコプターで見る打ち上げ花火は特別で、特等席だ。
四人だけで静かに鑑賞出来るゆったりとした空間。

「うん、控えめに言っても最高だよ、はるかパパ。ありがとう」
「どう致しまして」

空から見る打ち上げ花火は迫力満点で、控えめに言っても最高だった。
何より大勢の人に混ざって不快な気持ちで見なくて済む。それが無いだけで、雲泥の差だった。

「四人で花火見られて良かった。いい絵日記が描けそうだよ。はるかパパ、せつなママ、みちるママ、ありがとう」

ほたるは存分に空から見る花火を楽しんだ。
結果的にはるかを始め、みちるもせつなも楽しんだのだ。最高の家族の思い出が出来た。




おわり

20240920 空の日


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