タリスマンを守りし者達

side 冥王星


「今日も月が綺麗だわ」


母なる星、月を見上げながら時空の扉の門番として使命を全うしていた。

太陽系外の敵に加え、時間を超えようとする不届き者からも守る日々。

どれくらいの年月が経ったかなんて、時を司る私にも計り知れない。それ程、長い年月が経っていた。

母なる星のプリンセスがすっかり大人になり、立派に恋をしている。それが何よりもこの年月の流れを証明している。

最も、プリンセスの恋の相手や、行動は褒められたものじゃないけれど。

行く末を黙って見守るしか無いのよね。

そして、プリンセスが王国を継ぐことなくこの世界が滅びるそのせつなまで。私はここで孤独の番人を全うするしかない。

クイーンに命を受け、この時空の扉に連れて来られた時に犯してはいけないタブーを三つ、言い渡された。

“時空の扉を動いてはいけない”
“時間を移動してはならない”
“時間を止めてはいけない”

このガーネットロッドには時空を動かす力が備わっているとクイーンから渡された時に聞かされた。

その日から私は、この三つのタブーを守りながら使命を全うすることになったのだけど。ある日、転機が訪れる事に。

それは、待望のプリンセス誕生の、生誕パーティーのあの日。悲劇が訪れた。


「プリンセスは王国を継ぐことなく死ぬ」


新月の女王だと言う招かれざる客の言葉に脅えたクイーンにより、ガーネットオーブに新しい使命が与えられる事になった。

滅びの瞬間に姿を現す死への案内人、セーラーサターンの封印を解くキーの一人となった。

同じく使命を背負わされたウラヌスとネプチューン。三人揃えば発動する為、この日より三人で会うこともタブーとなった。

物思いにふけっていたら、風が肌を掠めた。その風に乗って音色も聴こえて来る。

ウラヌスの風と、ネプチューンのヴァイオリンの音色。

安心する風と音色だわ。力が沸く。
孤独じゃないと、二人がいると再確認出来るから、寂しくない。と言ったら嘘にはなるけれど、軽減はするわね。

私もガーネットロッドで、二人に合図を送る。

花びらで、二人の風と音色の中に入れてもらう。

この先、どうなるかは正直分からない。
けれど、確実にその時は近づいているのが分かる。

セーラーサターン召喚の日もそう遠くは無い。

本当に、プリンセスは王国を継ぐことなく死んでしまうの?そんなの、せつな過ぎるわ。

セーラーサターンの滅びの威力がどこまで凄いのか分からない。

私たちがどうなってしまうのかも分からない。

どんな結末になっても、受け取れる覚悟は出来ているわ。そう、あの日からずっと……。




おわり

20240127 天王はるか生誕祭2024

3/3ページ
スキ