side 海王星



「今日も月が綺麗ね……」


母なる星、月を見上げながら外敵から太陽系を守る任務を今日も続けていた。

ここで任務を遂行してから一体どれ程の年月が立ったのかしら？

随分と永い時を、ここでこうして一人、孤独に月を見守り続けて来た。

孤独は正直、嫌よ。けれど、クイーン命令ですもの。ここで外敵の侵略を食い止める任務をするしか無い。

タリスマンである手鏡で、クイーンやプリンセスを見守りながら。

そのプリンセスは、今や立派に大人になられた。

地球に降り立ち、恋も見つけた。

正直、この恋はあまり賛成できるものでは無いけれど。彼女に近しくないから、何も言う権利は無いと、見過ごして見守るしか無くて。

彼女に会ったのは、まだ産まれてまもなくの彼女の生誕パーティー。

そこでのあのおぞましい出来事により、私はずっとここでタリスマンの守り人となった。

プリンセスの成長を間近に見守れる。そう思っていたけれど、実際はこの日一度だけ。

そこからは孤独に月を眺めるのみ。

時々、クイーンに任務の報告をするだけで、一目会うことさえも許されぬ、秘密の存在となった。

どれだけの年月が過ぎたか分からないけれど、プリンセスが元気に大人になっているのは喜ばしい事ね。禁断の恋はさておき。


「風が騒がしいわね……」


ウラヌスの起こした風を感じる。

肌にとても優しく絡みついてくる。

一人じゃない。そう思えて、勇気が湧いてくる。

お返しに、ヴァイオリンを手に取り、弾く。

こうしてヴァイオリンを奏でている時は、孤独から解放される気がする。気が紛れる。

太陽系の銀河に、鳴り響いてクイーンやプリンセス達も私の音色で、癒されていれば……

そんな想いを抱きながら弾いていると、花びらが舞踊っているのが目に映ってきた。

プルートの魔法の花びらだわ。

彼女もまた、孤独と戦う同士。


「気持ちは同じ」


そう励ましのメッセージを送ってくれているよう。

そうね。遠く離れ、3人同時に集まれないけれど、同じ使命を持っている人が二人もいる。それはとても心強い事だと改めて感じるわ。

セーラーサターン召喚の守り人で、3人同時に会うことは出来ないけれど。いつも私はあなた達のことを思ってる。

私たち三人が同時に集まったのは、あのおぞましい出来事があった数日後。

クイーンに呼び出され、集まった。それが三人が同時に会える最後の日とは知らずにーー。

そして、それ以来プリンセスに会う事も許されなくなってしまった。

その日、外部戦士最強の武器タリスマンは更に特別な力を授かった。

滅びの瞬間に全てを無に帰す死への案内人、セーラーサターンの力を封印し、3人集まる事を禁じられた。

クイーン曰く、ネヘレニアがプリンセスにかけた“呪い”の措置だと言う。


「王国を継ぐことなく死ぬ」


この言葉にクイーンは重みを感じていたみたいだった。怯えている様に見て取れた。

取り越し苦労では？そう思っていたけれど、最近、どうも予感は的中しているかもしれない。そう感じた。

タリスマンがこれ以上無いほど力が漲ってると感じる。予感がする。

時は刻一刻と迫っている。その時がーー。

終焉を迎える時がみちる。その時がーー。