外部家族SSログ


『約束の行方』


平日の午後3時過ぎ。
5時間目までで授業が終わる私は、まっすぐ家に帰るとこの時間に帰宅する。
今日もいつもの様にこの時間に帰宅。

「ただいま~」

一番乗りで帰ってくる事は承知だけど、何となく帰宅の挨拶をしてる。

はるかパパももみちるママも学生で、6限目まで受けていて。その後、部活って奴があって、はるかパパは陸上部、みちるママは水泳部とブラバン掛け持ちしていて帰宅は夕方。2人一緒に帰ってくることが多い。

せつなママは私の小学校の養護教諭。こっちも日が暮れないと帰って来ない。
同じ学校にいるけど、親子だって事は仲のいい子達しか知らないし、治癒能力があるから保健室には縁がなくて、殆ど接点が無い。
だから、一緒に帰ることも滅多に無い。
寂しくないと言えば嘘になるけど、他の子達は同じ学校に親がいるってことがないから、仕方ない。

「今日も私が一番のりか……」

持たされてる鍵でドアを開けながら呟く。
中に入ると、手洗いうがいをしてから部屋へ行く。
ランドセルを置いて、今日出された宿題をママ達が帰ってくるまでにやってしまう。

今日はこの前の算数のテストが帰ってきたから、その復習も。なんて思ったけど、満点だったから、特に見直す所が無い。

宿題もそこそこにリビングへと行く。机を見ると、クッキーとメモが置いてある。

“ほたるへ
お帰りなさい
今日のおやつです
これ食べて、良い子にして待っててね”

みちるママの字で書かれていた。
いつも遅くまで一人待たせてるから。と言う負い目があるらしく、毎日用意してくれている。優しいママ達だ。

おやつを食べると眠くなってきちゃって、ソファーで横になって眠ることにした。

「ただいま~」

どれくらい寝ただろうか?
みちるママが帰ってきた声が聞こえて、目が覚める。

「お帰りなさい、みちるママ」
「ただいま、ほたる。いい子にしてた?」
「うん♪」

実際は、宿題してお菓子食べて寝てただけだけど。まぁ、良い子にしてた、のかな?

「はるかパパは?一緒じゃなかったの?」

いつもは2人仲良く帰宅のみちるママとはるかパパ。今日は珍しくママ一人で帰宅。どうしたんだろ?

「はるかには夕飯の食材買いに行ってもらったのよ。急にすき焼き食べたい。なんて言うもんだから、足りないものが多くって」
「わぁい、すき焼き♪」

すき焼きと聞いて嬉しくなって喜ぶ。大好きなんだよね、すき焼き♪

「玄関で出迎えてくれるなんて、珍しいわね?」
「うん、みちるママの事、待ってたんだ」
「私を?」

待っていたことを伝えると、みちるママは驚いた顔をして、目をパチクリしている。

「みちるママ、近々コンサートの予定ってあるの?」
「ええ、あるわよ」
「ほんと?友達に貰う約束しちゃったから、チケット欲しいんだけど……」
「ちょっと待って」

そう言って、自分の部屋へと向かったみちるママ。
そして数分後、部屋から出てきたみちるママは、手に何かを持っていた。

「はい、これ。そう言うと思ってちゃんと用意しておいたのよ。確か、空野くんが私のファンだって言ってたわよね」
「わぁい、ありがとう、みちるママ♪そう、そのぐりぐりと約束したの!……って、あれ?」

渡されたチケットを見ると結構分厚い。
まさか?と思って数えてみることにした。

「ひーふーみーよー……ってちゃんと人数分ある!」

チケットは合計7枚で、ちびうさちゃんやももちゃんは勿論、九助になるるとるるなまで。

「そうよ。だって、日頃ほたるがお世話になってるんだもの。みんなを招待してあげなくちゃ不公平でしょ?」
「みちるママ……本当に、ありがとう」

7枚用意するなんて、きっと苦労したはずで。
ううん、多分うさぎお姉ちゃん達の分だって用意してあげてるはず。
きっと、相当大変だっただろうな……なんて思うと、少し申し訳なくなった。

「大丈夫よ。気にしないで!可愛い我が子のためですもの。それに、もうすぐほたるの誕生日でしょ?形として残らないけど、ささやかなプレゼントよ」

だから今回はうさぎ達には我慢して貰うから、と悪戯っぽくウインクして付け加えるみちるママ。

「良かったぁ~。これで今日起きた事件のお詫びができるわ。ありがとう、みちるママ」
「今日、何かご迷惑かけちゃったの?」

あちゃ~、この言い方だと私が迷惑かけた風に聞こえちゃうよね。失敗しちゃった。
とても暗い顔をして心配されちゃった。

「あ、違うの!私じゃなくて、美奈子お姉ちゃん達のこと」

そう慌ててフォローを入れると、結局おかしな方向にしか行かない気がした。

「何でそこで美奈子の名前が出てくるの?ママ、言い訳は嫌いよ?」
「ごめんなさい、みちるママ……。でも、ホントに私じゃ無くて、美奈子お姉ちゃん達なの」

言えば言うほど、言い訳して逃げてるみたいになって。みちるママの顔がみるみる曇って行くばかりか、怒った表情になってしまった。

「実は今日学校でね、この前のテストが帰ってきたの。私は例によって満点だったんだけど、ぐりぐりがね……」

どうせ話そうと思っていたから、今日学校で起きた一部始終を丁寧に説明する事にした。
その間、みちるママは静かに聞いてくれて。話の節々で、相槌や表情を変えて私の話に引き込まれてくれたみたいだった。

「そう、大変だったのね。美奈子とうさぎはさて置き、レイまで迷惑を……」
「ちびうさちゃんが一番可哀想だったよ」
「じゃあ、このチケットでお詫びが出来たら良いわね」
「うん♪早速、明日持って行って渡してみるね」

事情を全て話し終えて、誤解が解けたことでスッキリした私は、改めてチケットに目をやった。
やっと詳細を確認出来る!そう思って日付を見て驚いた。

「みちるママ、この日って……」
「そう、私の誕生日リサイタルよ」

コンサートの日にちは3月6日。みちるママの誕生日だ。
こんな大事な日のコンサートチケットを私達のために取ってくれてるなんて……。

「良いの?」
「勿論よ!ほたる達に見て欲しいもの」
「ありがとう、みちるママ♪大好き!」

みちるママに抱き着くと、「私も大好きよ」と言いながら抱き締め返してくれた。

「さて、すき焼きの用意しなくっちゃね!」
「私も手伝う~♪」

みちるママとすき焼きの用意をしながら、はるかパパとせつなママの帰りを待つ事にした。
早くお肉食べたいな~なんて思いながら。




おわり

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