再生ーReincarnationー
うさぎは、衛の事も気にかけていた。
自分の様に、気の置ける仲間が欲しいのではないかと。相談したり、笑い合える友達がいる楽しさを知って欲しいと思っていた。
「ねぇ、まもちゃん」
「ん、なんだい?」
衛の家で二人、まったりしている時だった。
うさぎは、意を決して衛に話すことにした。
「四天王、蘇らせない?」
「え?」
「まもちゃんのゴールデンクリスタルなら、きっと……」
「そう、かな?やっぱり……」
うさぎにそう言われた衛は、考え込む。
「いけるだろうか?」
「絶対!大丈夫だよ!寧ろ、まもちゃんにしか出来ないことよ!私も、サポートするわ」
「うさ……」
うさぎに背中を押された衛は、立ち上がる。
別の部屋へと行った衛は、四天王を大切に保管してある箱を持っていた。
その中には、ゴールデンクリスタルも一緒に保管されていた。
「その気になってくれたのね?」
「うさにそう言われちゃあ断れないさ」
「でも、いつかはって思っていたでしょ?」
「ああ、でもまだ早いかと思っていた」
「今日は満月だし、天気もいいし」
「それ、関係あるか?」
うさぎの動機に、衛は苦笑いをしながらもうさぎらしいと微笑ましく思った。
「関係あるよ!やっぱり天気が良くて月が出ていた方が出来る気がするもん!まもちゃんも、月を見たら元気出るでしょ?」
「ああ、まぁ……確かに」
うさぎにそう言われると、そんな気がするから不思議だ。
「ほら、ね?」
うさぎの笑顔を見て、衛はそれだけで力を分けてもらった気持ちになった。
うさぎは凄い!月は凄いと改めて偉大だと再確認する。
「ここで蘇らせる?」
うさぎは、不思議そうに問いかけた。
「いや、ここじゃあ色々弊害があるし、きっと迷惑がかかる」
「ん~、じゃあどこでやるの?」
衛の言う通り、力を解放するという事は、周りに強大な光が漏れてしまい麻布十番の住人を不安を与えかねない。
それ程、ゴールデンクリスタルの力は強大だった。
しかし、どこでやるのがいいのか。うさぎは思い浮かばなかったし、皆目見当もつかない。
「エリュシオンに行こうと思う」
「え?エリュシオン!?」
行き場所を聞いて、うさぎは驚きを隠せ無かった。
「ああ、エリュシオン以外には考えられない」
確かに、これ以上うってつけの場所は無い。
エリュシオンは、衛や四天王がかつて暮らしたゴールデンキングダムがあった場所でもある。
更には、ゴールデンクリスタルが無事衛から出てきたのもエリュシオンと言う地だ。
ゴールデンクリスタルの真の力を引き出せるのも、衛が力を発揮出来るのも、四天王を甦らせることも出来る。そう、衛は考えていた。
「そっか。うん、それなら大丈夫だね!」
「うさも一緒に行ってくれるか?」
「あったり前じゃん!行かないって選択肢なんか無いよ。手伝いたいし、見届けたい」
「ありがとう、うさ」
そうと決まれば早速と衛は、うさぎの手を取ろうとした。
「エリュシオン、久しぶりだな。エリオスもメナード達も、元気かなぁ?きっと、びっくりするよね?」
「驚くだろうな」
エリュシオンには、デッドムーンとの戦い以来だった。
衛は、エリオスにも会いたいと思っていた。元気な姿を見せたかった。
きっと、ギャラクシアとの戦いで、ゴールデンクリスタルを抜かれて消滅した事もエリオスは感じていた事だろう。
衛とエリオスは一心同体だ。何も無かったなんて事は、きっと無かったはずだ。
しかし、エリオスはエリュシオンを離れる事は許されない。祈りの間で衛の無事と、啓示を受ける事が彼の務め。
そんなエリオスに、元気な姿を見せていなかったが、何も行く理由が無いとタイミングを逃し続けていた。
「まもちゃん見たら、きっと喜ぶよ」
「だと言いな」
エリオスが心から喜ぶ顔を、衛は見た事がなくて不安になった。笑顔になってくれるだろうか、と。
「ちびうさじゃなくてガッカリ、とかあるかもしれないけど」
「うさ……」
てへ、と言って舌を出した。うさぎなりに衛を元気づけようとしているのが伝わり、ホッと力が抜ける。
「後、四天王にも会いたいだろうし」
「そうだね」
衛の全てを満たしてくれる。それがエリュシオンだった。
「それじゃあ行こうか、エリュシオンへ」
「うん!」
そう言うとうさぎは衛の左腕に抱きついた。
衛はゴールデンクリスタルだけを取り出し、四天王の翡翠が入っている箱を右脇に挟み込んだ。
「エリュシオンへ」
ゴールデンクリスタルを右手に持つと、衛はそう祈りを込めた。
すると光に包まれ、眩し過ぎて二人は目を閉じた。