ゴールデンクリスタルと言う聖石


「ただいま」

一人暮らしだが、四天王と言う存在がいる。
心配かけた分、大きな声で帰宅した事をアピールする。
今回は石を連れて行く余裕が無かった為、帰宅してすぐ、置いてある所へと向かう。

「クンツァイト、ゾイサイト、ネフライト、ジェダイト」

帰りの道すがら思い描いていたようにゴールデンクリスタルを使用して四人を呼び出してみる。

「お呼びでしょうか、マスター」
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「お待ちしておりましたよ、マスター」
「元気になられたようで安心しましたよ…マスター」

イメージしていた通り、ヒーリング能力を使わずにゴールデンクリスタルの力で四天王が現れた。

「心配かけたようで、すまなかった。この通り回復したよ。それと……」

快気報告と共に、持っていたクリスタルを四人に見せる。

「これは……?」
「すっげぇ綺麗な石だな」
「僕たちには劣るけどね!」
「クリスタル……ですか?」

“見た事ない”と案に言っていて、四人共、その綺麗なクリスタルに見惚れていた。

「お前たちもこのクリスタルの存在を知らないか?」

知っていたなら教えて欲しいと思っていたが、考えが甘かったようだ。
四人共、驚き、珍しいものを見ているのが明らかだ。

「ええ、残念ながら」
「私も、聞いたことが無いですね……」
「すっげぇ綺麗だな!」
「それに、凄いオーラと力を感じます」

ゴールデンクリスタルの力は、石でも感じ取れるようで、四人はそのパワーに酔いしれていた。いや、同じ様に石だからその偉大さが分かるのかも知れない。

「とてつもないオーラを感じます」
「この黄金に輝くクリスタルは一体……」
「すっげぇ力を貰えるな」
「元気になって、みるみる力が回復するのが分かります」

俺の体内から出て来た、地球を守護に受けたゴールデンクリスタル。四天王にも力が伝わってくるようだ。

「ゴールデンクリスタルと言って、俺の聖石らしい。ゴールデンキングダムに代々伝わる物のようだ。先程の戦いで、俺の体内から現れて、うさに力を分け与えた」

四天王にありのまま、報告する。
その中で、うさの戦いに、いつも見ているしか出来なかった最終決戦に傍観者ではなく、当事者として戦えた事。うさと力を合わせられたこと。
その事実に、改めて込み上げてくるものがあった。
足でまといで非力だと思っていた俺が、うさや守護戦士と一緒に戦えた事。役に立てた事に、ただただ喜びを噛み締めた。

「マスターの、聖石……」
「ゴールデンクリスタルか」
「マスターにもクリスタルがあったんだな」
「マスター……あの温かいオーラは、マスターだったのですね!良かったですね、マスター」

ジェダイト達にもあの戦いでのパワーが伝わって来ていたらしい。
エリュシオンでの戦いとは言え、全身全霊でパワーを発していた為、遠く離れたここでも感じ取れるのだろう。

「マスターだけの気(オーラ)じゃ無かったけどな」
「ええ、そうだね。マーキュリー達の懐かしい気もあったよ」
「そうだな!気高いオーラも感じた!」
「ああ、懐かしいプライドの高い気も感じたな」

うさは勿論のこと、守護戦士が一堂に会してセーラークリスタルを持ち、それぞれの力を発揮した戦い。
その中でも、四天王たちは名前は出さないが、あの子達の気も敏感に感じたようだ。
やはり、俺とうさのようにまた会いたいのだろうか?

「お前たち……」
「ゴールデンキングダム、随分と懐かしい名前が出て来たな」
「あそこには思い出がいっぱいだな」
「確か、エリュシオンの敷地内にあったっけ?」
「祭司エリオスはどうしてるだろうか?」

四天王は、ゴールデンキングダムの事を覚えている様子。皆、懐かしそうな表情で思い出している。
なのに何故俺は、こんな大切な事を忘れてしまっていたのだろう。思い出しもしなかった。今回の戦いが無ければ思い出す事もなかっただろう。

「覚えているのか?」
「ええ、まぁ」
「我々、石のまま意思があるので、色々思い出しては昔語りして、皆で記憶を共有しているのです」
「マスターが覚えて無くて、思い出せなくても、仕方ないさ。“今”を生きて、敵と戦って、プリンセスとまた恋をして」
「忙しい日々の中、思い出す必要なんて無いですよ!なので、それについて謝るのは無しですよ、マスター」

俺の気持ちを汲み取り、皆、労ってくれて謝るタイミングを逸してしまった。
ネフライト達の言う通り、俺は日々忙しくしていて余裕が持てなかった。
うさとの事や敵の事、勉強と日常を生きていた。その中でも色々思い出すが、どれもうさとの、セレニティとの事ばかり。
四天王との事はあまり思い出せていなかった。
この機会に、四天王との事も思い出せたらと思う。

「すまない。ありがとう」

ゴールデンクリスタルの力はまだまだ未知数。何が出来るかは分からない。
けど、信じている。いつかこのクリスタルで、四天王を蘇らせると。
今はまだ、その力は俺には無いけど。その機会は必ず近い未来にやって来ると信じている。

ヒーリング能力を使わずとも、クリスタルの力を介して四天王と交信出来ていることでそう確信している。自信がある。

そして、彼らも、彼らの愛する人達と幸せになって欲しい。
それが俺の、四天王への願いだ。




おわり

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