ゴールデンクリスタルと言う聖石


「ゴールデンクリスタルと言う聖石」

ネヘレニアとの壮絶な戦いを終えた衛は、うさぎを家まで見送ると、自宅へと帰路に着いていた。

「まだ、信じられない」

それもそのはずで、前世の月のもの達の因縁かと思われたが、過去の王子であった頃の忘れていた記憶や、知らなかった事等。色んな事実が判明するとは、呪われた時は思ってもいなかったからだ。

「ゴールデンクリスタルか……」

衛は、自分の中から現れたそれを見ながら、ボソッと呟いた。
手の中にすっぽりと収まった小さなそれは、戦いの時に発していた輝きほどでは無いが、存在感がある美しさを放っていた。

「そうか、今まで不思議な力があったのは、コイツが俺の体内に眠っていたからなのか?」

6歳の誕生日を迎えたあの日、両親が死ぬ程の大事故。それなのに自分だけは奇跡的に生き残ってしまい、天涯孤独に。
記憶を失うと言う代償と共に、“幻の銀水晶を探して……”と言う夢を見続ける日々。
そして、タキシード仮面となり、銀水晶を探す日々。その中で出会ったうさぎと恋に落ちて、失いたくないと強く惹かれて。

ヒーリング能力で怪我を直せたり、予知夢を見たり、タキシード仮面となって技も出せたり。それらは全て、自分の中に眠っていたゴールデンクリスタルから発せられていたものなのか?
マンションに向かいながら、今までの力の秘密がゴールデンクリスタルによるものだったのかと合点がいった。

今までの力はゴールデンクリスタルが目覚め、本当の力を発揮する為の所謂予行演習というわけか?

ゴールデンキングダムについても、何故忘れていたのだろう。あれ程ずっと暮らしていたのに。

「四天王に報告、だな」

自分自身の過去でもあるが、四天王にも関わる事。
それに呪いで床に伏せていて、心配かけていた。
報告する義務があるし、聞く権利がある。
ゴールデンクリスタルがあれば、ヒーリング能力を使わなくとも四天王を呼べるのでは無いか?漠然とそんな考えに切り替わっていた。

彼らを蘇らせられるかもしれない、キーとなるであろうクリスタル。
それに、彼らを強くする為の、俺の守護する地球のクリスタル。
うさの守護星である月の王国に伝わる聖石、銀水晶と对なっているクリスタル。
うさの力にも、四天王の力にもなれる黄金に輝くクリスタル。

何より、宝石の名を与えられ、その名の通り石となってしまった四天王の様に、俺自身も聖石であったこと。
うさの足でまといで非力だと悩まなくても良くなったことを、単純に嬉しく思った。

うさのように、四天王も喜んでくれるだろうか?

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